匿名でのネット上の無差別テロの脅迫があれば、どんな映画の上映は取りやめる――とうてい信じがたい、トンデモ決定をアメリカのソニー・ピクチャーズエンターテインメント(SPE)が17日に発表したことに、アメリカのメディア界で冒頭のような憂慮が広がっている。
ハッカー攻撃で情報ダダ漏れ、そればかりか……
SPEが上映を取りやめた映画は、北朝鮮ならず者集団の金正恩暗殺を描いたコメディー映画「The Interview」(写真=同映画のシーン)。この映画で、金正恩は終盤に頭部を爆破されて死ぬ。
テーマはもちろん、その描写が北朝鮮ならず者集団の怒りを買ったらしい。
先月24日、SPEは、北朝鮮ならず者集団から発信されたことが確実なハッキング攻撃を受け、映画のシナリオはもちろん、経営陣のメールや出演者・従業員らの個人情報などが外部に漏れた。
神格化された金正恩への冒涜、とみなされたか
これと同時に、この攻撃を行った北朝鮮ならず者集団ハッカーらによって、「9月11日を想起せよ」などと、25日から全米で公開予定だった同映画の上映館などへの無差別テロ攻撃を示唆する声明がネット上で宣言された。
これに恐れをなした一部の映画館チェーンの先行上映が中止され、SPEも冒頭の決定を発表した。
この映画を観ていないが、コメディーである。観客も、これを観て本当に金正恩を暗殺すべしなどと思うはずはない。
しかし北朝鮮で神格化されている金王朝3代目の正恩への冒涜、とならず者集団は考えたようだ。
やってはいけない「テロリスト」との取引
SPEの決定は、北朝鮮ならず者集団が深くかかわっていることから、本当にテロが実施された場合を憂慮したからだろうが、これは冒頭で挙げたようなとんでもない悪例を残したともいえる。
映画をお蔵入りに追い込んだことに味をしめ、今後、北朝鮮ならず者集団は、金正恩を揶揄した映画・著作・記事に対して、同様の脅迫を繰り返す懸念がある。
やがてその範囲は北朝鮮国家そのものへの批判に対しても広がるだろう。
SPEの決定は、まさに決してやってはいけないテロリストへの譲歩、すなわち取引に応じてしまったのだ。上映はやめるから攻撃しないでくれ、という取引である。
9.11テロ以来、初のテロリストの勝利
もっと言えば、表現の自由への攻撃に屈したのだ。ある米紙が、「9.11のテロ以来、アメリカは初めてテロリストに勝利を許した」とSPEを批判した。
何物にも代えがたいとても大事な物を、SPEは投げ捨てたのだ。
SPEの無責任な対応を厳しく批判する。
昨年の今日の日記:「南部アフリカ周遊:ヨハネスブルクのオリバー・タンボ名称の空港へ;ウォルター・シスル、ネルソン・マンデラ、ANC、アフリカーナー」