何でもありの無法地帯――それがスターリニスト中国のネットマーケットである。
 インチキ商品やブランドの偽物があふれている無法地帯だが(有名なアリババですらブランド品の偽物が満ちている)、金融となれば、まさに詐欺師の跳梁跋扈する場となっている。


ネット金融


ネットネズミ講が5000億円も集めて倒産
 高利回りをうたい文句にネットで投資を募ってきた「中晋資産管理」という会社が、先頃、破綻した。
 集まった金は、グループ企業40社に投融資します、上海市のプロジェクトです――そんなうたい文句で、年利8~12%の「金融商品」をネットで販売していた。それでは足りずに、昨年には年利40%もの、誰もが眉につばを付ける商品まで販売し、投資家から邦貨換算で総額約5000億円もの資金を集めていたという。

摘発を聞いて本社にかけつても「もぬけの殻」
 日本のような金商法などのないスターリニスト中国には、こんな詐欺まがい会社があふれているが、さしもの警察も摘発に乗り出し、「中晋資産」のインチキぶりが明るみに出た。
 零細投資家から集めた金は、グループ会社で食い物にされ、ネズミ講のように後から入金された金はほとんど利払いとグループ企業の運転資金に回されていた。
 摘発を聞いて、零細投資家が慌てて上海市の本社のあるビルにかけつけても、そこはもちろん「もぬけの殻」。

金商法などの整備なく詐欺師には「やりたい放題」
 集金のシステムがネット、という状況を除けば、20年以上前の日本のオレンジ共済会などを彷彿させるが、規模はそんなものより2桁も大きい。さすが、この点も中国である。
 驚くのは、早いようだ。
 ネット上には、株や債券、不動産などありとあらゆる投資話が載っているという。それには著名経済学者なども推薦人に名を連ねているそうだ(日本でも元民主党代表の海江田万里が経済評論家時代に和牛預託商法の安愚楽牧場に広告塔となっていた)。
 しかしそれらは、日本ではいずれも「過去の話」。金商法などが整備されて、大型詐欺は現れにくくなっている。被害が大きくなる前に、金融監督当局と警察の手が入り、「芽」のうちに潰される。

ネットにあふれる会社の3分の1は問題会社?
 それに比べれば、スターリニスト中国はこれからが本番かもしれない。一説には、ネットであふれている会社の3分の1は問題会社だというから、恐れ入る。
 今の中国は、2年前まで日の出の勢いだった株投機のバブルが破裂し、不動産投機も北京・上海・深圳といった一部都市以外は値下がりで、投機資金もあふれかえっている。
 しかし開放改革以来の中国人は、人一倍、強欲、ときている。彼らの関心は、ただカネだけで、パナマ文書に名の出た習近平の腐敗も、環境破壊も、社会矛盾を正そうという気風は乏しい。
 雨傘革命を闘った同一民族である香港人にも、さらにはヒマワリ革命を貫徹し、ついに蔡英文政権へと政権交代を成し遂げた台湾人にも、金銭にはブタのように貪欲で、権力にはヒツジのように温和しい中国人は軽蔑されている。
 そうした汚れた社会の中で、詐欺師のパラダイスが展開されているのが、今のスターリニスト中国なのだ。

昨年の今日の日記:「進化とは何か、回虫は進化の最高の成功者;追記 LIXILの損失、最大661億円に膨らむ」