伊藤忠商事がタイの最大財閥で華僑系のチャロン・ポカパン(CP)グループと組んで、スターリニスト中国最大の国有複合企業「中国中信集団」に資本参加することになった。20日に発表された。


中国の2014年の成長率は目標に達せず、7.4%の24年ぶり低成長
 時あたかもスターリニスト中国の経済減速が鮮明になった日である。同日、中国国家統計局が発表した2014年のGDP成長率は7.4%と、目標の7.5%に及ばず、前年の7.7%と比べて0.3ポイント下がり、24年ぶりの低成長になった。
 IMF予測によると、今年2015年はさらに減速し、成長率は6.8%に低下する見込みだ。
 不動産が不振を極め、鉄鋼、銅、石炭など基礎資材も余剰を抱えている。
 高成長のピークは過ぎ去り、今後、構造的な低成長に移る。


伊藤忠単体で6000億円、その中身は……
 その中国の国有企業に、伊藤忠は1兆円強を投資する。20日付の日経新聞朝刊が1面トップで伝えた。冒頭に述べた正式発表は、日経のすっぱ抜きで、急遽なされたのだろう。しかも投資資金は円安のために膨らみ、CPと共同で投資する額は1兆2040億円だ。折半だから、伊藤忠は6000億円もの巨額の投資を行う。
 愚かな決定、と呼ぶべきである。
 なぜなら伊藤忠単体で6000億円も出資するのに、北京の本体にではなく、香港の子会社へ、の投資なのだから(写真=香港の中信集団のビル)。それも、両社合わせても20%だ。伊藤忠単体なら10%分の投資でしかない。


香港の中信集団ビル


共産党支配の国有企業の子会社に出資もたった10%
 これでは香港子会社の主導権もとれないし、ましてスターリニスト中国の親会社「中国中信集団」に全く影響力を持てない。
 親会社に直接投資できなかったのは、共産党の支配する国有企業だからだ。
 その子会社に6000億円も投資する。政治リスクだけ大きい、時代遅れの投資、と言うしかない。
 商社ビジネスのノウハウを中国側に一方的に吸収され、吸い取られた後はレモンの絞り滓のように捨てられるだけだろう。


株式市場は巨額投資を嫌気し、伊藤忠株は下げ
 マーケットも、それを懸念したに違いない。朝刊でこれが報じられた20日の東京株式市場では、日経平均全体が前日比352円高と全面高となったのに、伊藤忠だけは31.5円安(2.5%安)と逆行安となった。昨21日も、前日比24円安(1.99%安)で引けている。
 市場は、政治リスクの大きさと経済停滞を嫌気しているのは明らかだ。


スターリニスト中国に融和的な社史
 伊藤忠は、元社長の丹羽宇一郎氏が2012年12月まで、2年半もスターリニスト中国の大使を務めたこともある媚中商社だ。1972年の日中国交樹立の後、共産政権成立後に総合商社で最も早く中国に再参入した商社でもある。
 それにしても、伊藤忠の株主にすれば、たまらない思いだろう。
 共産党の膝元ににじり寄り、中国国内と世界の民衆を抑圧する巨大国有企業に6000億円もプレゼントしたのだから。リブパブリが株主だったら、20日の寄り付きで株を売っただろう。


昨年の今日の日記:「スターリニスト中国の大気汚染、今年、さらに深刻化;PM2.5、空気清浄機」


追記 進む長期、中期金利の歴史的低下;10年物国債、一時0.2%割れ
 その20日、債券市場では、日本の長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時、0.195%をつけ、一時とはいえ史上初めて0.1%台になった。


5年物国債は初のマイナス金利に
 さらに驚くべきことに、同日、新発5年物国債利回りが、わずか0.005%とはいえ、初めてマイナス金利となった。5年債でマイナス金利とは、債券バブルも行き過ぎである。
 金利急低下は、債券の価格が上昇するということだから、5年債の如きは、投資家が損をしても国債を買う、ということである。
 ただし、世界にはもっとすごい国がある。15日に中央銀行が無制限の為替介入を突然中止したスイスで、10年物スイス国債の利回りが初めてマイナスとなった。
 10年物という長い債券を満期まで持っても損をする、それでも買う、というのだ。この間、もしインフレとなったら、投資家は莫大な損失を抱えるのに、だ。
 これは、現地時間で今日(22日)にもECB(欧州中央銀行)がアメリカ、日本に次いで量的緩和に踏み切るという観測が強いからだ。
 もし量的緩和が延期されたりすれば、債券市場と為替市場、株式市場は大荒れとなるだろう。