18日に開かれた参議院予算委員会において、化血研問題、TPPについて質疑に立ちました。
その概要については昨日お伝えしましたが、質問全文は以下の通りです。


○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。
 今日は、維新の党を代表して質問させていただきます。
 まず初めに、この維新の党も含め、野党による開会要求が条件を満たしていたにもかかわらず、それを無視して臨時国会を開かなかったことは許されることではありません。憲法をないがしろにするような行為は今後はやめていただきたいという私の意思を強く表明して、質問を始めさせていただきます。
 そして、二つ目の軽減税率については、これは、先ほど午前中の質疑でもこれは据置税率ではないかという話もありましたが、これについて、一兆円の試算についてや家計調査の納得のいく説明がされるまで、これはあした以降のこの質問に回させていただきたいと思います。
 その次の質問に移ります。
 この化血研の問題について、薬害エイズの原因企業である熊本県の化血研が長年血液製剤やワクチンの不正製造をしていたことに対し、厚労省は、本日から百十日間の業務停止命令を出しました。私の事務所にも、全国のお母さんから、化血研のインフルエンザワクチンを子供に打ちたくないという相談が舞い込んでいます。
 化血研及び厚労省において薬害エイズの教訓はどのように生かされたのか、それとも生かされなかったのか、厚労大臣に見解を求めます。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、川田議員から御指摘ございましたように、化血研はHIV訴訟の被告企業でございました。
 平成八年の原告団との和解に当たって、安全な医薬品の供給と薬害の再発防止に最善、最大の努力を重ねるということになったわけでありますけれども、にもかかわらず長期にわたって組織的な周到な欺罔あるいは隠蔽工作を行っていたわけでありまして、これは薬事制度の根幹を揺るがして医薬品に対する国民の信頼を失墜をさせたということで、極めて遺憾だと思っております。
 厚生労働省においても、結果として今回の不正を見抜けなかった事態を真摯に受け止め、査察方法の見直しなど再発防止に努めていかなければならないというふうに考えております。
 薬害の発生の防止というのは最も重要な任務の一つであって、引き続き、命の尊さを心に刻んで、高い倫理観を持って医薬品の安全性、有効性の確保に厚生労働省として最善の努力をしてまいりたいというふうに思います。

○川田龍平君 何よりも許せないのは、二十年前にあの薬害エイズの裁判の和解を報告したまさに同じ日、同じ会議室でこの化血研の経営陣は血液製剤の不正製造の報告を受けていたという事実です。一方で薬害エイズの事件の謝罪をしながら、その裏で別の不正を平気で行う、どうしてこのようなことができるのか。私自身は、先週、おかげさまで四十歳の誕生日を迎えましたが、私も含め全ての薬害エイズの原告たちは、この事実にショックを受けております。
 しかしながら、いかに化血研の隠蔽工作が巧妙だったとはいえ、四十年もの間それを見抜けなかった国の監督責任も同じくらい重く、歴代の総理、厚労大臣、厚生大臣は責任を取る立場にあります。これについて総理の見解をお聞かせください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回の化血研の事案は、二重帳簿を作成するなど周到かつ組織的に国等の査察を逃れる隠蔽行為などが長期にわたって行われてきたものであり、医薬品に対する国民の信頼を失墜させる決して許されないものであると考えております。
 一方で、今、川田委員から御指摘があったように、なぜ国は長年にわたって査察においてこの不正を見抜けなかったのか、当然の怒りであろうと思います。そのことを我々は重く受け止めなければならない、深く反省しなければならないと考えています。
 厚生労働省では、製薬企業に対する査察方法を抜本的に見直し、そして抜き打ち査察を取り入れることとなりました。さらに、査察の方法自体も検討し、そして二度とこのような事態が発生しないように国の指導監督に万全を期させたいと、こう考えています。

