写真1
写真2
写真3

 アーティスト・パレットという極めて魅惑的な名前の見物ルートをパスして、私たちの乗るミニバンは、次のポイントのゴールデン・キャニオンに向かう。

狭い峡谷に多様な色彩の地層が露頭
 ここは、テレビで見たことのあるヨルダンの世界遺産「ペトラ」のような(あれほど両側の崖は高くはなく、トレイル幅も狭くはないが)峡谷の道である(写真上)。
 入り口に設置された紙を貼っただけの案内板によると、往復2マイル(3.2キロ)のトレイルのようだ。奥に行くと、素晴らしい眺めの「マンリィ・ビーコン」と「レッド・カテドラル」があるという(どんな奇観か不明)。地図で見ると、最初に立ち寄ったザブリスキー・ポイントに隣接しているようだ。
 同行者となった若いアベック連が、壮大な岩壁を観望するよりも、きゃーきゃー言いながら、道ばたでポーズをとって写真撮影に夢中になっている。これでは時間がおして、とてもその所まで行けないだろう、と覚悟した。
 実際、それはそのとおりとなり、おそらくゴールデン・キャニオンを500メートルも行っていない所で引き返す、という運転手兼ガイドのOさんの無情のご託宣である。こういう所を歩くことが大好きな自分としては、不全感が残ったトレイル散策だったが、それでもほんの少しだけ、色の変わった地層の重なりが露頭した所などを見られたので、よしとしよう(写真中)。

危険な豪雨の爪痕
 写真でもお分かりのように、ここには植生は全くない。
 つまり20年とか30年とかに1度の大豪雨があると、山に降った雨は、樹木で保水されることがないので、雨水はトレイルに一気に集まり、そこが流路となって大洪水になることを意味する。だからこういう砂漠の狭い岩場を歩くときは、少しでも雨が降りそうな雲があれば、峡谷に入るのを回避するというのが鉄則だ。
 実際、写真にも写っているが、トレイルには河床のような大石が転がっている。
 2月24日付の日記「デス・ヴァレー国立公園②;砂漠に生える植物とザブリスキー・ポイント」でも述べたように、2004年、デス・ヴァレーは豪雨に見舞われた。その時、この峡谷にも水が溢れ、上流から一気に流れ下る大洪水となった。その結果、コンクリートで固めていたトレイルは流され、1メートル近い段差を作り出した所もある(写真下
 国内でも車を運転しない以上、車両右側通行のアメリカで思うままの行動の自由などは夢物語なので、どこのポイントも「ちょっと見」でがまんするしかない。それでも、自然の荒涼とした断崖絶壁の景観は、七分どおりは堪能したと言えるだろう。