○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。

 まず、国保組合への国庫補助の見直しについて伺います。

 今回の法案では、国民健康保険組合への国庫補助を、負担能力に応じた負担とする観点から、二〇一六年度から五年間掛けて段階的に見直し、また所得水準に応じて一三から三二%の定率補助に見直すこととされています。この見直しは積立金にも影響を及ぼすことが予想されますが、組合財政の安定のため、そして加入者の急激な負担増を回避するためにも、積立金の積み増しについて何らかの激変緩和の措置を検討すべきではないでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 国保組合につきましては、医療費の変動やあるいは解散をする場合などに備えまして、一定の準備金、特別積立金というものを確保していただいているところでございます。ただ、今回の国庫補助率が見直される対象になる組合の中には、こうした準備金や特別積立金の必要額もそれに伴って増加をしてしまうというふうな事情のところが出てくるというところが見込まれておりますので、この準備金の今の規模も、例えば健保組合と見てどうなのかというふうな御意見もございます、少し大きくなっておりますので。

 こういうような点につきまして、組合の皆様の御意見も伺いながら、適切な対応を検討させていただきたいと考えております。

 

○川田龍平君 次に、患者申出療養制度について伺います。

 医師と患者の間の情報の非対称性があることは、大臣も総理もこれはお認めいただいているところですが、本来、医師や製薬会社が主導すべき研究を患者が希望したと責任転嫁することをいかに防ぐのか、疑問です。

 一つの実例として、抗リウマチ薬のトファシチニブ、製品名がゼルヤンツという、この市販後全例調査において六例の死亡が確認され、その全てが日本リウマチ学会の定めた使用ガイドラインに適合しない投与が行われていたことが分かりました。

 千四百七例のうち、投与対象など、ガイドラインに適合していなかったのは三百六十八例、二六%、非適合にもかかわらず投与した理由として、何と一割に当たる三十七例で患者の処方意向が大きいことが挙げられているのです。

 このゼルヤンツの薬価は、一錠が二千五百三十九円、一日二錠飲みますので一日に五千七十八円、一か月で十五万二千三百四十円と、三割負担で一か月に四万五千七百二円も掛かります。患者の希望があるからという理由を付けて高額なリウマチ薬を不適切に処方しているこの実態について、厚労省はどのように考えていますでしょうか。

 

○政府参考人(神田裕二君) 御指摘のトファシチニブにつきましては、新規作用機序のリウマチ治療薬ということで平成二十五年三月に承認されたものでございます。免疫抑制作用を示す特徴があることから重篤な感染症等が懸念されるため、既存治療で効果不十分な関節リウマチを効能として投与することとされております。

 このため、承認に当たりまして、製造販売業者に対しまして、重篤な感染症や悪性腫瘍の発現状況を既存のリウマチ薬と比較検討することを目的として、製造販売後に全例を対象とした調査を行うことを求めているところでございます。製造販売業者におきましては、定期的にこれを集計いたしまして、適正使用情報として取りまとめて医療機関に提供しているところでございます。その中で、副作用状況のほかに、メトトレキサートを三か月以上継続して投与してもコントロール不良の関節リウマチ患者を対象とするというリウマチ学会が作成しました使用ガイドラインへの適合、非適合の状況を取りまとめて、その非適合例というものも示しているところでございます。

 これを見ますと、メトトレキサートが使用できない理由としては副作用等が掲げられておって、合理的なものとなっていると思われますけれども、一方で、この薬を使用した理由については、他剤無効などのほかに、御指摘の患者の処方意向が大きいということが記載されているところでございます。

 この調査では、この薬を使用した主な理由だけが記載されているというふうに考えられますが、患者の病状ですとか副作用の発現状況など複合的な状況というのが必ずしも明確ではございませんので、患者の処方意向が、医学的判断を曲げてまで患者の言うとおりに処方しているとまでは考えられませんので、一概にこれが不適切とまでは断定できないというふうに考えております。

