問題が山積する中、8日午後参議院厚生労働委員会で派遣法改正案が与党の賛成により可決されてしまいました。
 午前に開かれた委員会での私の質疑と、採決前の派遣法改正案反対討論の全文は以下の通りです。


  


○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。
 今日、読売新聞がこの派遣法については今日にも採決ということで、今日メディアも外にも中にもいますし、後ろの傍聴席、本当に立ち見の傍聴席が、今日、皆さんも注目されているわけですけれども、今日の朝の理事会では採決ということの話は出なかったわけですが、大臣、これ今日採決するんですかね。

○国務大臣(塩崎恭久君) これは院がお決めになることでございますので、丸川委員長を始め先生方にお任せをしているところでございます。

○川田龍平君 私は、これで採決ではないと思うんですね。当然、まだこれは、この法案の中身が、問題が解決されているわけではない、そして本当に問題の多い法案だと思っております。
 質問に入りますが、長年特定労働者派遣事業者を営まれている中小の事業主の中には、派遣労働者を正社員として無期雇用して、教育研修や福利厚生などをしっかりしてきた会社も少なからずあると聞いています。許可制の一律導入に当たっては、健全な特定労働者派遣事業の実態をもっとしっかりと調査、把握して、そこで働いてきた派遣労働者がよもや現状より待遇が悪化することがないように、目配りをしながら慎重に行うべきと考えますが、大臣の所見を伺います。

○国務大臣(塩崎恭久君) 優良な特定派遣の事業者につきましては、許可制度への円滑な移行ができるということが望ましいというふうに思います。そのため、特定労働者派遣事業を営む現在の中小事業主に向けましては、企業経営に精通をいたしました方によるセミナーなどによって移行のための情報提供等を行うとともに、事業主の個別事業に応じた相談というものも実施をしなければならないというふうに考えております。
 このような支援制度があることについては、厚生労働省のホームページに掲載することなどによってこれを広く徹底、周知をして、優良な特定労働者派遣事業者を支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○川田龍平君 この法案の三十条の二についてですが、「派遣就業に必要な」は削除すべきと私は考えます。これは、教育訓練についてですけれども、正社員になるために必要なということを書くということを要求しているわけではなくて、削除しても派遣会社に求める義務として何ら誤解は生じないと考えますが、この三十条の二について、この「派遣就業に必要な」というこの文言は削除すべきではないかと考えますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) この条文につきましては、これまで衆議院を含めて数々の御指摘を頂戴をしてきているわけでございますけれども、正社員となる可能性を高めるためには、現在の派遣の仕事をするに当たって必要な能力及び知識のレベルアップをまず図ることが一番有効であると考えられると思っておりまして、今回の改正案において初めて義務付けることとしておりますキャリアアップ制度については、派遣就業に必要な技能及び知識が習得できる教育訓練というふうに規定をしているわけでございます。
 派遣元に義務付ける教育訓練は「派遣就業に必要な」と規定しているものの、その内容は、必ずしも現在従事をしている業務と密接に関連していなければならないということでは決してないわけでございまして、今回の改正案におきましては、事業の許可基準に新たにキャリア形成支援制度を有することを追加することといたしまして、計画的な教育訓練についてはキャリアアップに資するものとなることを求めることとしております。
 今般初めて義務付けられた教育訓練が派遣で働く方の着実なキャリアアップにつながるように行政としても指導をしてまいりたいと思っておりますし、また、先ほど来申し上げているように、やはりそれぞれ働く方々が職務における能力を高めることが処遇改善あるいは正社員化につながる一番の近道ではないかというふうに考えますので、まずは、今のこの派遣就業に必要な技能及び知識が習得できる教育訓練をやっていただくということを期待をしているわけでございます。

