青ナイルの滝に向かうバスの車窓から見るエチオピアの農村は、実に興味深く思われた。未舗装とはいえ、道路の真ん中にヤギやウシの群れがのんびりと行く。すれ違ったのは、コブウシか(写真)。


コブウシ


テフの「稲むら」か、ドーム状の小山
 前にも書いたが、幅30センチほどの水路で、子供が体を洗い、女性が洗濯をし、容器に水を汲んでいる。とうてい清潔ではないが、そんなことにこだわっていたら、途上国の人々は暮らせないのだ。
 道なりに、所々、ドーム状の稲むらのような物が見える(写真)。たぶんエチオピアの国民食インジェラの材料となる雑穀の1つテフの茎だろう。種子を収穫した後、家畜のえさにするのではないか。


テフの稲わら

 すると広がる土地は、テフ畑なのか。


サハラ以南のアフリカで最も古い栽培穀物のテフ
 テフは、日本の稲よりも丈が低く、芥子粒のような小さな種子を実らせる(写真=市場で売っているテフ。まるで小鳥の餌だ。奥の茶色の穀物はソルガム)。


市場で売っているテフ

 エチオピアでは、今から8000年前頃から、テフやソルガムなどの雑穀栽培が始まった。サブサハラ(サハラ以南のアフリカ)では最も早い農耕の始まりである。ちなみに中東の「ファータイル・クレセント(肥沃な三日月地帯)」でコムギとオオムギの原初的農耕が始まってからたった3000年程度の遅れ、であった。
 テフの実は粉に引いて、水に溶き、数日間寝かせて発酵させ、中央アジアで食べられるナンのように焼いて食べる。これが、インジェラだが、僕たち日本人には本格的インジェラは酸っぱくて、とても美味とは言えない代物だ。旅の途中、物は試しと食べたインジェラは、そんなものだ(写真=真ん中の肉などを包んで食べるが、一般の庶民はインジェラだけ)。


インジェラ


村の住居は一間きりの掘っ立て小屋
 悪路の両側に、点々と集落や単独家屋が建つ。この地方は、大半の家屋が、丸太を骨組みにして、そこに藁を混ぜ込んだ泥壁の一間きりの掘っ立て小屋だ。
 現地ガイド氏が機転を利かして、朝食の準備をしている民家の前でバスを停めた。インジェラをまさに焼いている(写真)。


インジェラを焼く農家

昨年の今日の日記:「放射性汚染水を載せた首相官邸『攻撃』無人飛行機ドローンの示した危機;現代史、社会」