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 国連安全保障理事会は27日夜(日本時間28日午前)、米ロが合意したシリアの化学兵器廃棄計画に法的拘束力を与える決議案の採決を行い、全会一致で採択した。これまでシリアに関する国連安保理決議は、3度、アメリカなどから提出されたが、いずれもロシアとスターリニスト中国の拒否権行使で否決されてきた。
 これがシリアに関しては、初めての安保理決議となる。

武力制裁実施には新たな決議が必要
 同決議では、化学兵器廃棄計画の不履行など、シリアが決議を順守しない場合には、武力行使や経済制裁を可能とする「国連憲章7章に基づく措置を科す」と、制裁措置も盛り込んだ。来年前半までにシリアの化学兵器廃棄を目指す。
 憲章7条にまで踏み込んだ決議に、なぜロシアとスターリニスト中国は賛成したか。特に、シリアに特別の権益のあるロシアが、なぜ賛成したのか。それは、巧妙に仕組まれた罠が埋め込まれているからだ。
 仮にアサド政権が化学兵器廃棄をサボっても、自動的に武力行使とはならない仕組みが盛り込まれたのだ。同憲章の制裁実施には、新たに別に決議を採択する必要がある。
 もし現実にアサドの不誠実が明らかとなり、制裁を実施しようとしても、新たにそのための決議が必要になり、決議案を提出しても、その時点でアサド政権から「イスラム原理主義テロリストに化学兵器廃棄作業を妨害されている」と弁解されれば、ロシアはアサドの不利にならないように、制裁決議を和らげることができるし、場合によっては拒否権行使して葬り去ることもできる。となると、国際社会は制裁を実施できない。

名を捨てて実を取ったロシアの外交的大勝利
 つまりロシアは、制裁決議の空洞化に成功した。いわば名を捨てて実を取ったのだ
 さらに見逃せないのは、サリンを自国民に使用して大量虐殺したアサドの責任をあれほどオバマらが糾弾していたのに、決議案ではアサドの化学兵器使用の犯罪に直接の言及がなく、事実上、アサドが免罪されたことだ。
 シリア化学兵器関連施設と軍事施設への限定的空爆を実施できなかったオバマのアメリカなど欧米諸国の足もとを見た、ロシアの外交的大勝利である。
 これで欧米諸国の軍事行動を阻止できたから、アサドが本気で化学兵器の廃棄に踏み切るとも思えない。11年春に始まった反アサドのデモ以来、ミサイルや砲撃、サリンガスなどにより、11万人以上の命が奪われているシリア内戦は、アサド優位のもとで進む可能性が高い。

オバマの見逃しはやがてアメリカ国内テロで返ってくる
 1999年、国連決議のないまま、ジェノサイドが憂慮されたコソボの危機を救うために、NATO軍は「人道的介入」でセルビア爆撃を刊行し、セルビアの独裁者ミロシェヴィッチを屈服させた。シリアのアサド政権による蛮行は、ミロシェヴィッチの蛮行をもしのぐ。それでもアメリカのオバマ腑抜け政権は、シリアに人道的介入をしない。
 オバマのメンツが丸つぶれなのはかまわないが、これによって世界の民主主義と人権の守護者というアメリカの権威は失墜した。オバマのアサドの蛮行の見逃しは、やがてアメリカ国内に「10倍返し」となって戻ってくるだろう。
 それは、シリア国内の反アサド軍事勢力に急速にアルカイダ系テロリスト勢が比重を増しているからだ。アサドを倒したとしても、シリアはかつてのタリバーン支配下のアフガニスタンのようになる。その時、シリアからアメリカへ第2、第3の「9.11」攻撃がなされるだろう。

アルカイダ系テロリストの支配地域では残酷な支配も
 アルカイダ系テロリスト勢力の動きは、このところ顕著になっている。26日には、シリア国内でアサド政権軍と戦うアルカイダ系イスラム過激派ヌスラ戦線などの13組織が、国際的に認知された反体制派の代表組織「シリア国民連合」を認めないとする声明を発表した。
 すでに彼らは、シリア国内各地の制圧地域で厳格なイスラム法を導入し、従わない市民に斬首による処刑や女性のベール着用の強制など、残酷な支配を行っている。
 キリスト教徒地区では、イスラムへの改宗を強制し、拒否したキリスト教徒を処刑したり、いずれかに拉致したりしている。

イスラム原理主義テロリストはすでに反体制側の半分の勢力に
 彼らの蛮行は、支配地域内に留まらない。イスラム原理主義テロリストは、アサド政権軍をそっちのけに、各地で自由シリア軍を攻撃している。
 例えば、イラクを拠点とするイスラム原理主義テロリスト最強硬派組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」のテロリスト勢力は、今月18日には北部トルコ国境近くの自由シリア軍の拠点を襲った。それどころかISILは21日には、北東部で同じアルカイダ系のヌスラ戦線の拠点も襲撃し、イスラム原理主義テロリスト間でも内ゲバを起こしている。
 イスラム原理主義テロリスト勢力の規模は、今や自由シリア軍をもしのぐほどに膨れあがっている。イギリスの軍事専門誌「ジェーン・ディフェンス・ウイークリー」によると、反体制派軍事組織全体約10万人の中で、アルカイダ直系を含めたイスラム原理主義テロリストは合わせて4万~4.5万人と、半数近くに達している。

自由シリア軍は損耗し、イスラム・テロリストは外国から補充される
 シリア政権軍から離反した将兵と市民の義勇兵から成る自由シリア軍は、アサド政権軍による航空機とミサイルを含む猛攻で、損耗が著しいのに、彼らテロリストはアフガニスタンやイラク、ヨルダン、さらには遠くロシアのチェチェンからも重火器を携えて流入してくる。火器や練度でも、自由シリア軍を上回る。
 現状では、アサド政権軍の主力は、イスラム原理主義テロリスト勢力となっている。アサドが国際社会に「我々が戦っているのは、イスラム原理主義テロリストだ」と自己の蛮行を正当化しているのは、理由のないことではないのだ。

テロの反撃に怯えるロシア
 こうしてみると、ロシアのプーチン政権が、国際社会の非難にもかかわらず、アサド政権擁護をやめないのも、分からなくはない。
 もしアサド政権が倒れれば、シリアにイスラム原理主義テロリストに主導されたテロ国家が出来る。その場合、ソチ冬季五輪を控え、首都モスクワなどで度々、イスラム原理主義テロリストの爆弾テロを加えられているロシアは、いっそう緊張することになる。テロリストは、シリアから陸続きでロシアに攻撃してくる懸念を強めている
 2年前、遅くとも1年前までにアサドを排除していれば、当初は内紛を抱えつつも、シリアに民主的な政権が誕生していたかもしれない。しかし上記のシリア国内情勢を鑑みれば、もはやそれは不可能なような気がする。
 アサド独裁体制かアルカイダによるイスラム原理主義テロ国家か――シリアは、この二者択一に収斂していく。
 オバマらによるアメリカなどの不作為の罪は、深い。
 上の写真は、新チチェン・イッツァの首を切られた戦士と思われるレリーフ。アルカイダは、現代でもこのような残酷な行為を行っている。中央はそのレリーフの彫られた新チチェンの球戯場、は槍を持ったチチェン・イッツァの戦士。

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