自動車のマーケティングチャネル戦略史 | アセアン自動車流通大陸@川崎大輔

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石川和男著「自動車のマーケティングチャネル戦略史」芙蓉書房出版(2009)

特に本書においては、家電や化粧品では見ることができない、自動車に特有な「複合マーケティングチャネル」の分析が中心になっている。確かに、自動車の流通の実態は非常に複雑であるため、このようにまとまった流通の本があることは頭の整理にちょうど良い。

*日本の自動車流通は、各メーカーが自社のみの新車を販売するマーケティングチャネルである「排他的マーケティングチャネル」、同一メーカーが生産した自動車を異なるマーケティングチャネルによって販売する「複合マーケティングチャネル」の2つによって特徴づけられる。
*アメリカにおける自動車のマーケティングチャネルの構築は、1920年まではフランチャイズをめぐるメーカーのディーラーに対する統制内容は、小売価格維持とテリトリー防御が主であった。契約期間は短く、相互に契約解消簡単であった。しかし、1920年代に入ると、ディーラー直売方式が普及し、包括的なディーラーに対する統制方法がフランチャイズ契約の中に盛り込まれ、メーカーはディーラーに排他的代表権を要求した。この中でメーカーのディラーに対する地位の変化がおこった。つまり、メーカーが小規模な時代は流通業者に販売を依存したが、大量生産体制が確立し、メーカーが大規模化するとメーカーにとって流通業者は管理可能な対象となった。現在でもアメリカでは流通業者であるディーラーの経営規模は日本のように大規模なものではない。そして、1920年代のアメリカにおいては、大量生産体制を確立させ次第に大規模化して行くメーカーと小規模、零細な経営を継続するディーラーにパワー(経済的パワー、情報的パワー、組織的パワー)の差がより拡大した。