189-参-本会議-002号 2015年01月28日(未定稿)

○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。
 会派を代表し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 今回のISIL、いわゆるイスラム国による邦人人質事件は、許し難い暴挙であり、一刻も早く無事に解放されることを切に望みます。
 増え続けるテロ被害から国民を守る安全対策が急がれると同時に、国民生活も苦しくなる一方です。
 所得再分配機能は予算の重要な機能の一つですが、昨年四月の消費税の八%への引上げで一番苦しんでいる低所得者層や障害者や難病患者など社会的弱者と言われる方々に対して、今回の補正予算は所得再分配機能を十分に果たしているとは思えません。我が党が常々主張しているように、まずは徹底した規制改革と地方分権、そして歳出削減を行うことで、国民生活と中小企業を苦しめ、税収を減らす結果になる消費税増税をこのタイミングでやらずとも済むはずです。
 そしてもう一つ、日本では命の安全保障である社会保障もまた危機に瀕している状態です。
 国家の急務として、例えば持続可能な国民皆保険の維持、賃上げ、原発事故後の健康被害対策など、法整備や予算にもっと力を集中すべきではないでしょうか。予算を大胆に組み替えて、必要なところに必要な予算を確保するべきです。総理のお考えをお聞かせください。
 今年は薬害エイズ裁判の結審から二十年になります。十九歳だった私は、原告として厚生大臣と真正面から向き合い、政治が動くことの大きさ、動けば変わるということを身をもって知りました。
 国会議員八年目を迎えますが、HIV治療薬の進歩や妻の支えのおかげで、先日、三十九歳の誕生日を迎えることができました。十歳で感染告知を受けてから、大人になるまで、成人になるまで生きられるとは思っていませんでした。誕生日が来るたびに感じる感謝の気持ちを今生きている子供たちにも感じてほしい。命が最優先される社会の実現のために、これからも全力を尽くします。
 命の安全保障について質問いたします。
 政府は、ドラッグラグに苦しむ患者を救うという名目で患者申出療養制度を新設し、保険外併用療養を拡充する法案を提出予定ですが、救われるターゲットであるはずの国内最大の患者団体、日本難病・疾病団体協議会が強く反対をしています。なぜでしょうか。我が国の国民皆保険制度が形骸化する危険があるからです。
 保険証一枚あれば全国の医療機関で平均水準以上の医療を安価で受けられる日本の皆保険制度は、世界から高く評価をされています。我が国では、医療は憲法二十五条に基づいた社会保障であって、政府には国民の命を守る責任があります。しかし、医療を商品として市場に委ねている米国では、政府は薬価交渉権を持たず、企業が自由に値段を付けるために、医療費も医療保険もびっくりするほど高額です。医療費が国家財政を圧迫し、医師の自殺が多く、医師不足が深刻化しています。日本を決してこのようなことにしてはなりません。
 患者申出療養制度が自由診療を増やし公的保険医療の範囲を狭めれば、治療費が払えなくなる国民は民間保険との二本立てにせざるを得なくなるでしょう。新薬も保険適用外となれば製薬会社の言い値で全額自己負担となり、米国同様に医療費がどんどん高くなるおそれがあります。
 国民皆保険制度で命を救われている当事者の一人として申し上げたい。経済成長も国の発展も、国民の命と健康があってこそです。憲法二十五条を基盤にしたこの制度を決して形骸化させることのないよう、その大きな責任を負う政府のトップとしてしっかり守っていただきたい。総理、お約束していただけますでしょうか。
 次に、震災以降、命の安全保障の一つとして成立したにもかかわらず、棚上げにされている子ども・被災者支援法について伺います。
 福島県の健康調査で見付かった甲状腺がん又は疑いの子供たち百十二人のうち、手術した八十五人は悪性度の高い症例がほとんどでした。二回目の検査では、さらに甲状腺がんの疑いが四人出ています。この現状にもかかわらず、最初八割以上あった受診率が二回目は四割以下に激減しており、被災者の健康支援という本来の目的から遠ざかってしまっています。
 政府はこの国の医療費増大に警鐘を鳴らしていますが、ならば、医療費削減政策の最重要事項である予防医療としてこの健康調査受診率をもっと上げ、子供たちの甲状腺がん調査を長期にわたり続けるよう働きかけるべきではないでしょうか。
 被災者の苦しみと将来への不安、それを救済しようとする議員たちが全党一致で成立させた子ども・被災者支援法を決して風化させてはなりません。総理の見解をお聞かせください。
 国連科学委員会の評価では、福島県外でも同等の汚染が広がっているとされています。子ども・被災者支援法十三条の二にも、子供である間に一定基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者の健康診断は生涯にわたって実施すると明記されています。安倍総理、一体福島県外での子供の甲状腺検査はいつになったら国の責任で行われるのでしょうか。
 次に、この国において命に関する大きな問題の一つ、自殺対策について伺います。