○川田龍平君 今回、厚労省は百十日間の業務停止処分を過去最長と強調していますが、実際はこの製造品目の八割に当たる二十七品目は引き続き製造、出荷を認めるという、ほとんど処分とは言えない甘い内容です。必要な薬の供給が停止されないようにという理由で不正を罰せられないのなら、別の形で処分をしなければ不正はなくならないのではないでしょうか。
 刑事告発も検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回、百十日の業務停止命令を行いましたが、本来、今回の事案は、今総理から申し上げたように、組織的、周到な欺罔そしてまた隠蔽工作ということであって、医薬品製造販売業の許可取消処分を直ちに本当は行わなければいけない、そういう事案だと思っております。
 しかし、今議員からもお話があったように、この化血研でないと作れないもの、あるいは供給量のかなりの部分をシェアを持っているということで、今直ちに製造を止められるということになれば国民の命を守ることができないということで、それらについては引き続き製造してもらいますけれども、私どもとしては、直ちに今申し上げた理由で取消処分は行わないけれども、そして一方で、業務停止処分の期間の運用上の上限であります百十日の業務停止処分を取りあえず行うということにしているわけでございます。
 それに加えて、これは単にこの化血研の業務を停止、百十日間やるだけで済む話ではなくて、むしろこれを契機に、ワクチン・血液製剤産業の日本の在り方、これについてもやはり根本から考え直すべきではないかということで、もちろん抜き打ち査察の問題を含めて、これ産業としてどうするんだということで、今、根っこから考え直そうということで、ワクチン・血液製剤産業タスクフォースというのを先日厚労省内に立ち上げたところでございまして、そういうような契機にしながら、二度とこういうことが起きないようにし、皆様方の、国民からのワクチン・血液製剤産業に対する、企業に対する信頼回復を図っていかなければならないというふうに考えているところでございます。

○川田龍平君 その一方で、薬害エイズ事件がそうであったように、今回の事件で、待ってましたとばかりに外国資本が入り込み、血液製剤やワクチンの国内自給率が下がってしまう懸念も拭えません。すると、何が起こるのか。米国などと比べて明らかに不足している薬事行政の人員と予算で、海外の製造現場に抜き打ちの立入調査を行って不正を暴き、悪事が見付かればすぐに制裁を加え、再発防止のために監督することができるとは到底思えません。
 血液や血液製剤、ワクチンなどの生物製剤、一般の医薬品などはどれも国民の命に関わるものであり、その安全性に対し国が責任を持たなければなりません。そのためには、一定量は国内で供給できる体制を維持するための国内メーカー育成、癒着や不正防止の監視体制と情報公開の整備などすべきではないでしょうか。
 厚労大臣はもはや化血研の名前で製造販売は許さないとおっしゃっていますが、問題の本質は第二、第三の化血研を出さないための国の監視機能の整備です。そして、私が申し上げたように、今後、化血研の組織見直し、再建過程の中で、経営統合や事業譲渡に外資が入ってくる可能性も十分あり、そうなれば、国内メーカー以上のチェック体制が求められるわけです。
 今回の事件以降、私のところには、血液製剤やワクチン供給について大きな不安を感じたお母さんたちから不安を訴える問合せがありました。厚労大臣、今後どうやってワクチンや血液製剤の安全を守っていくつもりなのか、全国のお母さんたちにも分かるようにお話ししていただけますか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど申し上げましたように、今回の化血研の事件は、私ども薬事行政をつかさどる者としては大変な衝撃でございました。
 ですからこそ、これを契機に、これまでどちらかというと規制を理由とする、言ってみれば護送船団方式でやってきたこのワクチン・血液製剤産業をどうやっていくのか、その規制と言いながら護送船団をやってきた中で、今お話がありましたように、抜き打ち検査もやらずに事前に通告をした上で行くという、これでは検査にならないわけであって、これはかつて金融でも同じようなことをやっていて、とっくのとうにもうこの護送船団方式からは決別をしているわけでありますが、残念ながら、この医薬品製造販売業に関してはそれをやっていなかったということが分かりました。
 したがって、今回、このワクチン・血液製剤産業タスクフォースの中で具体的な検査や監督の在り方を詰めるとともに、やはり産業として我が国の国民の命を守るためにどうすべきなのかと。しかし、世界は国際化をしていますから、世界の中でどういうふうに日本のワクチンメーカーやあるいは血液製剤メーカーも貢献することができるのかという国際的な視野も持ちながら、この産業を育成していかなければならないだろうと。
 しかし、原点は、今議員御指摘のように、我が国の国民の命をどう守るかでありますから、当然、これは我が国としての、国民の命を守る国家戦略として今回もこの化血研をどうするかということは考えていかなければならないということでありますから、今御懸念のような、外資系の企業が、かなりの部分を製造販売シェアを持っている化血研のこの製造を、取って代わるようなことを私どもとしては全く考えているわけではございません。

○川田龍平君 次に、臨床研究の適正化法案について、このディオバン事件をきっかけに私が提案した臨床研究適正化法案について、現時点での政府案の策定状況を教えてください。