 ただ、製造販売業者は、この適正使用状況の中でもガイドラインに不適合な事例では重篤な副作用の発現が多くなっていることについて医療機関に対して注意喚起を行っているところでございます。

 厚生労働省としては、最終的にこの調査結果が取りまとめられた段階で安全性の評価を行って、必要に応じて適切な安全対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

 

○川田龍平君 このような医療現場の実態に即せば、本来、医師や製薬会社が主導すべき研究を患者が希望したということで責任転嫁をして、この患者申出療養として実施することが起こり得ると考えますが、医政局、いかがでしょうか。

 

○政府参考人(二川一男君) 患者申出療養のお尋ねかと思いますが、これにつきましては今回の法案で盛り込まれているところでございまして、こういった点、患者の意向はもちろん大事なことでございますけれども、医師の方におきましても十分な説明をしながら行っていく必要があるものというふうに考えているところでございます。

 

○川田龍平君 患者からの申出であることを示す書類の中に、臨床研究中核病院がエビデンスを用いて患者に対して十分説明し、患者が有効性、安全性について理解、納得した上で申出しているものであることの確認を含むとなっていますが、このプロセスに製薬会社から不適切な関与がないことを担保するために、どのような仕組みを考えているのでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 御指摘のように、患者さんが治療内容を納得、理解をして申出を行っていただくということが必要でございますので、申請に当たりましては、まず患者さんからの申出によることを明らかにする書類といたしまして、例えば、まず患者さんの署名入りの申請書、それから患者さんと臨床研究中核病院の面談の記録、さらにインフォームド・コンセントの書類などを添付していただくというようなことを考えておりまして、御指摘のような不正な働きかけというようなことが生じないように防止策を考えてまいりたいと考えております。

 

○川田龍平君 現在、厚労省が作成中の、仮称ですけれども、医薬品等を用いた臨床研究に係る被験者の保護及び医薬品等の広告の適正化に関する法律案においては、製薬企業から医療機関への資金提供のうち、共同研究費や委託研究費のみの開示を義務化する方向との報道がありましたが、医師個人への講師謝金や原稿料、コンサルタント料も既に日本製薬工業協会が自主的に開示しており、これらについても情報開示を義務化すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 

○政府参考人(二川一男君) 現在、臨床研究の制度につきましての法制化の検討を進めているところでございますけれども、昨年十二月にまとめられました臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書におきましては、製薬企業等が提供する資金等の開示につきまして業界が自主的に取組を進めているところであるが、行政は製薬企業等の取組状況も踏まえ、法的措置も視野に対応を検討すべきとされているところでございます。

 こういった報告書も踏まえまして、現在、資金提供の情報の開示の範囲も含め、これ、様々な御意見があるところでございますので、被験者の保護と臨床研究の適正な実施の確保の観点から、透明性の確保につきまして引き続き与党とも相談しながら法的措置の在り方を含めて検討を進めていきたいと考えているところでございます。

 

○川田龍平君 これは、アメリカではサンシャイン法という法律が既に施行されているのはよく知られているところですが、フランスでも二〇一二年の八月から医薬品行政改革法というフランス版サンシャイン法も施行されたと聞いています。

 その施行状況についてはどのように把握されているでしょうか。

 

○政府参考人(二川一男君) 御指摘のフランスの医薬品行政改革法でございますけれども、これ、医薬品、医療機器、化粧品等の製造販売を行う企業に対しまして、医師等への資金提供について開示を求めるものと、こうなっておるものと承知しております。現時点におきましては、二〇一二年から二〇一四年分までが開示されているというふうに承知をしてございます。

 開示内容でございますが、まず、寄附、金銭、旅費、飲食、物品提供といった利益提供につきましては十ユーロ以上のものについてその金額と氏名等を開示するとなっております。また、業務委託、すなわち対価性のあるものということでございますが、そういうものにつきましては、日時、目的、議題、業務内容といった契約内容のみを開示をし、金額は法律の対象外になっているというふうに承知をしているところでございます。

