今、世界で、都市でも砂漠・ジャングルの中でも走っているガソリン・ディーゼル車は、今世紀半ばには走れなくなるかも知れない。


世界の巨大年金基金が相次いで石炭会社を投資対象から外す
 昨年末の世界が初めて包括合意したパリ協定では、今世紀後半までに実質的に二酸化炭素排出ゼロを目指すことが合意された(15年12月15日付日記:「COP21、画期的なパリ協定を採択、今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロに」を参照)。
 つまり世界は、脱炭素化(カーボンフリー)社会へ大きく舵を切った。
 その最大の標的が、二酸化炭素を最も多く排出する石炭である。昨年5月、ノルウェー議会は、推定100兆円を超えるとされる同国年金基金の運用先から石炭関連企業を外すと決議し、実際、この4月には14カ国の52社が運用先から消えた。
 またアメリカで最も環境保護意識が高いカリフォルニア州では、同年10月、ブラウン知事が同州の政府機関の職員の退職年金基金カルパースや教員の年金基金カルスタースに、石炭産業からの投資を引き上げるように命じた。


石炭の次の標的は石油
 このような動きの前に、すでにアメリカでは有力石炭会社が次々と倒産している。倒産した会社群の石炭産出量は、アメリカ全土の45%にも達するのだという。石炭の有力な需要家の鉄鋼会社の生産が先細りとなり、火力発電所などの燃料が二酸化炭素排出量が石炭の6割と少ない天然ガスに転換していることなどによるが、石炭の環境規制は強まるばかりなことも大きい。
 石炭が標的にされ、いずれ石炭がエネルギー源として消えたら(少なくとも先進国では、いずれ必ずそうなる)、次は石炭よりは二酸化炭素排出量は少ないが、天然ガスより3割弱は多く、化石燃料では突出した消費高の大きい石油にターゲットが向かうことは間違いない。


原油価格低迷は将来の消費先細りの予兆?
 例えば今年初めの底なしの値下がり期を脱したが、なおWTI先物で1バレル=50ドルを行ったり来たりしている原油は、様々な構造要因で価格低迷しているが、長期的には消費先細りを織り込んでいるのではないか、と思われる。
 一時期、世界の原油は、急膨張する需要に新規油田の開発が追いつかなくなる構造的石油危機が心配されたが(ピークオイル論)、おそらくその可能性はなくなった。短期的には、需要が増えて供給がタイトになり、価格が上がれば減産しているシェールオイルがまた息を吹き返すからだ。
 そしてシェールオイルも枯渇化による生産減少になる前に、石油使用への環境規制の圧力がかかるからでもある。


残りの二酸化炭素排出枠はもう僅か
 イギリスの環境団体「カーボントラッカー」によると、21世紀末までに世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えるために、二酸化炭素はあと5650億トンしか排出できないという試算を発表してる。
 21世紀になってからすでに排出した二酸化炭素は3210億トンだから、残りは2440億トンで、あと10年分ちょっとしかない。
 どのみち排出できる量は限られることになる。その場合、石油は最大の排出源だけにやり玉にあがるのは避けられない。
 石油メジャーの持つ莫大な石油権益は、不良資産になる。
 日本の自動車メーカーは、2050年にはガソリン・ディーゼル車が走れなくなる可能性を視野に入れている。この場合、ハイブリッド車もいずれ走れなくなるだろう(少なくとも先進国では)から、燃料電池車と電気自動車の機能向上に注力する。


ハイブリッド車もエコカーから外れた
 例えば前記したカリフォルニア州では、18年からハイブリッド車をエコカーから外す方針だ。エコカーでないと、優先車線を走れず、それだけ所有者に不利になるから、エコカー以外は、販売に不利になる。ハイブリッド車生産で世界一のトヨタは、苦しい立場に置かれている。
 脱炭素社会の予兆は、すでに顕在化している。2014年、15年の2年間、世界経済は平均3%強の成長を遂げたのに、エネルギー起源による二酸化炭素排出量は横ばいに推移した。
 それが数年内に、経済成長してもエネルギー起源の二酸化炭素排出量はマイナスになるのは確実だ。
 脱炭素化の世界が頼むのは、原子力発電と再生可能エネルギーとなろう。


ところざわのゆり園2

ところざわのゆり園

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ところざわのゆり園4

ところざわのゆり園4

 なお写真は、12日に出かけた西武球場前駅の「ところざわのゆり園」。むろん電車で行った。


昨年の今日の日記:「赤色帝国主義の中国、今度はマレーシア領有の岩礁に目;スーチー氏の幻滅」