○国務大臣(塩崎恭久君) この臨床研究の法案につきましては、平成二十六年十二月、おととしの十二月に臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書というのが取りまとめをなされたところであります。倫理指針の遵守を求めるだけではなくて、法規制をやっぱりやらなきゃ駄目だと、こういう結論だったわけでございます。
 一方で、規制の範囲とか枠組み、研究者自身による自主的な取組が既に行われているわけでありますけれども、こういったこととのバランスをどう取るのかということをしっかり検討しろということも同時に指摘をされていまして、現在、このような指摘も踏まえて検討を深めているところでございまして、与党ともよく相談をした上で、もちろん厚生労働委員会、衆参の委員会での御議論もしっかりと踏まえながら、法案提出に向けて精力的に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○川田龍平君 このディオバン事件は、何か所もの大学病院が不正なデータ操作によって販売数を増やした悪質な事件です。政府は口を開けば医療費が高過ぎるなどと力説をしますが、安全性に加え、不正な医療費押し上げを防止するためでもあるこの法案について、法案提出になぜこんなにも時間が掛かっているんでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 直接的には、先ほど申し上げたように、この報告書の中でしっかりバランスを考えた上で内容を詰めるべきというふうに言われた規制の範囲とか、あるいは枠組みとか、中身の問題、それから自主的な努力との関係とか、そういうことについて詰めているところでございますけれども、当然、ディオバン事件の教訓については、議員からも何度もこの問題についてはお取上げをいただいておりまして、薬の有効性を測る臨床研究でデータ改ざんが行われるというようなことは、やはりあり得ない、信頼を大きく損なうものであるわけでありますから、こういうことを踏まえて法案を作るということは当然であるわけでございます。
 データ改ざんを防止するための研究責任者の責任においてモニタリングを行うとか、大学等の倫理審査委員会に複数の外部有識者の参加を求めて中立性を確保するとか、それから、資金提供の状況などについて研究計画書に記載させるとともに、研究対象者に説明させるといったような対策を講じてきてはおりますけれども、なお、これは、欧米では既に臨床研究について法律があるわけでありますので、私どもとしては、健康・医療戦略に沿って被験者保護や研究の質の確保等の観点から臨床研究の法制化を行わなければならないということで、今中身を最終的に詰めているというところでございますので、また御議論をいろいろ賜りたいというふうに思っております。

○川田龍平君 世界で臨床研究を法制化していないのは日本だけです。安全性と医療費抑制の二点だけ見ても即実施する案件のはずですが、この法案についてはなぜか政府は及び腰です。
 総理、この事件の概要と教訓をどのように承知しているのか、簡潔にお答えいただけますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この御指摘の事案については、薬の有効性を測る治験以外の臨床研究でデータ改ざんが行われたものであり、我が国の臨床研究に対する信頼を大きく損なうこととなったわけでありまして、誠に遺憾に思います。
 この事案を踏まえ、臨床研究に関する倫理指針を見直し、例えば、データ改ざんを防止するための研究責任者の責任においてデータの確認、モニタリングを行わせること、大学等の倫理審査委員会に複数の外部有識者の参加を求め、第三者、中立性を確保することなどの対策を講じたところであります。さらには、先ほど厚労大臣から答弁をいたしましたように、現在、厚生労働省において被験者保護や研究の質の確保の観点から法制化の検討を進めているところでございます。

○川田龍平君 総理は常々、医療を成長産業にするとおっしゃっておりますが、しかしながら、諸外国では当たり前のように存在するこの臨床研究の、関する法律すらない我が国を今後どうやって世界に押し出していくおつもりでしょうか。今後医療産業を拡大していく中で、この臨床研究適正化法のような法律の重要性を総理はどのように認識しているのでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 臨床研究については法制化を含め一定のルールは必要であると、このように認識をしておりますし、また、先ほど御指摘があった、また塩崎大臣からも答弁いたしましたように、法制化の事例がある、この欧米の事例も参考にしていく必要があるんだろうと、こう思います。
 現在、与党の御意見も伺いながら、厚生労働省として検討が進められております。検討の結果、法案がまとまれば、国会において御審議をお願いしたいと考えております。