○川田龍平君 そうであれば、「派遣就業に必要な」という言葉、これ要らないと思うんですね。法案の中身として、正社員になりたい人がなるための法律だということを何度もおっしゃっているわけですから、この「派遣就業に必要な」という言葉があることによって、これ、派遣就業のため、派遣社員を続けるということをこれはある意味言っているようなことではないんですか。だからここは削っていいと思うんですけれども、大臣、これはいかがお考えでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) これも、先ほど申し上げたように、いろいろな議論がこれまでもございました。
 しかし、今申し上げたように、やはり今働いているところで評価を上げるということがそこでの処遇改善にもつながりますし、その次のステップアップにもつながってくるということを考えてみると、まずは、基本は派遣就業に必要な技能及び知識が習得できる教育訓練をまず受けていくことで可能性を高めるということであり、しかし、そうはいいながら、必ずしも今やっていることの業務と直接つながっていない研修というのもあり得るということも申し上げているわけでございますので、そこは基本的な考え方としてそう申し上げているので、先生のおっしゃりたいお気持ちもよく理解はできるところでありますが、私どもの御提起している法案の中では、まずは今やっている仕事で力を付ける、評価を受けるということが大事ではないかというふうに申し上げているわけであります。

○川田龍平君 是非これは、やっぱりこの「派遣就業に必要な」という言葉は削除すべきというふうに思っております。
 次に、この改正案の附則第九条の解釈について伺います。
 これ、八月二十八日の当委員会の理事懇談会において厚労省から提出された説明ペーパーによると、附則の第九条の「なお従前の例による。」による対象は、条文に明示されている現行法第四十条の二のほか、その関連規定である法第四十条の四などとのことです。昨日、この内閣法制局から届いた書面でも、昨日じゃなくて前に届いた書面でも趣旨は同様です。
 これ、附則の第九条の「なお従前の例による。」の対象となる現行法第四十条の四等のこの等、などとは具体的にどの条文を指すのでしょうか。

○政府参考人(坂口卓君) お答えいたします。
 今委員御指摘の、私どもの八月二十八日付けのペーパーの方でも記載しておりますとおり、今回、期間制限につきましては改正案の附則九条によりまして経過措置を設けるということにしておる中で、同条において、施行日前に締結された派遣契約に基づいて行われる労働者派遣についてはなお従前の例によるということとしております。
 このなお従前の例によるということによって適用があるのは、現行法のこの例示として挙げさせていただいている第四十条の四のほかには、経過措置の附則九条に係ります現行法の四十条の二の規定と一体となって施行されておるというもので現に効力を有する規定ということでございますので、例えば派遣元が期間制限を超えて派遣するというような労働者派遣の期間に係ります第三十五条の二でありましたり、あるいは勧告、公表の規定であります第四十九条の二の規定などが該当するということでございます。

○川田龍平君 ですから、などとは何かと聞いているところに、などという言葉を答えに入れられたらまた聞かざるを得ないわけで、具体的にどの条文、またどの政省令を指すのか、そのなどというのを明確に答えてください。などという答えが入っていたら、これ、などの答えになっていないじゃないですか。

○政府参考人(坂口卓君) ちょっとほかにも幾つか規定がございますのでと思いまして省略させていただきましたが、ほかには、今、三十五条の二、四十九条の二ということで申し上げましたが、ほかには、就業条件等の明示に係ります第三十四条、それから派遣先への通知に係ります三十五条の第一項、それから派遣元責任者に係る部分、これは一定の部分に限りますけれども、三十六条、それから派遣元の管理台帳に係ります三十七条の第一項。それから、現行法でございますので幾つかの雇入れに係る義務がございます、努力義務が。ここでも議論に取り上げられている優先雇用の努力義務という第四十条の三、それからいわゆる二十六業務に係ります労働契約の申込義務である第四十条の五、それから派遣先に係りますけれども、派遣先の責任者についての第四十一条、派遣先の管理台帳に係ります第四十二条ということになります。

  ○川田龍平君 これ、政省令は入らないんでしょうか。

○政府参考人(坂口卓君) 具体的には、今後、政省令の関係も入るということになります。

○川田龍平君 そうすると、政省令の、省令や通達などによって具体的に明示する、これ予定があるんでしょうか。

○政府参考人(坂口卓君) 今申し上げましたように多岐にわたりますので、どのような適用関係になるかなどについて明確にする手法については検討してまいりたいと考えます。

