先月行われたスターリニスト中国の2016年全国人民代表大会(全人代)で、首相の李克強は「ゾンビ企業」の淘汰を力説した。


鉄鋼、石炭、セメント……素材はすべて過剰
 何しろ鉄鋼、石炭、セメント、造船、自動車など、ありとあらゆる国有企業が生産過剰で、売れもしない製品を作り続けている。鉄鋼のごときは、年間生産量8億2000万トンのうち1億トンは余剰と言われ、生産能力では5割近い3.5億トン分が過剰設備だ。
 人も余剰で、鉄鋼と石炭だけで180万人もが余剰だとされる。
 これらは、国有企業が大部分で、鉄鋼は大手の一部を除き大半が赤字で、鉄鋼業界全体では1000億元(邦貨換算約1兆7000億円=2015年)にも達する。リストラすれば失業者などが続出するので、地方政府が許さないのだ。李克強のゾンビ企業淘汰のかけ声も、どれだけ実行できるか疑問視されている。


エコカーも大増産、世界1へ
 さて、過剰生産は、今や素材や単純な物だけでなく、液晶などハイテク製品にまで及んでいるが、ついにここまでか、と絶句したのは、エコカーまでも、という報道だ。
 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などエコカーは、先進国の自動車メーカーがしのぎを削る大競争を繰り広げているが、2015年、なんとエコカーの技術でははるかに遅れているはずのスターリニスト中国のエコカー生産台数が世界1になったのだという。自動車先進国のドイツでも、日本でも、さらには自動車大国のアメリカでもなく、である(写真=中国のEV車)。


中国のEV車

 2位のアメリカの2.5倍の年間33万台もの販売量だという。


政府補助金を爆食
 中国がいつから環境保護先進国になったかと目を疑う数字だが、実はこれはペテン的な数字なのだ。政府がエコカー普及のために多額の補助金を出しているから、中国の自動車メーカーは、売れもしないEVやPHVを量産し、なじみの販売店やグループ企業に押し込み、あたかも売れたかのように見せかけて補助金を受給しているのだという。
 補助金目当ての大増産は、昨年から始まり、2011年にはたった8000台だったエコカーが、景気後退をよそに昨年は前記のように33万台に跳ね上がった。
 補助金は、信じられないほど多額で、メーカーはエコカーを1台売るごとに、日本円で最大100数十万円にもなるという。中国の上場企業の中には、エコカー補助金だけで年間純利益の半分を稼ぐ会社も現れているという。


補助金頼みで国際競争力ゼロのエコカーが野ざらし
 補助金頼みだから、製造技術はお寒い限りだから、国際競争力はゼロで、ほとんどは押し込み販売先でスクラップ同然になっている模様だ。
 しかも補助金対象の「エコカー」の定義が不透明だから、外資は事実上、適用対象外で、非関税障壁の性格も濃い。
 このようにスターリニスト中国の製造業は、共産党政府の手厚い保護で見せかけの繁栄を続けている「ゾンビ企業」に他ならない。彼らの発表するGDPなど、信用できないまやかし数値である。
 5カ年計画のGDP成長目標が、年6.5%と言っても、こうした「見せかけ」を続けている限り、いつかはバブル崩壊、となる。
 李克強には、ただの裸の王様ではないのか。


昨年の今日の日記:「数千年前に北米から来た日本のミジンコ、たった4匹が起源;有性生殖、単為生殖」