ゴンダールを目指す途中の奇岩「神の指の岩」を仰ぎ見る峠道で、山の頂上まで耕作された景観を観て、収奪的な途上国農業の一端を垣間見た(写真)。


神の指の岩と段々畑


生産性の低そうな畑
 エチオピアは、世界最貧国の1つである。だとすると、耕作畑にろくな肥料も投入できていないだろう。途上国で有力な肥料は畜糞と決まっているが、利用できそうなのはウシくらいしかない。しかし牛糞はまた、有力な建築資材と燃料である。丸坊主に近い山を観ると、住民は燃料にも事欠いているはずだ。
 生産性は、極めて低い、と推定せざるを得ない。
 さて青空トイレを終えると、僕たちのバスは、一路、ゴンダールを目指す。


テフの実を初めて見る
 ところが現地ガイド氏が親切なのか、しばらく走り続けたらまたしてもストップ。少年2人がテフの藁の上で落ち穂拾いらしい作業をしているのだ。傍らにロバの馬車がある(写真)。


神の指の岩とロバ馬車

 まさにアフリカ的風景である。このサービス精神に、僕たちは喜んだ。
 僕たちは、エチオピアの国民食のインジェラを焼くテフの実を、ここで初めて見た。収穫を終えたた藁の間に、まだテフの穂が混じっている。テフは、まるで芥子粒のように細かいのだ。こんな物を、よくも食糧にすることにしたのか、驚く。
 それで気がついた。バハルダールから「神の指の岩」に来るまでに、広大な平原に広がっていた畑は、テフ畑であったことに。


粗末な身なりの少年2人が落ち穂拾い
 2人の少年の身なりも粗末だ(写真)。


テフの落ち穂拾いの少年2人

 向かって右の少年が着ているシャツは、エチオピアの国旗をあしらっている。胸には、はっきりと国旗が描かれている。緑、黄、赤のトリコロールであり、ヨーロッパ諸国に多く使われている青や白、黒はない。このデザインから推測して、政府からの支給品かもしれない。
 左の少年のTシャツは洗いざらしであり、穴がいくつも開いている。今の日本なら、誰もこんなシャツは着ていない。
 それでも2人とも、ちゃんと胸には十字架の首飾りをかけていた。
 2人は、さほど仕事に追われているようでもなく、日本から来たツーリストに、迷惑がらずに付き合ってくれたのである。


昨年の今日の日記:「党前政治局常務委の周永康、習近平指導部との『取引』の末、無期懲役刑で決着」