○川田龍平君 是非、これ国会に、今国会に出していただきたいと思います。韓国でもアフリカ諸国でもこの法律はあります。欧米だけではありません。本当に日本が立ち遅れているんです。
 昨年の国会でも厚労大臣は、引き続き与党とも相談しながら検討を進めていきたいと私に答弁をしています。与党での検討は昨年の五月で止まっているじゃないですか。もし臨床研究適正化法をこれ以上もたもたと引き延ばすのであれば、代わりに、私が昨年の四月に議員立法で提出をした臨床研究法制化のプログラム法案の方をまずこの国会で先に審議をしていただきたいと思います。
 国民の命と健康を守るための法案成立をこれ以上後回しにすることはできません。政府がやらないというのであれば、是非この良識の府参議院から議員立法でこれを実現させるしかありません。どうか皆さん、各会派の皆さん、お力をお貸しください。御賛同をどうかよろしくお願いいたします。
 次に、TPPについて伺います。(資料提示)
 先般、政府はようやくTPP協定全文の暫定仮訳を公表しました。厚労大臣は、TPPの医療分野に関連する全文は読んだのでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今お話がありました和文になった分厚いやつ、私も目を通したところでございます。

○川田龍平君 この協定の附属書については、いまだ暫定仮訳が公表されていません。今国会の承認を目指すということですが、そうであれば、全国会議員が附属書も含めて全て中身を読むことができ、総精査しなければなりません。附属書の翻訳はいつ公表されるんでしょうか。

○国務大臣(甘利明君) 附属書の部分はまだリーガルスクラブが続いております。本体も部分的に残っているのがあるんですが、本体は公開しても構わぬだろうということで、日本が一番最初にこの間公開した部分はやりました。附属書部分、これは六千ページぐらいあると思うんですけれども、これはもう少し掛かると思います。ただ、署名がされるときまでには全てリーガルスクラブも終わって公表できるんじゃないかと思います。

○川田龍平君 これ、一日も早く公表していただきたいと思います。全文については、英文では十一月の五日に昨年公表されています。それについての訳がようやくこの一月七日に日本政府が出したということです。
 私は、日本政府がTPP参加を言い出した頃から、この条約が日本の医療に与える影響を懸念してきました。現在は維新の党のTPP調査会長として民主党と一緒にこのTPP合同調査会を連日開催して、中身についての議論を重ねています。
 医療分野については、既に全文を英語で精査をしたWHOや国境なき医師団などの国際機関、また各国の医療関連団体などから、TPPによって薬価が上がり、命に関わる医薬品へのアクセスが制限されることへの強い懸念が表明されています。ニュージーランドの公衆衛生学会も、TPP後に薬価が高騰するという試算を出しています。日本の医療費全体を見ると、最も多く占めているのは薬剤費であり、年々上がっています。政府は我が国に医療費が高い高いと二言目には医療費抑制を口にしますが、TPPで薬価が高騰したらどうするおつもりでしょうか。厚生労働大臣、これらの各国からの懸念も含め、見解をお聞かせいただけますでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) このTPP協定には、外国企業の薬価決定プロセスへの介入といった薬価収載手続の変更とかあるいは混合診療の解禁といった我が国の公的医療保険制度の在り方そのものについて変更を求める内容というのは含まれていないということでありますので、今議員御懸念をお示しになられましたような事態は起きないということでありまして、いずれにしても、今後とも日本が誇るこの皆保険制度というのは守っていかなければならないわけでありまして、安全、安心な医療が国民皆保険の下で行われていくということを私たちは大切にしてまいりたいというふうに考えているところでございますので、TPPもそれに反することはあり得ないということだと思います。

○川田龍平君 ただいまの厚労大臣も政府も総理も、国民皆保険制度は堅持すると主張いたしますが、たとえ形だけ残しても中身が形骸化してしまえば元も子もありません。
 このパネルを御覧いただきたいんですが、TPPで薬価が高騰したときにもし国の医療費を抑えながら制度を維持するには、患者の自己負担を増やすか、混合診療を拡大するか、医療機関への診療報酬を下げるしかありません。このどのやり方を選んでも、保険証一枚でいつでもどこでも誰でも一定レベル以上の医療が受けられるという国民皆保険制度の根幹は崩れますよね。形だけ残せば中身が空洞化してもいいということでしょうか。総理の見解をお聞かせいただけますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 薬価が上がるのではないかということは、つまり、画期的新薬において後発医薬品が出るまでの期間、守られている期間がこれ長くなっていけば、それは後発医薬品が出にくいという状況がつくられますので薬価が上がっていくのではないかという懸念が実際に当たっていくということになるわけでありますが、TPP協定は生物製剤のデータが八年間保護されることなどを規定しているわけでございます。この規定は、日本の現行制度、日本も八年でございますので範囲内であり、現状よりジェネリック医薬品の承認を遅らせることはないと考えております。ほかの加盟国のことはこれは分かりませんが、日本においては八年が八年そのままということでございまして、そして、TPP協定は医薬品等の薬価を定める手続の透明性を求めておりますが、全ての日本の現行制度の範囲内でございますので、今までの薬価を決める仕組みは変わらないということでございます。
 このように、TPP協定における医薬品関係の規定は全て日本の現行制度の範囲内であり、TPP協定によって薬価が高騰することはないと、このように認識をしております。

