バハルダールの街のすぐ北にあるタナ湖は、面積が東京都の1.5倍ほど、約3000平方キロの淡水湖だ。青ナイル川の源流であり、この青ナイルは前日の日記でも述べたが、スーダンのハルツームで白ナイルと合流し、ナイル川となり、エジプトに豊かな実りをもたらす。


タナ湖クルーズがエチオピア最初のエンタメ
 ナイル川が季節的な氾濫を繰り返し、この氾濫が農耕に適した肥沃な土壌をもたらし、同時に氾濫を予知するための暦法と文明をもたらした。ナイル川の水源の8割は青ナイルなので、その氾濫は源流のタナ湖周辺の雨期の降雨の賜物である。言い換えれば、青ナイルがエジプト文明をもたらした、と言えるのである。
 僕たちは、多くのプラスチックボートの係留されている所に案内された(写真)。このうちの1隻に、僕たち一行14人と添乗員氏、現地ガイド氏、そして船頭が乗る。タナ湖クルーズが、実質上、エチオピア最初のエンターテインメントになる。


タナ湖の船着場


タナ湖の透明度は高くない
 僕たちは、現地ガイド氏に促されて真新しいライフジャケットを着用した(写真)。なんでもちょっと前にボートが転覆して犠牲者が出たらしく、クルージング船はライフジャケットを装備することが義務付けられたらしい。


ライフジャケットを着て出港

 湖面は、穏やかだ。ただ船着場を出ると、やはり波をかぶる(写真)。


タナ湖クルージング

 僕たちの船よりも小さな観光船が、軽やかに追い抜いていく(写真)。


僚船が追い抜く

 水は、エメラルド色で、透明度はあまりない。水深があまり深くなく、さほど人口はないものの周囲からの生活用水や農業排水などが流れ込んでいるからなのだろう。これを、青ナイル川流域の人たちは飲用に用いているのだ。
 水深は最大で15メートルほどというから、遠い将来は土砂で埋まって湿地化するかもしれない。そうなったらナイル川の定期的氾濫もなくなる。ただそれはおそらく数千年も先の話だ。


多数の島にエチオピア正教の修道院
 タナ湖には、多数の島が点在し、そのうちのかなりにエチオピア正教の教会・修道院がある。人里離れているから、神への献身と修行にはちょうど良いのだろう。
 僕たちは、40分ほどクルーズして、そのうちの1つの島に渡る。途中、左手に島が見え、そこに上陸するかと思ったら、上陸する島はもっと先だという。その小さな島にも、確かに修道院らしい建物が見えた(写真)。


島影

 鬱蒼とした森におおわれた島は、飛行機の中から見下ろした褐色の大地と隔絶された別天地の感である。


昨年の今日の日記:「ポーランド紀行:ワルシャワへの道はモノトーンの風景、時折、コウノトリがアクセント」