こんにちは。

今日は午前中に参議院本会議が開かれました。

精神保健福祉法改正案の趣旨説明質疑が行われ、

私、川田龍平が会派を代表して、質問に立たせていただきました。

 

昨夜遅くになって、

急遽、今村復興大臣の辞任要求を追加することになって、

今朝の段階で、作成して追加しました。

以下、質問原稿を掲載させていただきます。

 

 

精神保健及び精神障害者福祉法改正案についての代表質問原稿

 

平成29年4月7日 民進党・新緑風会 川田龍平

 

民進党・新緑風会の川田龍平です。

精神保健及び精神障害者福祉法の改正案について、

会派を代表して質問いたします。

 

質問に先立ち4日の今村復興大臣の発言には、強い憤りを抑えきれません。同僚の福島選出の増子議員の「潔く自ら辞職すべき」という言葉とまったく同じ気持ちです。参議院の超党派の同僚議員と立法した「原発事故子ども・被災者支援法」の理念には、とどまる人も避難する人も帰還する人のいづれの選択をしても、国が責任を持って適切に支援することを明記しています。いまも先を見通せず、ふるさとを奪われた被災者の気持ちに寄り添えない、今村復興大臣には即刻辞任していただきたい。

 

冒頭、昨年7月、神奈川県相模原市の

知的障害者の入所施設で事件に巻き込まれ、

お亡くなりになった19人のご冥福を祈り、

心より哀悼の意を捧げたいと思います。

 

あの事件が衝撃的だったのは、

その残虐性もさることながら、犯人が犯行前に

「重度の障害者は死んだ方がよい」という思想を公言していたこと、

そしてそれを支持するような書きこみが

ネット上に少なからず出ていたことです。

 

まず、厚労大臣から、

障害者に死を強制する優生思想は絶対に認められない、

また、障害者へのヘイトクライムを許さない

というメッセージを発していただけないでしょうか?​​​(厚労大臣)

 

松野文科大臣は

「インクルーシブ教育システム構築に向けた

特別支援教育を推進する」と所信を述べておられます。

では、普通学級で障害のある生徒が

机を並べて共に学ぶための環境整備や、

普通学級の教職員や生徒、保護者が、

障害のある生徒と支え合うことの理解を深めるための取り組み、

障害のある生徒との交流及び共同学習の現状は、

障害者への差別・偏見を解消するに十分だとお考えでしょうか?​​(文科大臣)​

 

 

私は小学生、中学生時代、

自分も障害者ですが、

同じクラスに知的障害児も発達障害児もいて、

一緒のクラスで学ぶことができました。

そうしたあたりまえに教室にいることで、

障害者ということを意識せず、

一人の人間として、

ともに生きることを学べるのではないでしょうか? 

以上2点、松野大臣の見解をお聞かせ下さい。​(文科大臣)

 

森友学園傘下の幼稚園が

障害児に関する補助金を不正申請したとして、

大阪府教育庁が2016年度分の交付を

見送ったとの報道がありましたが、

文科大臣はどのような見解をお持ちですか? ​(文科大臣)

 

この不正を同僚の石橋議員が指摘したのは3週間前の本会議です。

なぜ厚労省は未だに対応をしていないのでしょうか? 

森友学園の国有地の不当な払い下げ問題で

ますます拡大する国民の不信感を払拭するためにも、

すぐに必要な対応策を実施し、

障害児を含め全ての子ども達が安心出来る保育を

整備するべく全力で取り組むべきと考えますが、

厚労大臣の見解を伺います。​   (厚労大臣)

では「精神保健福祉法改正案」について、伺います。

まず、本来の「精神保健福祉法」の目的は、

精神障害者の人権を守り、

地域の中で安心して暮らせる環境を

整備するための法律です。

 

ですから、今回の法改正の中で、

「精神保健指定医」指定の不正取得に対する

再発防止策が盛りこまれていることや、

さらに、「市町村は精神障害者に対する医療は

精神的健康の保持増進を目的とすることを認識するとともに、

精神障害者の人権を尊重し、

地域移行の促進に十分配慮すべき」という一文を明記したことも、

前向きに評価できます。

 

しかしながら、どうしても納得できないのは、

法改正の趣旨です。

 

大臣は趣旨説明で、

「相模原市の障害者支援施設で発生した

殺傷事件を踏まえ」と述べましたが、

犯罪防止が法改正の趣旨の一部なのでしょうか?  

