ライオン・パークでホワイトライオンを観られ、ツアー一行は大喜びであった。リブパブリも、ここでホワイトライオンが観られるとは思ってもいなかっただけに、感激したのは言うまでもない(写真)。
見栄えはみすぼらしいけれども
ところが次に我々の四駆が回ったスポットでは、一行はがぜん白ける。リカオン(ケープハンティングドッグ)だったからだ。
リカオンは、見栄えからして素人受けはしない。まず全身に斑模様があり、見た感じは「小汚い」。それに見た感じは、野犬とさほど変わらない。サイズも、中型犬並みで、大きくて立派でもない(写真)。
しかしリカオンは、絶滅危惧種なのである。サハラ以南のアフリカのサバンナに、イヌ科らしく群れを作って暮らしているが、今や全アフリカで数千頭しかいない、と考えられる。しかもその生態は、家族愛に満ちたものだ。
ここではリカオンは成体しか見られなかったが、彼らは巣穴に仔を隠しているので、ひょっとすると我々の見られない所の巣穴に幼体がいるのだろう。
サバンナには手強い競争相手がいっぱい
リカオンの生態は、まことに微笑ましく、メスが仔を産むと(産子数は10頭前後)、母親が狩りに行っている間は、その前年に産まれたメスがヘルパーとして仔の面倒を見る。また狩りに出た兄姉は、巣穴に戻ると「弟妹」に当たる仔に肉を吐き戻して与える。
世話をするメスにとって、仔は血縁関係にある弟妹だからだが、時には自分が繁殖できる年齢になっても弟妹の世話を見る個体もいる。自分は繁殖を犠牲にしても、弟妹を育てた方が遺伝子としてベターだとなれば、そうした行動も進化するのである。
草食獣を捕食して命をつなぐリカオンにとって、サバンナには手強い競争相手がいっぱいだ。自分よりはるかに大きいネコ科動物にライオン、ヒョウ、チーターがいるし、ライオンに次ぐ大型肉食獣であるブチハイエナもいる。
しかも全体的にアフリカでは、食肉目の中でも、イヌ科はネコ科よりはるかに劣勢である。めぼしい近縁者に東アフリカのジャッカルがいるが、いずれも繁栄しているとは言い難い。
ならば準社会性の生態を進化させなければ、生き延びられなかっただろう。
吻部を触れ合って絆を確かめる習性が仇に
前記のようにリカオンは絶滅危惧種である。そこまで落とし込めた原因の1つに、彼らの習性にある。
彼らは、群れの中で、互いの信頼関係を試すかのように、しょっちゅう口吻を触れ合う挨拶行動をする。人間で言えばキスのようなものだが、それで群れの絆を強めているのだが、この習性は疫病に対しては脆弱だ。
実際、近年に大きく個体数を減らしているのは、人の飼う犬からジステンパーを移され、それがあっという間に群れ内に伝染したことによる。
以前、BBCだったと思うが、ネイチャー番組でリカオンの群れを追う番組があった。人里近くに現れたリカオンが、家犬にジステンパーを移され、番組クルーの追っていた群れがいなくなってしまったのである。
吻部を触れ合う挨拶行動を通じてジステンパーが群れに広がり、ジステンパーに免疫を持たない群れはあっという間に病死してしまったと考えられる。
種の保全を担う施設
ライオン・パークにリカオンというのも妙だが、この施設は外国人観光客からマネーを稼ぎ、地元民に雇用を提供する場だけではなく、現代の動物園のように、種の保全も担っているのだろう。だからホワイトライオンも飼育されていたのだ。
リブパブリには、リカオンもひときわ愛しく思われたのであった。
上の写真のホワイトライオンは神々しいが、どうか見栄えだけで動物を判断しないでいただきたいと思う。
昨年の今日の日記:「クリントン国務長官の強い対中警告と安倍首相訪米、追記=アルジェリアの武装殺人集団の制圧」