昨日4日、北朝鮮ならず者集団は、日本人拉致被害者と行方不明者などを調査する特別調査委を発足させた。これに合わせて政府は、北朝鮮ならず者集団に独自に科してきた制裁の一部を解除する閣議決定をした。


特別調査委立ち上げは金正恩の意志
 政府の決定は、北朝鮮ならず者集団が立ち上げた特別調査委に、北朝鮮ならず者集団の最高機関である国防委員会第1委員長の金正恩が事実上の指揮をとっていると確認されたからだ。不可侵の地位にある金正恩本人こそ表面には出ていないが、国防委参事兼国家安全保衛部(秘密警察)部副部長のソ・テハが就いたことから、そう判断できる。
 金王朝専制支配の北朝鮮ならず者集団では、国防委員会とその指揮下にある国家安全保衛部は万能の権力を持つ。そこの要職にある人物が特別委委員長に就いた以上、特別委立ち上げが金正恩の意志であることは明らかだからだ(写真=北朝鮮の施設を視察する金正恩。視察には、いつも人民軍幹部がお供としてついていく。若いのに早くも腹が出ていることに注意)。


軍施設を視察する金正恩

視察する金正恩


頼りの中国に見捨てられた金正恩
 さて、それでは12人の拉致被害者とそれ以外の政府未認定で北朝鮮ならず者集団に拉致された特定失踪者たちが全員帰還のレールが敷かれたと言えるだろうか。
 現状では安易な速断をできないが、我が国が数次の日朝協議を通じ、北朝鮮ならず者集団と新しい段階の交渉に入ったのは、時間に追われているからだ。それは、同時に北朝鮮ならず者集団も共有するものだ。
 現在、日朝双方に弱みがある。
 3日に習近平らが自国より先に訪韓したことに象徴されるように、北朝鮮ならず者集団は、スターリニスト中国から見捨てられてしまっている。韓国とは、朴槿恵政権と全く敵対した状態で話し合いの糸口すらつかめない状況で、アメリカは核・ミサイルの放棄を主張し、6カ国協議にすら応じようとしていない。
 それなのに、スターリニスト中国から原油供給も途絶えるほどの経済困難である。この春には、地方では餓死者も出ているはずだ。


金正恩に幸いした対北朝鮮強硬派の安倍首相が交渉相手
 金正恩体制になって、国民や体制を支える屋台骨である人民軍兵士までさらに飢えさせるだけで、誇れる実績がない。孤立脱却、中韓米への牽制、さらにはその先の日本からの経済協力は、北朝鮮ならず者集団にとって喉から手が出るほど欲しいカードだ。
 つまり北朝鮮ならず者集団にとって、すがれる「藁」は日本しかない。
 しかも対話相手は、高支持率で安定政権の安倍首相である。さらに安倍首相が対北朝鮮強硬派であることは、もっけの幸いでもある。
 家族会からも全幅の信頼を得ている安倍首相が交渉開始にGoと言えば、誰も異論を差し挟めないからだ。これが例えば親北朝鮮派のバラマキスト民主党のボケ菅だったら、拉致家族会をはじめ、日本国内での抵抗が激しく交渉開始すらできなかっただろう。
 金正恩にとって日朝改善のきっかけは、今しかないし、背に腹は代えられない時でもあるのだ。


金正恩は張成沢の粛清でフリーハンドを得た?
 一方、日本側の弱みは、明白に拉致被害者ご家族の高齢化である。時間がたてばたつほど、櫛の歯が抜けるようにご家族が亡くなっていく。時間に追われていることが、交渉上の最大の弱点になり得る。
 北朝鮮ならず者集団が本気であることは、特別調査委の顔ぶれから明らかになった。
 金正恩が、Go指令を出せた最大の要因は、拉致に一切のしがらみがないことがある。拉致と対韓テロに直接に手を染めた父の金正日は死に、金正日から付けられた煩い「後見人」である張成沢は昨年12月に粛清済みだ。張成沢がナンバー2のままであれば、あれこれ注文をつけられ、とうてい拉致調査などに踏み切れなかっただろう。


金正恩にとって拉致被害者は金正日の残した「負の遺産」
 むしろ高齢化しつつある拉致被害者をいつまでも抱えていることは、「テロ国家」という汚名を受け続けるだけで、何のメリットもない。
 いわば金正恩体制にとって、父親から受け継いだ「負の遺産」でしかない。金正恩にすれば、こんな重荷はさっさと捨て去りたいだろう。
 たぶんに希望的観測を含むが、したがってリブパブリは、金正恩は拉致被害者をすべて帰国させてもいい、と決意したのだと予測する。ただし、その切り札にはできるだけ高い値をつけたい、とも考えているはずだ。代償に、かなりの無理を言ってくるか可能性はある。
 その時、安倍首相は、どこで落としどころを探るか。
 しかしその無理を跳ね返せて、納得のいく回答を得られれば(不幸にして北朝鮮という異国で早世した被害者がいれば、その遺骨などの科学的鑑定で確認して)、年内にも、早ければ夏の終わりにも電撃訪朝して、拉致被害者を連れ帰ってくるだろう。


習近平、北朝鮮切り捨ての訪韓
 時あたかも、北朝鮮ならず者集団を見限ったスターリニスト中国の習近平は、外相や外交担当の国務委員らも引き連れて、韓国を訪問した。北朝鮮ならず者集団よりも先に訪韓したことが、習近平の韓半島の2カ国に対しての立ち位置を明示している。
 北朝鮮ならず者集団は、スターリニスト中国の言うことも聞かず、駄々をこねるだけで、常にカネとモノをせびるだけの厄介者だ。一方の韓国は、主要貿易相手国である(韓国にとってはスターリニスト中国は最大の貿易相手国、かつ最大の貿易黒字国)。今後、技術導入とともにさらなる利益をもたらしてくれる相手だ。
 どちらを重視すべきかは、習近平にとって自明のことである。


中韓反日同盟の成立で、わが日本は韓国に斟酌せず対北朝鮮交渉を進めよ
 そして3日に発表された共同声明では、本文でこそ明記されなかったが、付属文書で慰安婦問題を共同で「研究」することを明記した。
 ここにスターリニスト中国と韓国の反日同盟が明白に成立した、と言える。
 であるなら、日本はアメリカの意向だけ忖度し、韓国などを一切考慮せず、対北朝鮮ならず者集団との交渉を進めればよい。幸い、アメリカも今回の交渉には理解を示している。
 東アジアの政治風景は、安倍政権の登場前とすっかり様変わりした。


昨年の今日の日記:「磐梯山登頂記:ソールが剥がれるも、銅沼の美しさに感動;景気回復の芽をつまないためにも」