○川田龍平君 そうですか。マスコミはいまだにこのTPPが農業と関税の問題だけであるかのように報道していますが、既に多くの国民がこのTPPに入っても今と同じように保険証一枚で医療が受けられるのかとの不安を感じ始めています。私のような難病患者だけではなく、がんや心臓病など重篤な疾患と向き合っている家族も含め、あらゆる人がこの医療については当事者だからです。
 もし、総理が今おっしゃったように、国民皆保険は空洞化しない、将来にわたって必要な医療は公的保険でカバーすると、そこまで力説するのであれば、医療費が六十一兆円に達すると言われている二〇二五年度までにおいて治療に必要な医療は全て保険収載されると理解してよろしいのでしょうか。
 しかも、この六十一兆円という数字は民主党政権時代の二〇一二年に推計されたもので、安倍政権になってからはまだ一度も将来推計の再計算を行っていません。TPPで薬価は絶対に上がらない、皆保険の中身も変わらない、医療費は無駄を切り捨てれば抑えられるというならば、今の政権で今後の医療費の伸びを、それに対する政府の対応策を参議院選挙前に国民に示すことをここで約束していただけますでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) まず第一に、TPPが何か外国に政策決定権や拒否権を与えるというようなことはあり得ないわけで、私どもは国内法制でこの医療制度を決めているわけでございます。
 今、医療費の将来推計について参議院選前に提示すべきというお話ではありますけれども、この医療費の見通しというのは適宜必要に応じて今まで作ってまいりました。
 今、御案内のように、各都道府県でこの医療構想を二〇二五に向けて作り直していただいているわけで、これらがどういうふうになるか、つまり医療供給体制がどうなるかということがこの医療費の見通しなどに大きな影響を与えてきますので、私どもとしては、こういったこと、あるいは国民健康保険が都道府県単位になるとか、様々な今変化がございますし、また逆に重症化予防などの横展開を特定の保険者などがやっているいい例について広げていこうということもやっていますから、これはプラスマイナスいろいろな形で医療費というのは変化し得るわけでございます。
 したがって、それらについて絶えず検討を加えて国民の皆様方にもお訴えはするんですが、参議院選挙前に何か出せということを今ここでお約束するようなことはなかなか難しいかなというふうに思います。

○川田龍平君 国内法制で守る、国民皆保険は堅持すると、総理も含めて政府は度々私にそう答弁いたしますが、国民皆保険の実質的な空洞化につながる非関税障壁の譲歩、薬価決定プロセスへの外資系企業の介入、ジェネリック医薬品の市場参入における新たな障壁などにつながるような文言が附属書や日米間交換文書等に書いてあることが各国の医療関係者を始め様々な方面から指摘をされています。
 医療の章だけを読んで、制度変更するとは書いていないから大丈夫だとは言えません。医療費の中には、先ほど申し上げました薬価だけでなく、診療費や医療機器費用も含まれます。つまり、医療以外の章、例えば知的財産権の強化なども結果的に薬価や診療費を引き上げるということです。透明性向上の章を読めば、我が国の価格決定プロセスへの製薬会社の介入が今より強化されることが分かります。
 だからこそ、国民の命に関わる医療には、大きく関わるTPP条約の批准については、採決の一票を持つ私も含めた国会議員が全文附属書、日米間交換文書の翻訳を読み、何らかの形で精査する時間が必要です。言い換えれば、全文を隅々まで精査しないうちは批准の採決自体すべきではないということです。繰り返すようですが、一刻も早く附属書の訳出をお願いします。
 どれだけ企業が潤い経済が成長しようとも、国民の命と健康が守り切れなくなるのであれば本末転倒です。経済成長は国民が健やかに安心して暮らせるという前提があってこそのものであり、こうした優先順位を決して見誤らずに全力を尽くすのが国会議員の仕事であると私は考えています。今、アメリカを含めた各参加国の国内では、まさにこの優先順位についての議論が紛糾している状態です。我が国が一体何を最優先するのか、TPP審議とはまさにそのことが問われているのではないでしょうか。それをいま一度主張させていただいて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。