 自殺対策推進予算は毎回補正で計上されていますが、予算が打ち切られる懸念があると自治体が本腰を入れません。厚生労働省に移管する二〇一六年度以降は、今回の補正と基金残額を合わせた予算三十六億円分を是非本予算で確保していただきたいと思います。総理大臣に決意を伺います。
 また、今回の補正による交付金は、年度をまたぎ新年度においても活用してもらうべきと考えますが、麻生財務大臣、いかがでしょうか。
 次に、私のライフワークである薬害問題に関連する質問をいたします。
 臨床研究推進予算が合計二十三・三億円計上されていることは、新薬を待ち望む難病患者の一人として大変期待するところです。しかしその一方で、ここ数年、ディオバン事件など、研究現場と製薬業界の癒着による臨床研究の不正が相次いで発覚しています。私は、薬害被害者の一人として、臨床研究における被験者の権利保護と製薬企業の資金提供を透明化する法整備が急務と考えます。
 昨年、政府の検討会でも法制化方針が直言されているにもかかわらず、今国会への提出を見送る可能性が高いと聞いていますが、本当でしょうか。この問題は日本の臨床研究の信憑性を著しく傷つけており、放置すればするほど悪化していきます。今国会で是非法案提出をお願いいたします。塩崎厚生労働大臣、お答えください。
 私のような難病患者の長年の願いであった難病法が昨年成立し、消費増税分の使途として難病対策の予算が法定化されています。この夏には医療費助成を開始するとのことですが、前にもそう言ってずるずると延期されたという記憶があり、今回も先送りされるのではないかと患者は不安になっています。病気と闘う難病患者にとっては、一日一日が非常に貴重です。全面施行を何月に行うのか、難病対策に熱心に取り組んでくださっている安倍総理の口から是非この場ではっきりとお答えいただけますでしょうか。
 新年早々、「障害者福祉 報酬減額へ」という報道が流れました。政府内で検討の結果、現状維持との方針が内定したようですが、これは物価上昇分を勘案すると実質マイナスです。
 現場の実態を御存じでしょうか。高齢者介護と同様、障害福祉の現場でも人不足が深刻化しています。この状況で報酬を上げることなしに障害福祉サービスに携わる人材をいかに確保していくおつもりなのか、塩崎厚労大臣、お答えください。
 学校での性教育も不十分な小学校高学年から子宮頸がんワクチンを勧奨する倫理的問題については、かねてより山谷大臣と私は強い懸念を共有し、全国で深刻な副反応事例が起きている問題について共闘してきたところです。
 厚労省は、B型肝炎ワクチンの定期接種化も検討しているようですが、どちらのワクチンもアジュバンドという免疫増強剤にアルミニウムを使っており、更なる副反応被害が心配されます。ワクチンに副反応は付き物ですが、子宮頸がんワクチンの場合はその発生率がこれまでの子供向け定期接種の約七倍、インフルエンザワクチンの約四十倍と非常に高いことを見ても、今も強い懸念を拭えません。B型肝炎についても同様です。定期接種化に踏み切る前に、その安全性と必要性についてもっと慎重かつ長期の検証が必要です。
 命の問題は被害が起きてしまってからでは取り返しが付きません。塩崎厚労大臣、いかがでしょうか。
 最後に、安倍政権になってから国会審議がおろそかにされることが目に余ります。今国会はいまだに提出法案が決まっておりませんが、現時点で予想される法案は、どれもこの国の制度や根幹、国民生活を大きく変える重要なものばかりです。
 繰り返すようですが、命の安全保障については、取り返しの付かないことを引き起こさないためにも、特にしっかりやっていただきたい。丁寧な議論なしで拙速に法案を通してしまうことは有権者への背信行為です。参議院は良識の府、再考の府です。国政選挙のない今年は、是非ともしっかり時間を取り、充実し徹底した国会審議を行うよう強く求め、私の代表質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 川田龍平議員にお答えをいたします。
 補正予算についてお尋ねがありました。
 今般の経済対策は、地域の消費など経済の脆弱な部分に的を絞り、かつスピード感を持って対応を行うことで、個人消費のてこ入れと地方経済の底上げを図るものです。このため、地域の実情に配慮しつつ消費を喚起する、しごとづくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取組を通じて地方の活性化を促す、災害復旧等の緊急対応や復興を加速化するという三点に重点を置いて取りまとめており、経済効果の期待できない施策に安易に回したとの御指摘は当たりません。
 その上で、これらの必要な事業に要する財源を超える部分については、財政健全化の観点から公債金の減額に充てることとしたところです。
 また、今回の補正予算では、所得の低い方などにもしっかりと目配りしています。具体的には、交付金を創設し、例えばプレミアム付き商品券や所得の低い方に向けた灯油等の助成、子供の多い御家庭の支援など、地方自治体の創意工夫で実施する消費喚起、生活支援策を後押しするため、二千五百億円を手当てしているところです。