 

○川田龍平君 是非そうした諸外国の事例も把握しつつ、是非日本も国際的に遜色のない法制化をお願いしたいと思います。

 次に、患者申出療養と臨床研究の関係について伺います。

 先進医療Bは、臨床研究を保険診療との組合せで行う枠組みと理解していますが、患者申出療養も先進医療B同様、全て指針に基づく臨床研究と理解してよろしいでしょうか。

 

○国務大臣(塩崎恭久君) 患者申出療養では、実施計画の作成等を医療機関に求めることとしておりまして、基本的に臨床研究として実施をされるものでございます。

 

○川田龍平君 この三月二十六日の厚労委員会でも、塩崎大臣も、また先日の参議院本会議での安倍総理も、患者申出療養は保険収載に向け実施計画の作成等を求めることとしていますと答弁されていますが、患者申出療養には臨床研究計画、このプロトコルの策定を義務付けるのでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 患者申出療養では、保険収載に向け実施計画の作成等を医療機関に求めることとしております。実施計画には、臨床研究計画、いわゆるプロトコルも含まれているものでございます。

 

○川田龍平君 義務付けるということですね。

 それで、国立がん研究センターを視察した際に、先進医療評価室長の藤原康弘先生は、患者の申出があってからでは間に合わないので、事前にプロトコルを準備しておかねば間に合わないと言っていましたが、患者より先に、医者の方が先に動いている、結局実態はそういうことになるということでよろしいでしょうか。通告なしです。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 私どもが想定をしておりますのは、医者の方が先に計画を作って、研究を患者申出という形でやっていただくのは適正でないと思っております。

 ただ、先ほど来も御議論ございますけれども、患者さんは、じゃ、例えば現在の未承認の抗がん剤何があるかということは知らないという方がかなりおられますので、そういう情報につきましては大学であるとか、あるいはナショナルセンターのようなところできちんと整理をして御利用いただけるような形を工夫すべきでないかというふうに考えております。

 

○川田龍平君 私はよく分かりませんでしたけれども。

 もう一度確認ですが、患者申出療養は臨床研究として実施され、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の対象となり、また、現在、厚労省が作成中の臨床研究法案の対象ともなるということでよろしいですか。

 

○政府参考人(二川一男君) 現在、臨床研究の法制化につきまして検討を行っているところでございます。

 これにつきましては、臨床研究として実施するものにつきましては、現在、指針によって手続とかモニタリングとか、そういったようなことが指針で示しておるわけでございますけれども、そういった今まで指針で行っているプロセスを法定化をするというふうなことを基本に検討を進めているところでございまして、臨床研究として行うものにつきましては法律の定める手続にのっとって行っていただくということを想定して検討しているところでございます。

 

○川田龍平君 この患者申出療養も入るということでよろしいですね。

 実は、金沢大学附属病院で先進医療Bとして行われていた骨軟部腫瘍へのカフェイン併用化学療法は、倫理審査をしていなかったことや、臨床試験の基準に該当しない患者にも投与をしていたことが発覚して、死亡事故による書類送検まで行われ、結局、先進医療Bから削除されました。この療法が、今後、患者申出療養として復活する可能性はあるのでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 先生御指摘の化学療法に伴うカフェイン併用療法につきましては、悪性骨腫瘍等の患者さんに対しまして先進医療として実施された際に、御指摘のように、適格基準を満たさない患者についても行われたということで、不適切な点がございました。そういう観点から、平成二十六年十月に先進医療から削除されております。

 将来、患者申出療養として実施が認められる可能性があるかどうかということについては、現時点でこれは一概に言えませんけれども、しかし、前回の研究計画というものが削除ということに至っておりますので、そういう経過というものを十分踏まえて考えていく必要がございますし、当然、一定の安全性、有効性が確認できなければ、これは実施できないというふうに考えているところでございます。

 