○川田龍平君 この厚労省の説明ペーパーによれば、なお従前の例によるとは、法律のほか、施行命令などを含め、問題とされている事項についての法律関係は包括的に施行前の法令の規定を適用することとされています。これでは、具体的にどの条文が適用されて、また適用されないということが分からない場合があるのではないかと思いますが、部長、いかがでしょうか。

○政府参考人(坂口卓君) 今申し上げましたように、包括的にということではございますけれども、今申し上げましたような法律の条文あるいは省令等につきましては、今申し上げましたように、委員の御指摘がありましたように、どのような適用関係になるかということについて明確なる手法をしっかり検討してまいりたいと思います。

○川田龍平君 今回のケースのように、この経過措置の対象が期間制限という改正案の根幹に関わるものであり、その解釈が関係者にとって非常に大きな影響を与えることもあります。
 経過措置規定の「なお従前の例による。」については、その効果が及ぶ範囲が明確になるように、この法律ないし省令、通達などによって、「なお従前の例による。」によって適用されることとなる条文等を明示する必要があると考えますが、大臣、見解いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 基本的にはおっしゃるとおりで、なお従前には未施行の規定が含まれないわけでありますけれども、この改正法附則の規定のみをもって具体的に旧法のどの規定が適用されるのかが分かりにくいということが御指摘をいただいておるわけでございますので、この改正法施行後に混乱等が生じないように、施行通知、通達、あるいは厚生労働省ホームページに掲載するなどにおいて、そういったところで適用関係を明確にして、適切な対応を取って、混乱が起きないようにしていきたいというふうに考えます。

○川田龍平君 ちょっと時間がもう迫っていますが、先日来、専門二十六業務の関連した質問をしてきました。専門性の高い業務であれば常用代替にならないというロジックを、論拠について伺いたいと思います。
 このことについて事前に問い合わせたところ、担当部署から回答が書面で来ました。常用代替の防止の趣旨は、我が国のいわゆる長期雇用慣行との調和を図る観点から、派遣先に常用雇用されるいわゆる正社員について、派遣労働者が代替することを防止するものである。また、現行制度では、この業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務は、前述の雇用慣行を損なわず、常用代替を促さないと考えられることから、これらの該当する業務について期間制限の例外としていたところであるという答えがあったんですが、これ、全く答えになっていません。
 私は、この回答は三重の意味で問題があると思っています。まず、なぜ常用代替を促さないかという回答になっていませんし、そこを答えずに、なぜ期間制限の対象外になっているかにすり替えて回答してきています。そして、この常用代替の対象を派遣先に既に常用雇用されている正社員のみに限っています。テレビ番組制作の現場でいえば、派遣だけでなく、外部プロかフリーランスが請負、一括委託といった様々な労働形態が複雑に入り組んでいるんです。そういう方々の常用代替になっているとは言えないのでしょうか。さらには、その常用代替を促さないはずの専門業務での派遣が、なぜ今回、期間制限の対象となるかの説明になっていません。
 以上三点について、時間が来ていますけれども、明快な、簡潔な答弁をお願いします。

