公募増資のあったREIT(リート=不動産投資信託)を買った。日本プロロジスリート投資法人発行のものと、オリックス不動産投資法人発行のものだ(写真=募集目論見書)。
前者は物流施設用不動産に、後者は主にオフィスビルや商業施設などに投資する。いずれも、小口で買った。1つに資金を集中投資するのは、最もハイリスクだからだ。
公募で買えば、ディスカウントがあって、手数料なしのメリット
過去に何度も述べたが、ゼロ金利下では余裕資金の受け皿はREITしかないと思っている。IPО株は理想的だけれど、これはまず入手不可能。となれば、REIT、しかも公募増資に応募しての購入が次善の策である。
REITの公募増資の利点は、値決め確定日の終値に2~2.5%ディスカウントした価格で買える点だ。プロロジスは2%、オリックスは2.5%のディスカウントであった(このディスカウント率は人気の高さを反映する)。
さらに魅力的なのは、証券会社への手数料支払いがないことだ。発行元は、公募増資価格に引受証券会社への手数料を含めて公募しているからだ。
REITも、株と同じで、公募増資が発表されると、投資口価格は下がる。株の場合、大幅公募増資だと、激しく値下がりする。増資で1株当たりの利益が希薄化するからだ。
株と違って公募増資は「買い」
REITも、通常は下がる。しかし株ほどは下げず、公募の投資口(株と同じ)が売却可能となる数日前からじり高となることが多い。
投資口1口当たりの利益が希薄化するのは株と同じだが、増資で集めた資金の使用目的が明確である点が最も異なる。
株の増資の場合、極端な場合、借入金の返済、という後ろ向きの使い道のあることが多い。ところがREITは、増資で調達した資金を新規取得不動産取得に使うことが明確になっている。つまりよほどの高値での取得でない限り、将来的に賃料の増額が確実に見込まれるから、分配金も増えると期待される。したがってじり高となる(年初のような投資環境が悪ければ、それでも下がるが)。
いずれも利回りは年3%超
実際、プロロジスもオリックスも値決めの日が底値で、その後、じりじりと高くなり、11日終値ではプロロジスが1口257,300円(公募価格は8日払い込みで同231,574円)、オリックスが171,400円(公募価格は10日払い込みで164,580円)となっている。
今、売れば多少の値上がり益を得られるが、僕のREITを買う狙いは分配金というインカムゲインであって、値上がり益というキャピタルゲイン狙いではない。だから、売らない。
ちなみに分配金利回りは、今週末現在でプロロジスが年3.08%(値上がりしたので、利回りは前週末比0.25%悪化)、オリックスが3.40%(同0.01%悪化)である。大きな値下がりリスクさえなければ(1990年代のバブル崩壊時の不動産市況の崩壊は、最大のリスクだ)、長期保有でのこの利回りは魅力的である。
トヨタの新型種類株、今から思えばベスト金融商品だった
さてここで思い起こされるのは、昨年夏にトヨタ自動車が公募した新型種類株である。当時は、株価が上昇局面にあり、トヨタ自動車株の配当利回りだって2%超もあったから、僕にはちっとも魅力的に思えなかったが、今にすればリスクを嫌う一般投資家には魅力たっぷりの最良の金融商品だったと言える。(15年7月26日付日記:「トヨタの新型種類株、開発・一手販売の野村證券は大成功の笑み;経済」、7月5日付日記:「トヨタの新型種類株発行、そして女性役員逮捕の教訓」、6月14日付日記:「トヨタの発行予定の新型『AA型種類株』は買いか?;経済」を参照)。
この種類株は、初年度に0.5%の確定配当があるうえ、2年目には1%、3年目に1.5%と年々高くなる確定配当が約束され、5年目以降はそれが2.5%にもなる設計だ。
5年後にはずっと年2.5%の配当金
満5年たつと、購入者は希望すればトヨタが額面で買い取ってくれる。仮にその時に上場トヨタ株が募集価格の1万0598円を越えていれば、普通株にも転換してもらえる。さらに「株は嫌」という投資家には、そのまま持ち続けるという選択肢もある。その場合、ずっと年2.5%の配当金が受け取れるのだ。
唯一の難点は、途中換金が不可、ということだけだ。
日銀のマイナス金利導入が見通せていれば、それこそ「女房を質に入れても」この種類株を買ったことだろう。
今、大人気の個人向け国債の利率はたった0.05%
10年物個人向け国債が、年利たった0.05%にもかかわらず、ゼロ金利下ということで、金融機関で飛ぶように売れるご時世だ(個人向け国債については、前にも述べた。15年6月11日付日記:「リスクフリーの個人向け国債の変動10年債は狙い目;経済」を参照)。
6カ月ごとに金利は見直されるが、たとえマイナス金利になっても0.05%は保障されるから、確定利率の銀行の低利定期預金より有利、ということがウケているようだ。しかし100万円を投資しても、年に税込みでたった500円にしかならない。それでも、なのだ。
新型種類株、もうない?
トヨタの新型種類株は、今となればあり得ないほどの投資家に有利な設計の金融商品だったから、もしこの種類株が上場されていれば、額面よりずっと高い値で転売できるに違いない。
こんな有利な金融商品が、このゼロ金利下では、今後出てくる可能性はほとんどないだろう。あったとしても、利回りはずっと悪いものになり、魅力は乏しくなるに違いない。
トヨタも、これで新規ファンをつかんだとすれば、損はないに違いない。さすが尾張商人の血筋である。
昨年の今日の日記:「ポーランド紀行:山上の礼拝室にもキリスト像;追記 中国の全人代で超反動的な『反テロ法』」