乾期のエチオピアは、ビールが美味い。
 特に歩いてほどよく疲れた後の食事時のビールは、絶品である。気候が乾燥しているので、それこそ「五臓六腑」に染み渡る。


セント・ジョージ


確認できただけでも最低6銘柄
 エチオピアという国は、実際、特産のコーヒー以外は何もない国だ。僕も乏しい知識で、エチオピアにビールなんて、あるのか疑わしく思っていた。
 ところが行ってみて、確認できただけでも銘柄は5種類以上になるのである。
 昼食と夕食とレストランで、食事時にビールを注文する。たいていは複数の銘柄がある。順番に飲んで行った結果、最低でも6種類を確認できた。
 たぶん一番人気は、エチオピア正教の聖人の名を採ったセント・ジョージ(上の写真)である。これは、行きの飛行機(ビジネスシート)内でも、ハイネケンなどと並んでチョイスできた。


ダシン


値段はレストランで110円から
 値段は、日本の常識からは「激安」である。普通のレストランで20ブル(約110円)、最も高い所で40ブルだった。日本のレストランの7分の1の値段である。むろんエチオピア国民の所得水準からすれば、十分に高いのだろうが、その安さに感激してしまう。しかも、味は悪くないのである。
 僕は、ムガベ独裁政権の破綻国家ジンバブエでも、「ザンベジ」銘柄の美味しいビールを飲んだことがある。なんで破綻国家に、といぶかしく思ったが、ここは長らくイギリスの植民地だった。イギリス人が、ビールの醸造技術を教えたのだろう。


デベーレ


欧米の植民地になったことのないエチオピア、どこで醸造技術を学んだのか
 しかし古代イスラエル王国のソロモン王とシバの女王との間に出来たメネリク1世が開いた「皇統3000年」のエチオピアは、第二次世界大戦期の一時期にイタリアに侵略されて以来、欧米列強の植民地になったことがない。サブサハラ(サハラ以南の)アフリカで、アメリカの解放黒人奴隷が建国したリベリアと並んで、たった2カ国しかない稀有な国である。
 だからビール醸造技術をヨーロッパのどこから学んだのか、謎である。
 そんな背景もあって、エチオピアでのビールなど、実は全く期待していなかったのだ。大いなる誤算である。


メタ

缶ビールはない?
 安かったこともあり、昼・夕と1日2回飲んでも、アジスアベバ国際空港に到着して、ビザ取得後に現地通貨ブルに5000円両替しただけで、十分にまかなえた。
 ただ、ここは工業がほとんど存在しない農業国エチオピアである。ビールは、どうやら瓶ビールのみだ。製缶工業がないからなのだろう、缶ビールは見られなかった。
 ある中高年女性が、旅行するたびごとにその国の缶ビールを、留守番している息子へのお土産として半ダース買って帰っているという。
 ところが最後の日、地元旅行社の日本人スタッフに頼んだところ、缶ビールは売っていないと言われ、やむなくセント・ジョージの瓶ビールを2本だけ購入し、万一を考え、ビニールで何重にも包装し、スーツケースの奥にしまい込んだ。無事に割れずに日本に持ち帰れただろうか。
 その点、やはりここはアフリカ、であった。
 写真は、上からセント・ジョージ、ダシン、ベデーレ、メタ、ゼーメン。


ゼーメン


昨年の今日の日記:「ヨルダンが報復に「イスラム国」支配地を猛空爆、そして遠く欧州ではギリシャ・チプラス政権にユーロ圏離脱が迫る」