ベルギー、ブリュッセルの国際空港と地下鉄で22日朝(日本時間同日夕方)起こった連続テロで、再び多くの市民が殺された。昨日現在、両方のテロで34人が亡くなり、日本人も1人、地下鉄テロで重傷という。


驚くべきテロリストの組織力・実行力
 パリと言い、ロンドンと言い、もはやヨーロッパ、特に西欧は全都市が戦場となった感がある。ISIL(いわゆる「イスラム国」)が犯行声明を出したが、これもまたISILに触発されたホールグロウン・テロリストの犯行だろう。
 18日にはパリ同時多発テロの実行犯の生き残りのサラ・アブデスラムがブリュッセルの隠れ家でベルギー治安当局に逮捕されていたので、この報復でもあるのだろう。
 ただ驚くべきは、西欧の治安当局が必死に潜伏テロリストを逮捕しているのに、その捜査をあざ笑うように、サラ・アブデスラム逮捕の直後に2件の大規模テロを実行したテロリストの組織力である。
 おそらくこの実行犯以外にも、テロリスト予備軍のネットワークはなお健在なのに違いない。西欧の市民と旅行者は、これから日常的にテロの脅威にさらされるということである。


自爆テロリストが死んでも新たなホームグロウン・テロリストが「貯水池」から湧き出る
 これに対する対策はない。
 EU加盟国のほとんどは、移動の自由を定めたシェンゲン協定に加わっている。市民は、何国人であれ(もちろん日本人も)、協定参加国の間を、まるで隣町に行くように通過できる。
 つまりベルギーのテロリストの巣窟であるモランベーク地区に潜伏するテロリストは、西のポルトガルであれ、北のノルウェーであれ(もちろんフランスのパリも)、爆弾とカラシニコフを持ってノーチェックで移動できるのだ。
 そしてテロリストが自爆して死んでも、ムスリムのコミュニティーから新たなホームグロウン・テロリストが出現してくる。テロリストの封じ込めと逮捕は、容易なことではない(写真=テロの実行犯。左の2人は自爆し、右の1人は逃亡の可能性)。


テロ実行犯と逃亡犯


シリアとイラクのISIL殲滅はいよいよ急務
 ただ1つ言えるのは、シリアとイラクに広大な「国土」を有するISIL本体を殲滅することが根本的に重要だということだ。
 ヨーロッパで育ったホームグロウン・テロリストは、ネットなどを通じてISILから、直接・間接にテロ「指令」を受け、犯行に及ぶ。ヨーロッパのホームグロウン・テロリストにとって、シリアとイラクに巣くうISILは、精神的な司令塔、聖なる絶対神の声だから、これを潰さない限り、後から後からテロリストは、ヨーロッパのムスリム・コミュニティーから湧き出してくるだろう。
 シリアとイラクのISIL殲滅の重要性は、さらに高まっているのだ。


今はテロを免れているドイツもいずれホームグロウン・テロリストの洗礼
 今のところ、メルケル首相のドイツはテロの標的から免れている。シリアへの直接空爆をしていないことが、ISILにテロ指令を控えさせているのかもしれないが、メルケル首相は昨年、将来のテロの芽を多数、抱え込んでしまった。
 100数十万人もの経済「難民」を受けいれたが、彼らの子供たち・孫たちはいずれホームグロウン・テロリストになるのは必至だからだ。ベルギー、フランス、イギリスといったイスラム原理主義テロリストによる無差別テロ攻撃を受けている国は、国内にすべて分厚いムスリム・コミュニティーを抱えていることは示唆的である。
 困難な母国から逃れ、ドイツで手厚く遇されたからと言って、いずれ彼らも社会の荒波に漕ぎ出していく。教育もドイツ語習得も十分でなければ、やがて社会の底辺に沈殿していく。子供たちは、成長しても失業者となるだけだ。
 そこに、必ず「憎悪」が生まれる。経済「難民」の10%がドイツ社会に不満を抱き、さらにその10%がホームグロウン・テロリスト予備軍となるとすれば、1万人強である。
 社会を防衛するコストは、膨大であり、防ぐことはできない。
 フランクフルトであれベルリンであれ、いずれ自爆テロの洗礼を浴びることになろう。ISILの存在する今のままなら。


昨年の今日の日記:「ポーランド紀行:田舎は時間がゆったりと流れるような風景」