 

精神鑑定結果をもとに起訴した検察官は

「被告人に責任能力 あり」と判断しました。

これはつまりやまゆり園での殺傷行為は

精神障害が原因ではなく、

自由意思だったという判断です。

 

このように、この事件と精神障害に

直接の関係性がなかったという鑑定結果にもかかわらず、

なぜわざわざ精神保健福祉法に

治安維持の要素を入れるのでしょうか?

 

両者を一緒にすることは、

精神障害者に対する差別・偏見につながるだけでなく、

精神保健福祉法の本来の目的とも矛盾していると考えますが、

厚労大臣いかがでしょうか?​

(厚労大臣)

今回の法改正に犯罪対策を盛りこんだという事実について、

精神障害者当事者や精神科ソーシャルワーカーの立場や、

精神科医からも、

「措置入院者の退院後支援を強化したからといって

犯罪を予防する事は出来ないのではないか」

「むしろ、やまゆり園を理由にして、

精神保健福祉法改正に犯罪対策まで入れるのは筋違いでは」

という疑問の声が上がっています。

 

塩崎厚労大臣は、この法律に何か原因があって

相模原事件が発生したと考えているのでしょうか。

措置入院者の退院後支援があれば

今回の犯罪は防げたとお考えでしょうか? 

イエスであればその根拠をお聞かせ下さい。 ​​​(厚労大臣)

 

今回の法改正の内容をみると、

精神障害者支援地域協議会の代表者会議に

「警察」が含まれるとされています。

警察にどのような役割を期待しているのでしょうか?​​(厚労大臣)

 

検討チームの山本座長は

「監視を強めるのではなく、

精神医療の底上げを図り、

患者を孤立させないことが再発防止につながる」と述べましたが、

警察が入るとなぜ精神医療の底上げにつながるのでしょうか?​​(厚労大臣)

 

現在措置入院者の約3分の1は1か月未満で退院し、

一週間程度の方も少なくありません。

今回の法改正の中で、

「退院後支援計画は原則として入院中に作成すること」

とされていますが、

計画が作成されなければいつまでも退院できず、

入院は長期化します。

このリスクについてはどう対応するのでしょうか?​

​​(厚労大臣)

また、措置入院者は「障害者総合支援法の

相談支援等の支給決定」にそって、

本人の希望を反映したサービス等の

利用計画を作る事が出来ます。

 

今回の法改正によると、

退院後の支援計画は本人なしでも作成できるようですが、

「国連障害者権利条約」や、

「精神保健福祉法の目的」に沿って、

こうした退院後の支援計画も、

患者本人の意思で必要な医療・福祉サービスの選択が

できるように設計されなければなりません。

 

退院後の計画を作る際、

本人の意思はいつどのような形で確認され、

もし不服がある場合、

どのように申立てや変更ができるのでしょうか?​(厚労大臣)

 

そもそもこの「退院後支援」を

「措置入院者」に限定している理由は何でしょうか?​​(厚労大臣)

 

「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」

について質問します。

国連の障害者権利条約第14条では、

障害を理由とした人身の自由の剥奪の禁止が規定されており、

同委員会の「14条ガイドライン」では、

精神障害を理由とした非自発的入院は

第14条違反とされています。

 

また同条約第12条についても同条約違反であるとされていることを

塩崎厚労大臣はご存知でしょうか?​​(厚労大臣)

 

我が国の「これからの精神保健医療福祉の

あり方に関する検討会」の中で

非自発的入院についての同条約第12条と第14条の

整合性が議題に上がっていないのは何故ですか? 

