「ブレグジット」(Brexit=イギリスのEU離脱)を問う6月23日の国民投票を前に、1度は否決(EU残留)が確実視されていたのが、このところ雲行きが怪しくなってきてた。世論調査によっては、イギリスのEU離脱に賛成との答えが反対を上回るものも出てきたのだ。
対ドルでポンドはじり安
こういう時は、マーケット(市場)に聞くべし、である。誰よりも的確に未来を見通すマーケットは、その答えを出しているのではないか。
実は僕は、5月30日付の本ブログで、イギリスポンドが騰勢を強めているため、すでにブレグジットなし、と書いた(「市場はもはやイギリスのEU離脱なし、と見通しか;マーケットの先見性」)。
しかしそれは、最近のイギリスの世論調査を見ていると、勇み足であったかもしれないという可能性が出てきた。
実際、為替市場では、対ドルのポンド相場は、ジリジリと安くなっている。
東京市場も大動揺
5月27日に陽線を引いたのを境に、翌日は上ひげの長い陰線に転じ、以降、対ドルで下落基調となった。つまり僕は、この天井時に30日付日記を書いたわけだ。
このチャートは、やばい状況を示している。一時はマーケットも、ブレグジットなし、と見たが、その後、弱気に転じたということだ。
ロンドン株式市場の平均株価FTSE100も、この数週間、下げ足を強めている。
13日の東京市場が、大幅な円高、株安となったのは、ブレグジットを警戒したのだが、一気にその懸念が高まっているとも言える。国民投票までまだ1週間も残しているのに、東京市場のみならず世界のマーケットの過剰な反応からすると、実際に賛成多数となると、日経平均で1万5000円割れ、1ドル=100円突破の懸念がある。
直接には日本とほとんど関わりの無い、遠いイギリスの動きが、日本にダイレクトに波及する。日本のマーケットが、それだけ脆弱だということだ。
1つの国民の一時期の情緒的動向で決められる直接民主主義の欠点
この間、新聞・雑誌やあらゆるメディアでも取り上げられているが、イギリスがEUを離脱しても、何一つ良いことはない。せいぜい移民によって職を追われると危機感を覚えているpoor White(貧困白人)の溜飲を下げさせるだけだ。
ブレグジットとなれば、EUの中のイギリスとして先人が築いてきたものが一気に崩れる。そしてイギリス自身が、スコットランドの独立を抑えきれなくなり、大英帝国の分解へと行くことになる。
マーケットの懸念は、そこまで見ているのだ。
その時の一国の国民の情緒的動向で世界の一大事が決まる――直接民主主義の大きな欠点の1つである。
写真は、12日に行った西武球場前駅の百合園。ニッコウキスゲは終わりを迎えていたが、他のユリは盛りだった。
昨年の今日の日記:「バルト3国紀行20:古びた建物の旧税関をへてラトヴィアへ」