中国語は、字ずらは似ても日本とかなり違う。最も有名なのは、「汽車」。これは、中国では自動車のことだ。最近、香港で急速に伸張している政治思潮の「本土派」というのも、日本人の受け留め方はかなり異なる。
一切の妥協を拒む硬直的共産党への拒否感
「本土」とは、中国語では「生まれ故郷」を指す。つまり本土派とは、香港こそ自らの祖国であり、共産党の支配する大陸は外国だ、という思考だ。
こうした考えは、主に若者層を中心に香港で急速に広がっている。そのきっかけとなったのは、2年前の雨傘運動の挫折である。真の民主主義の具現のために、香港のトップの行政長官を公選で選びたい、と求めての学生たちの、香港中心街を79日間も占拠した運動は(写真)、大陸のスターリニスト中国の頑なな否定姿勢で挫折した。学生たちは、集会を催涙弾を使った官憲に蹴散らされた。
ここから一切の妥協を拒むスターリニストたちに、いくら話し合いを求めても無駄、という考えが広がった。彼らにとって、6.4市民革命(「天安門事件」)を記念する集会さえ開けない、開かない大陸の中国人も、今では軽蔑の対象になっている。
大陸の観光客を「イナゴ」と蔑称
その意識に火に油を注いでいるのが、カネに明かして香港の不動産を買い漁り、不動産価格を吊り上げた金満中国人たちである。
結婚を考える若いカップルが、今、香港で住宅を買えない。アパート(日本のマンション)の価格は、彼らの年収の70倍とも100倍とも言われる。やむなく彼らは、周辺の公営住宅に住む。そこでの投票率は、他よりも有意に高い。
そして親共産党派、従来からの民主派に次ぐ、第3党の位置につけているのが、本土派である。彼らは「本土民主前線」の新党を作って、既成2党に対抗する。
春節中に、香港繁華街で本土民主前線の学生たちは大陸からの買い出し観光客らにデモを行い、警官隊と衝突して100人以上の負傷者も出している。
さらに彼らは、大陸から外国製(主に日本製)粉ミルクなどを買い出しに来る大陸の「運び屋」や団体観光客にも侮蔑の目を向ける。
彼らに向けての「大陸に帰れ」などのデモを仕掛けることもある。
さらに大陸からの買い出し目的の団体観光客を「イナゴ」と嘲笑する。
同じ中国語地域で広がる大陸の共産党と中国人への嫌悪
我々日本人が、中国からやってくる観光客に向ける視線よりも過激かも知れない。ちょっと脱線するが、12日に行った西武球場前駅の「ところざわのゆり園」(写真)でも(観光客ではなかったようだが)中国人がいた。3人連れのその中年女性中国人は、カメラスポットを独占し、しかも代わる代わる同じ所に立ち、様々にポーズを作って、いつまでもどこない。
僕がニューヨークでも、グランドキャニオンでも、さらに日本の金沢でも往生した中国人観光客と全く同じ作法である。
そうやって大陸の共産党と中国人観光客は、香港でも台湾でも、同じ中国語地域で嫌われる。
「本土派」は若者では今や3割
それらがないまざって、そしてもう少し高級な思考である民主主義の守護のために、本土派意識がかきたてられる。当然に。目指すは「香港独立」である。
中国系の都市国家としては、シンガポールの成功例があるから、夢物語ではない。ただしスターリニストどもが許すことは絶対にないから、この壁をどう乗り越えるか、が問題となる。6.4市民革命でも、チベット抗議デモなどでも明示されたように、彼らは暴力で弾圧することも辞さない。
香港中文大学の香港人対する意識調査では、18歳~29歳までの若者では、自らを本土派と考える割合は3割に達しているという。数年前までは考えられもせず、また公にもできなかった香港の独立意識は、もはや共産党が武力で黙らせるしかないまでに高まっているのだ。
なお本年5月22日付日記:「スターリニスト中国、台湾の蔡英文新政権に嫌がらせと経済的締め付け」も参照。
昨年の今日の日記:「プロ野球交流戦、いつものようにパ・リーグ圧勝の快哉、セは『借金』チームが優勝」