○川田龍平君 この金沢大学のカフェイン併用化学療法は、規格基準外の患者、例えば悪性骨軟部腫瘍に対して未治療であることが被験者の基準ですが、治療中の患者に実施したり、また、実施計画に関する症例登録期間を終了した後に受け入れた患者を症例登録していないなど、実施計画の枠からはみ出る逸脱した患者の方が正規の計画上の症例登録をした患者よりも多くなっていたことが問題となりました。

 この患者申出療養において適格基準外にも実施するならば、その都度プロトコルを変更せざるを得ず、ずさんなものとなり、検証に頼る研究データとはならないのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) この患者申出療養の実施に当たって臨床研究計画、プロトコルを策定する際に、現在の先進医療よりも広く対象者を設定することや、あるいは、必要がある際には臨床研究計画を、これを変更するということなどが考えられるわけでございます。その際に、この計画に基づく適格基準外の患者を個別に対応をするというような場合には、これは国においてきちんと専門家による慎重な審査を行うことが必要ではないかと考えておりまして、その場合は、期間を限定することなく、きちんと審査をする必要があると考えているところでございます。

 こうした取扱いは非常に限定的なものではございますけれども、臨床研究計画に基づく研究データを適切に得ながら、患者申出療養を実施できるように検討してまいりたいと考えております。

 

○川田龍平君 先進医療として実施計画策定に至らない医療もその対象とするのであれば、患者申出療養は明らかにヘルシンキ宣言や薬機法のGCP省令、そして人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に反するものになると思いますが、いかがでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 基本的には、患者申出療養では保険収載に向けて実施計画の作成を医療機関に求めることとしております。したがって、ヘルシンキ宣言、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿った対応になるものと考えているところでございます。

 ただ、必ずしも実施計画に沿っていないケースも生じる場合もございますので、その場合につきましては、患者申出療養に関する会議におきまして、倫理性も含めて個別に慎重に検討していただきたいと考えております。

 

○川田龍平君 今回のこの患者申出療養は、実施計画を義務付け、臨床研究として実施すると言いつつも先進医療に該当しない治療も含まれるというのでは、これまでの研究の概念を広げるということなのでしょうか。

 

○政府参考人(唐澤剛君) 患者申出療養には、先進医療の実施計画、適格基準があるわけでございますけれども、その対象外の患者に対する治療、あるいは、海外で承認されておりますけれども国内で未承認の医薬品の使用など、先進医療として実施されていない治療も含まれてくると考えております。

 これらにつきましては、これまでの研究の概念を広げるということではございませんけれども、必ずしも実施計画に沿っていないケースもあり得ると、そういうケースもあり得ると考えておりますので、その場合には個別にきちんと検討してまいりたいと考えております。

 

○川田龍平君 これは、臨床研究を国際水準で行っていこうとする方向性と反して、安全性や有効性が未確立な医療、実験段階の医療に保険財源を流用することとなって、また、研究と保険診療の線引きを曖昧にして、この国の臨床研究の国際的信頼の回復を遠のかせるばかりか、世界に誇るこの国の医療制度を内部から崩壊させることにつながってしまうんではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

 

○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来、議論が進んでおりますけれども、今回の患者申出療養は、先ほどお答えしたとおり、基本的に臨床研究として実施されるものだということを押さえながら、国においてその治療法の安全性、有効性を確認するということがまず第一点。そしてもう一つは、これも何度も申し上げておりますけれども、保険収載に向けて医療機関に実施計画の作成などを求めて、義務付けて、計画どおり進んでいない場合には患者申出療養から外すといった条件の下に保険診療との併用を認めようということでございます。

 今後も、適切な形で保険診療と保険外診療を組み合わせる仕組みを講じることで、世界に誇る我が国の国民皆保険と、これを堅持をしていくということを維持しながら、安全性、有効性等の確認を経た上で、必要かつ適切な医療について保険適用をしてまいりたいというふうに考えております。