【川崎大輔がみるアセアンアフターマーケット】隠れた自動車大国、マレーシアの中古車 | アセアン自動車流通大陸@川崎大輔

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2018年3月25日発行の、業界最大誌「整備戦略」(日刊自動車新聞社発行)に掲載されました。今回は、マレーシアの自動車中古部品について、記事を書かせて頂きました。


(メディア掲載)【川崎大輔がみるアセアンアフターマーケット】隠れた自動車大国、マレーシアの中古車流通 

 

マレーシアはアセアンの中でも最も自動車普及率が高い国だというのは意外と知られていない。マレーシアの中古車流通を理解することで今後のビジネスの可能性を知ることができる。

 

 

 

 ◆アセアン最大の自動車普及率 

 

初めてマレーシアを訪問した人は整備された道路インフラに驚く。マレーシアの首都クアラルンプール(KL)の空港から市内へ向かう時には綺麗なハイウェイを通る。途中に見えるショッピングモールやスーパーには大型駐車場が設置され、車で買い物に行くという習慣が根付いている。意外だがマレーシアはアセアンで最も自動車の保有率が高い国なのだ。 各国の自動車普及レベルを知るのに、1,000人あたりの自動車保有台数がよく用いられる。マレーシアは400 台ほど、アジアのデトロイトと呼ばれるタイが250台ほど、アセアンで新車販売台数が最大のインドネシアで90台ほどだ。3カ国はモータリゼーションの波に乗り急速に自動車市場のプレゼンスを高めてきた。中でもマレーシアは、タイやインドネシアと異なり、マハティール元首相時代の国民車構想を受け発展が早かった。所得水準の高さに加え、充実した自動車ローン制度、道路インフラの整備によって自動車の利便性が良いことが、普及レベルが高い理由となっている。 

 

 

◆3つに分かれる中古車流通経路 

 

マレーシア国産メーカーでのヒアリングによれば、中古車の年間登録台数は新車販売台数(約60万台)の約80%(=50万台ほど)と見積もられている。登録(名義変更)は、エンドユーザーに届くまでに平均1.5~2回行われており、実際の中古車小売り台数は、およそ25万台前後と推測される。 マレーシアにおける中古車の流通は、新車ディーラー、オークション、中古車販売店の3つの流通経路で取引が行われている。 新車ディーラーはまだ販売規模が少なく積極的な中古車の小売りは行っていない。新車の乗り換えとして手に入れた中古車は中古車販売店へ卸売りをしている状況だ。現地のディーラーへのヒアリングでは小売り:卸売り=1:9であった。一方、トヨタやプロドゥアがメーカー認定中古車のブランドを立ち上げ中古車ビジネスに入り込んだ。 オークションはクアラルンプール(KL)周辺で定期開催しているのが数会場ほどで1開催100~200台が取引されている。ほとんどが自動車ファイナンス会社から出た差し押さえの中古車だ。 中古車販売店はマレーシア中古車流通市場のメインプレーヤーであり5,000か所ほどあるのではないかと言われている。エンドユーザーへの小売りがメインとなるが、他(ほか)の中古車販売店に対しての卸売りも行っている。一般ユーザーやオークションからの仕入れ、中古車販売店同士の中古車交換もあるが、多くは新車ディーラーからの仕入れとなっている。 中古車販売店の集客は、中古車サイトが多く利用されている。中古車を購入したいエンドユーザーもネット、雑誌などで興味がある中古車を確認した後、中古車販売店で現車を確認し購入する。そのためマレーシアの中古車サイトは群雄割拠の状態だ。 

 

 

◆2種類あるマレーシア中古車販売店 

 

マレーシアにある中古車販売店は大きく2つに大別される。1つがマレーシア国内で乗用された後、売却されて再販されている中古車を販売する店舗である。これらは「中古車ディーラー」と呼ばれる。一方、海外から輸入した中古車を販売している店舗がある。この海外から輸入された中古車をマレーシアではリコンカー(Reconditikoned Car)と呼び、リコンカーを販売している店舗はディーラーではなく「(リコンカー)ショールーム」と呼ばれる。 リコンカーの輸入にはAP(輸入許可証)が必要となる。一般的にマレーシアでは生産されていない、もしくは入手しずらい新車に近い車が多い。そのためハイエンド層によって購入され多くは日本からの輸入となる。現地でのヒアリングによれば、リコンカーの購入者が最も高所得層だ。中間所得層は日本メーカーの新車、マレーシアメーカーの新車を購入し、これら新車に手が届かない低所得層が輸入によるものではない国内で流通する中古車を購入している。 

 

 

◆マレーシアにおける中古車ビジネスの展望 

 

自動車は普及しているものの、1世帯複数所有、グレードアップなどの需要によって堅調な拡大が続いているのがマレーシアだ。更に環境小型車のハブ化も新車の拡大を底支えするだろう。新車の拡大は中古車市場の拡大を後押しする。現在はまだオークションなどの市場が成熟しておらず中古車流通が確立していない。日本の中古車流通サービスがマレーシアでも同様に広がるとすれば日本の企業はマレーシアの先を見通せる優位な立ち位置にいる。中古輸出ビジネスに関しては、政府の制度に大きく影響を及ぼす部分はあるが、依然として高級中古車に根強い人気が集まっている。地理的な要因で中古部品と同じく中古車再輸出拠点となる可能性もあり新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があるだろう。 

 

 

<川崎大輔 プロフィール> 大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。