​​(厚労大臣)

 

今回の法改正の附則第10条には、

5年後の見直しが規定されています。

5年経つ前に、国連障害者権利条約に関する対政府審査が来ます。

そうなる前に我が国の検討会において

同条約との整合性を議論するべきだと考えますが、

いかがでしょうか?​​​(厚労大臣)

 

2013年の前回改正の際、

附則第8条が修正により設けられ、

医療保護入院における手続きなどが検討されてきました。

これは先ほど申し上げた

権利条約に逆行することが指摘されているにも関わらず、

議論が不十分なまま、

医療保護入院及び家族同意制度が残されました。

これは重要な点なので、

引き続き検討課題とすべきではないでしょうか?​(厚労大臣)

 

前回改正以降、

市町村長同意による医療保護入院件数は半減しました。

今回の要件緩和で、

件数が再び増えることを懸念しますが、

いかがお考えでしょうか?​(厚労大臣)

 

権利擁護のしくみについて伺います。

前回改正時にも議論したことですが、

非自発的入院者には自動的に、

病院から独立した立場の「法律家や入院経験者、

ソーシャルワーカーなど」がついて相談に乗ってくれる

しくみが求められています。

 

厚労省は、障害者総合支援法の枠組みで検討しているようですが、

患者によっては自ら院外に電話すること自体が困難です。

入院したら自動的に

病院から独立した権利擁護のしくみを案内し、

利用を勧めるしくみを作るべきではないでしょうか?​​(厚労大臣)

 

現在我が国の精神科病院の

入院患者数は約30万人、

その6割以上が長期入院患者です。

さらに隔離や身体拘束を受けている患者数は

2014年時点でそれぞれ1万人を超え、

身体拘束されている患者に関しては

過去10年で2倍に増えるという異常事態になっています。

 

この中で、かねてより行き過ぎた身体拘束についての

報告が多々出ていますが、

不適切な身体拘束を防止するため

「身体拘束を可視化する検討」、や、

それについてのより丁寧な議論が必要だと思われますが、

いかがでしょうか?​​

​​(厚労大臣)

 

地域移行を進めるにあたっては、

退院後に地域の中で

本人が孤立せずに安心して生活できるよう、

地域住民と行政、福祉、医療などによる

地域包括ケアシステムが求められていますが、

退院後の生活では、家族のサポートが不可欠です。

よってこのシステムを設計する際、

本人だけでなく、患者の家族への具体的支援も必要と考えますが、

いかがでしょうか?​​

​​(厚労大臣)

 

いま我が国では精神障害者のみならず、

誰もが障害や病気など様々なハンディによって苦しむ事のない、

真の共生社会を、早急に整備することが、

政府には求められています。

 

多くの人は、障害者を「かわいそう」だと同情します。

その人自身が生きづらさを抱えていれば、

余裕のなさから距離を取り、

心のどこかで障害者を自分とは違った世界の

他人として見てしまうでしょう。

 

ですが、障害を抱えた側が望むのは、

同情されることでも、単に手を差し伸べられることでもなく、

同じ一人の人間として平等に扱われる社会なのです。

 

だからこそ、その仕組み作りのプロセスにおいて、

当事者やその家族といった弱い立場の視点が

抜け落ちることのなきよう、

同じ一当事者であるわたくしからも、

強く訴えたいとおもいます。

 

最後に、私事ですが、

今年、国会議員になって10年になります。

薬害エイズの被害者が名前も出せずに

エイズを発病して亡くなっていくのを

同じ病室で見てきました。

 

やまゆり園の事件の被害者たちが、

名前も出せずに亡くなっていくことに、

あのときと同じ悔しさと悲しさを感じずにはいられません。

 

二度と同じ過ちを繰り返さないために国会議員になり、

この間ずっと様々な薬害再発防止法案に取り組んできましたが、

実はその1つである「臨床研究法案」が、

今日、この本会議で採決されます。

 

被験者保護の観点からは、

まだまだ足りない部分もありますが、

ずっと後回しにされてきたこの法案が、

やっと採決にまでこぎつけた事は、

あの時声を上げられずに死んでいった仲間達のことを思うと、

本当に感無量です。

 

今国会でまずこの法律を成立させ、

その上で不十分な点は、

2年、3年、5年かかっても改正を重ねてゆき、

二度と薬害を起こさないしっかりした法律を

この国に確立するよう、

引き続き尽力していきたいと思います。

 

ここまでは、本当に長い道のりでした。

多くの人の協力がなければ、

ここまでくることは出来ませんでした。

 

採決に至るまでご尽力いただいたみなさまに、

この場を借りて一言感謝を申し上げ、

私の質問を終わります。

 

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