アフリカ起源の現生人類が、ユーラシアに渡り、徐々に北上して文化的に寒冷適応し、シベリアに到達したのは5万年前くらいだ。洗練された知性と旺盛な探究心で、彼らはさらに北東に進み、当時、陸化していたベーリンジア陸橋(現在のベーリング海峡)を歩いて渡ってアラスカに到達したのは2万数千年前頃だったと見られる。


1万5000年前頃に最後の大陸、南米に到着
 「最初のアメリカ人」となった彼らは、その後、行く手を阻む2つの大氷床(ローレンタイド氷床とコルジレラ氷河)を突破し、2万年前ちょっと前には大平原に姿を現していたと思われる。
 彼らが、現在のパナマ地峡を渡り、南米に到達したのは、おそらく1万5000年前前後だったと見られる。その後、彼らはマストドンや体重5トンにも達する地上性オオナマケモノ(メガテリウム=写真)、小型自動車ほどもある大型アルマジロを狩りながら(彼らメガファウナは、それがきっかけで絶滅した)、南米南端のティエラ・デル・フエゴに達する。


メガテリウム


南米最古の遺跡モンテベルデは1万4000年前頃
 南米最南端に達したのは、チリ南部の南米最古の住居址モンテベルデ(Monte Verde)遺跡の年代から、1万4000年前頃だったと見られる。首都サンティアゴの南方800キロの泥炭湿原にあるモンテベルデ遺跡(写真)から、先史パレオインディアンが食料にしていたとみられる海藻9種類が確認されているが、これを資料にして測定された放射性炭素年代が08年に発表され、1万3980~1万4220年前のものであった。


モンテベルデ遺跡

 南米に定着した人類は、その後、どのように人口を増やしていったのか。


最初の8000年間はほとんど静止人口
 アメリカ、スタンフォード大のアーミー・ゴールドバーグらは、1万4000年前から2000年前までの1147カ所の遺跡の5464件の較正放射性炭素年代を集約したデータベースを利用し、南米の人口動態の歴史を再構築した。イギリス科学週刊誌「ネイチャー」4月14日号で報告した。
 それによると、南米先史人類の拡大は2段階に分かれた、という。
 第1段階は、南米に急速に人類の拡散した最初の約8000年間にわたるおおむね希薄な人口の段階で、これには実質的な人口増のない4000年間の増加と減少のサイクル期が含まれる。


5000前頃からの定住化で人口は鎌首をもたげたように急増
 その後、栽培作物と家畜の飼養で狩猟・採集が補われるようになると、環境収容力がわずかに上がる。引き続く5000年前頃から始まった定住化が、人口動態の第2段階を画した。
 アンデス各地の文化的核地域で、世界の新石器時代への移行に相当する指数関数的な人口増加が起こった。環境収容力の著しい増大で、人間を取り巻く環境を改変する能力が高まったという。


昨年の今日の日記:「中国の71歳の老女性ジャーナリスト高瑜氏に懲役7年の実刑判決、許されざる報道の自由への弾圧を非難する」