 患者申出療養についてお尋ねがありました。
 患者申出療養は、患者の申出を起点とし、安全性、有効性を確認しつつ、先進的な医療を身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものであり、同時に、保険収載に向け実施計画の作成等を求めることとしています。
 今後も、世界に誇る我が国の国民皆保険制度を堅持しつつ、困難な病気と闘う患者の思いにしっかりと応えてまいります。
 福島第一原発事故後の子供の甲状腺検査についてお尋ねがありました。
 現在の福島県で行われている二巡目の甲状腺検査は、二十六年度と二十七年度の二か年で実施する計画であり、まだ調査の途中段階です。したがって、既に終了した一巡目の検査の受診率と比較することは適当ではありません。
 政府としては、長期にわたってより多くの子供たちに検査を受けていただけるよう、福島県をしっかりと支えてまいります。
 また、福島県外での甲状腺検査については、周辺各県の有識者会議で、調査の必要はないとの見解が取りまとめられています。その後、環境省が設置した専門家会議では、現時点でも、施策として一律に実施することについては慎重になるべきとの意見が多かったという結論が出ています。
 お子さんや保護者の方の不安に十分思いを致し、今後とも、健康相談やリスクコミュニケーションを進めていく考えであります。
 自殺対策についてお尋ねがありました。
 我が国における自殺対策は着実に成果を上げていますが、今なお年間二万五千人以上の方が自ら命を絶たれるという深刻な状況にあることに変わりなく、国を挙げた対策を更に前に進めていく必要があります。
 政府としては、若年層向けの対策や経済情勢の変化に対応した対策など、きめ細やかな対策が実施できるよう、将来においても、予算措置も含め、しっかりと対応してまいります。
 難病対策についてお尋ねがありました。
 難病に苦しむ方々の視点に立って政策を進めていくことは、私のライフワークと考えております。
 この難病対策を充実強化するための新法が本年一月に施行され、医療費助成の対象を第一次実施分として五十六疾病から百十疾病に拡大しました。本年夏には対象疾病を更に拡大し、第一次実施分と合わせ、約三百疾病とすることとしています。
 拡大の具体的な時期については、一日も早く実現してほしいという患者の方々の思いに応えるため、できる限り七月に約三百疾病の医療費助成を実施できるよう、都道府県の状況なども踏まえつつ準備を進めてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 自殺対策の交付金の執行についてお尋ねがありました。
 補正予算の趣旨に鑑み、交付金についても早期に事業に取り組んでいただく必要があろうと存じます。ただし、やむを得ない事情による計画の変更など、年度内に事業が完了しない場合にも引き続き事業が実施できるよう、今回の補正予算において繰越明許費として計上いたしております。(拍手)
   〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕
○国務大臣(塩崎恭久君) 川田龍平議員から三点お尋ねを頂戴いたしました。
 まず、臨床研究に係る法案についてのお尋ねでございます。
 臨床研究につきましては、昨年十二月に公表されました検討会の報告書において、一定の範囲の臨床研究には法規制が必要とされる一方、これまで法規制のなかった分野であるため、研究者等による自助努力や法規制によらない対応方策とのバランス、臨床研究に対する資金提供等の開示についての製薬企業等の取組状況も踏まえ、検討すべきとされておるところでございます。
 このため、現時点で提出時期については未定でございますけれども、今後、与党その他の関係者とも十分に相談の上、検討を進めたいというふうに考えておるところでございます。
 障害福祉サービスの報酬決定を踏まえた人材の確保についてのお尋ねがございました。
 今般の障害福祉サービスの報酬改定においては、福祉・介護職員の処遇改善加算の拡充として、一人当たり月額一万二千円相当の上乗せを行うこととしております。この拡充が福祉・介護職員の処遇改善に確実につながるよう、しっかりと運用していくことにより、障害福祉に携わる人材の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。
 B型肝炎ワクチンに関するお尋ねがございました。
 B型肝炎ワクチンにつきましては、長期間にわたり世界のほとんどの国で小児に接種されており、厚生科学審議会においても、医学的、科学的観点から広く接種を促進していくことが望ましいとの提言をいただいております。
 また、御指摘のアルミニウムを含むアジュバントについて、WHOの専門委員会は、入手可能な最新の医学的知見からは健康への危険性があるとする根拠はないとの考えを示しております。
 先般、厚生科学審議会において、国民に対して広く接種機会を提供する場合の技術的な課題の検討を終えたところであり、厚生労働省としては、今後、B型肝炎ワクチンの供給体制、予防接種を実施する体制の確保、予防接種施策に対する国民の理解の促進などについて必要な調整を進めてまいります。