メディア掲載「ユーストカー」(7月1日号) スカイブルー 外国人整備人材の可能性  | アセアン自動車流通大陸@川崎大輔

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安い労働力からパートナーへ、外国人整備人材の可能性(1)

 

自動車整備業界は、技能自習生、および留学生だけでない、新しい外国人雇用の仕組みを求めている。なぜ新しい仕組みが必要とされるのか。理由の1つは、人材不足という業界の課題が大きくなればなるほど、人材に求める要求レベルとのズレが表面化、更には人材の争奪戦が激化しているためだ。

 

 

◆新しい外国人雇用の仕組みの必要性

 

技能実習制度は日本で働ける年数が限定されている。そのため整備会社の経営者は整備技術や日本語能力が身についたタイミングで帰国をしてしまうことを理由に活用を躊躇(ちゅうちょ)している。言語の壁といった課題も表面化している。整備会社の経営者は「もっと色々と教えていきたいのですが、言葉の理解やコミュニケーション面でまだ不安が残ります」(整備会社の経営者)。また、実習生の逃亡や過重労働といった問題が表面化する中で、多くの企業は、技能実習生の活用に様子見の段階にあるのが現状だ。

 

一方、留学生に関して、中小の整備会社経営者は、「留学生の採用は中小では難しい状況だ」と口を揃えて言う。整備専門学校の留学生向けに奨学金制度を設けて卒業後の就職を促したり、組織力を生かして特定グループのみへ紹介したりと、それなりの資金やネットワークのある企業同士で留学生の取り合いが加速しているためだ。

 

このような中、現状の制度や仕組みだけではそれぞれの会社が求める人材を雇用することが難しい実情がある。ただし、日本の自動車整備業界のために経営者が考えなくてはいけないことは、循環型人材スキームの構築ではないだろうか。つまり、外国人整備人材を単なる短期的な人材不足における労働者とみなすのではなく、長期的な視野で信頼関係を築きパートナーとして外国人整備人材を受け入れていくと言う考え方、仕組みが大切だ。

 

 

◆    循環型の人材スキームの重要性

 

ハノイにある技能実習生送り出し機関のベトナム人代表は「日本で働いた後、本国に帰ってきたベトナム人をベトナムでの日系企業に紹介していきたい」という。日本の企業で学んだ技術を母国の発展に活かせるように日系企業への就労支援などを提案している。整備業界は技術を身につけてベトナムに帰国すれば必ず役に立つ。

 

ベトナムのある技能実習生の送り出し機関では、自動車整備の職業訓練はもちろん、4S、QC、あいさつなど日本のマナーなども指導するようにしている。更に日本に働きにいってからの3年後ではなく、自国に戻り65歳までの長期的な視点で人生設計を考えるような意識改革も行っている。

 

最も力を入れているのは日本語の教育だ。日本語学校は1クラス25名ほどだ。入学前のテストに合格しないと日本語教育プログラムを受けられない。基本的な日本語コミュニケーションと専門分野(機械、農業、建設、食品など)の日本語に分けられている。最初の3ヶ月は日本の生活で使う簡単なコミュニケーションの日本語学ぶ。その後、日本で働く業務の専門用語の授業が行われる。

 

クラスでは、授業の30%ほどを日本語教師が話す時間に当て、残りの70%は生徒が日本語を話す。チームを作りテーマを与えて自ら会話をしていくようにするという。「寮では日本語を使って生活をするように伝えている」という。「日本語ができないと本人も辛い」とベトナム人の日本語教師は指摘する。日本語がわからなければ、日本人の気持ちや働き方も理解できない。働き方が理解できなければ仕事ができない。仕事ができなければ技術や技能、知識も学ぶことができず将来何も残らない。特に日本人とのコミュニケーション能力の習得を第一目標に掲げて教育を行っている。

 

 

◆新しい外国人整備人材、スカイブルー

 

外国人整備人材の活用が、単に整備人材の不足という安易な理由では、人材の使い捨てであり、日本整備業界の人材不足の根本的解決にはならない。それでは、彼ら技能実習生や留学生が日本で学んだ経験を、自国に帰国してからも活躍できるような循環型の人材スキームはどのように構築できるのだろうか。

 

高度人材となるスカイブルーと呼ばれる大卒整備エンジニアが、循環型人材スキームを構築の担い手になると考えている。継続していくには、だれか1人だけがメリットを得ると言う形では難しい。参加者全員がウィンウィンとなるスキームが必要だ。

 

スカイブルーとは「単なる熟練ではなく、かなり高度の専門的知識と技術の裏づけをもち、マネジメントもできる新しいタイプの人々(外国人)」を意味する。水色を意味し、組織の中でも最も重要な役割を果たす、ホワイトカラーとブルーカラーをつなげる人材となる。スカイブルーの外国人と信頼関係を築けた日本企業のみが、将来のグローバル化に成功すると言っても過言ではない重要なエリート外国人だ。
 

将来の日本の整備業界を救うスカイブルー人材を雇用する方法はいくつかある。アセアンの理工系大学で日本語教育を受けた学生をインターンシップとして雇用するインターンシッププログラムもその1つだ。これはインターンとして大学生を受け入れ、卒業後の正規採用につなげるのが目的だ。技能実習生とは大きく異なり、採用人数や受け入れ期間に制限がないことは当然だが、もっとも大きな違いとして、彼らは母国に帰国してからも日本との架け橋を作りながら活躍できる循環型の人材スキームを実行していくことができる。

 

そもそも日本の少子高齢化で言えば、不足しているのは労働力だけではない。若者の数、そのものが急減している。整備事業を含む自動車関連産業の成長、発展を目指す意味でも、期限なく日本で働き暮らすことができる若い外国人整備人材が必要なのだ。

短期的な人材の取り合いを考えるだけでなく、将来的な企業、業界全体の価値として外国人整備人材と共に暮らし、双方にメリットが実現する、そのあたりから外国人労働者について真剣に目を向ける時期ではないだろうか。

 

 

<川崎大輔 プロフィール>
「アセアンビジネスに関わって20年が経とうとしています。アセアン各国で駐在後、日本に帰国して大手中古車企業にて海外事業部の立上げに従事。現在、アセアンプラスコンサルティングを立ち上げアセアン進出に進出をしたい自動車アフター企業様のご支援をさせていただいています。また、アセアン人材を日本企業に紹介する会社アセアンカービジネスキャリアも立ち上げ、ASEANと日本の架け橋を作ることを目指しています。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。