○政府参考人(坂口卓君) 三点いただきましたので簡潔にお答えしたいと思いますが、まず一点目につきましては、私どもの方ですり替えてということではなかったんですけれども、ロジックとしましては、私ども、常用代替の趣旨ということに鑑みてということでお答えしたつもりでございますけれども、もう少し委員の御指摘等を踏まえれば、専門的な知識とか技術、経験を有するというような業務であれば、外部より来ていただくということが効果的であるということなど、正社員が企業内のキャリア形成の一環として経験する業務ということとは別個のものと考えられるので、そういった意味では、こういった専門性の高い業務であれば長期雇用慣行を阻害することはないという趣旨も含めてということでございましたが、すり替えの意思はございませんでしたけれども、やや不明確であったことはおわびを申し上げます。
 それから、二点目につきましては、テレビ番組の制作の現場というのはいろんな方がおられるということかと思っております。そういった意味で、今委員の方からありましたような、請負やフリーランスで働く方もおられると思いますけれども、こういった方につきましては派遣先からの指揮命令がないので、ですから、その派遣労働者との関係では異なるので、基本的に競合するというような方ではないのではないかと考えております。
 それから、最後、専門業務が期間制限のなぜ対象となるのかということでございますけれども、これはこれまでも大臣等からも御答弁させていただいておりますとおり、現行の期間制限ということがやはり非常に分かりにくいということ、これは、労働者、派遣元、派遣先にとっても分かりにくいということで、専門性も変化している中で、分かりやすい仕組みにしようということでございますので、今回については、業務についての考え方ということを廃止して、専門業務であるかどうかにかかわらず、今回、新たな期間制限を設けるということにしたということでございます。

○川田龍平君 やっぱりこの法案は、当事者の意見を聞いて十分に練られた法案とは思えませんので、十分な審議をしっかり行っていただきたいということを申し上げて、最後、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

 

ここからは午後に行われた討論になります。
私は派遣法改正案に反対、同一労働同一賃金法案に賛成の立場で討論を行いました。

○川田龍平君 私は、維新の党を代表して、労働者派遣法改正案の修正案及び原案に反対の立場から、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、いわゆる同一労働同一賃金法案に賛成の立場から討論を行います。
 衆議院における修正内容は、我が党にとって完全に満足のいく内容ではありませんが、派遣労働者の待遇について均等の文言が初めて入ることもあり、改革を一歩でも進めるために、同一労働同一賃金法案については賛成するものです。
 しかしながら、この派遣労働者改正案の本来の趣旨である常用代替の防止とならないばかりか、派遣労働の濫用防止につながりかねないなど、本改正案が抱える問題点や矛盾がこれまでの審議の中で次々と明らかになりました。
 中でも、業務単位の期間制限を撤廃する期間制限の見直しについては、個人単位の期間制限によって、二十六業務の派遣労働者はその業務の専門性などの実態を考慮されることなく一律に三年で職場から去らなければいけないこととなります。このことは、今現在、二十六業務で比較的高賃金で長期間安定して働いている方々の雇用を不安定にさせるだけでなく、例えば添乗員などの独自の労働市場を形成しており、派遣法制定当時から期間制限は必要ないとされてきた業界にも大きな影響を生じさせる極めて乱暴かつ強引な変更です。
 二十六業務一つ一つの多様な実態把握が不十分なまま、派遣労働者の声を聞いていないなど、これまでの施策の政策効果、検証が不十分です。現場で働く方々に対して、改正の趣旨について、これまでの政府の説明で理解を得ることができるとは到底思えません。
 また、均等待遇や同一労働同一賃金といった派遣労働者の待遇改善が今回の改正によって全く進まないことも、改正案の大きな問題点です。改正案に対しては、派遣社員七割近く反対という調査結果も出ました。改正の内容が現場のニーズとそごを来していることは明らかです。
 今回の改正案は廃案とし、現場の実態を踏まえた労働者派遣制度の改正について、再度検討することが必要です。
 なお、自由民主党及び公明党提出の修正案についても、議論で明らかとなった改正案の問題点や矛盾点を解消するものではなく、賛成できません。とりわけ、修正された施行までの日数が極めて短いことは、周知徹底が間に合わずに、現場の混乱が予想されます。施行日以外の修正についても、明確な修正ではなく、分かりにくく、提示も、午前中の審議の前の理事会でも示されず、議論もせずに衆議院に送ることはできません。
 今日の法案の終局、採決に当たっては、事前に申入れもなく、委員会運営に筆頭理事間の調整がうまくいかなかったことは両筆頭理事に猛省を促します。
 以上で、労働者派遣法の改正案に反対の討論を終わります。ありがとうございました。