参議院議員川田龍平君提出
アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する再質問に対する答弁書

 私が提出した「アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する質問主意書」(第百八十六回国会質問第七号)に対する答弁書(内閣参質一八六第七号)(以下「答弁書」という。)について、以下質問する。


一 NEDOが明らかにした、支出額が確定した各年度の金額の総額及びその内訳の概要のうち、「外注費」と「再委託費」とは具体的にどのような違いがあるのか、示されたい。

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構によると、外注費とは、委託先が委託業務に直接必要なデータ分析等の請負業務を仕様書に基づいて第三者に行わせるための経費であり、他方、再委託費とは、委託先が委託業務の一部を更に第三者に委託するための経費であるとのことである。

二 プロジェクト実施者の都合により、最終報告の予定が度々引き延ばされ、今年三月末がいよいよ報告の最終期限となっているJ―ADNI(アドニ)について、経済産業省及び文部科学省は費用対効果について、現時点でどのように見込んでいるのか。

御指摘の「最終報告の予定が度々引き延ばされ、今年三月末がいよいよ報告の最終期限となっているJ―ADNI(アドニ)」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えするこ
とは困難である。


三 J―ADNI(アドニ)の成果がしっかりと検証されるまでは、J―ADNI(アドニ)二への来年度分の支出は行うべきではないと考えるが、経済産業省の見解を明らかにされたい。

平成二十六年度の経済産業省のアルツハイマー病研究に係る事業については、同年度予算の成立前であるため、お答えすることは差し控えたい。

四 田村厚生労働大臣は、主任研究者が所属する東京大学に対して真相究明の調査を指示し、これを受けた東京大学は今月三日に弁護士ら外部六人、学内四人の計十人の調査委員会を作ったが、委員は公表していないとの報道がある。委員を公表しない理由を示されたい。また、委員を明らかにして、中立性、第三者性が担保されていることを証明されたい。加えて、調査の進行状況及び調査結果の取りまとめ時期の見通しについても明らかにされたい。

お尋ねについては、御指摘の調査(以下「本件調査」という。)が東京大学が実施しているものであることから、政府としてお答えする立場にない。

五 前記四に関しては、当然拙速な調査であってはならず、東京大学が自ら行う調査中の一方で、研究の最終報告書を提出してしまうというのは、手続上、また、常識的に許されないことと考えるが、いかがか。

御指摘の「研究の最終報告書」の意味が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、御指摘のプロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)については、今後、適切な時期に研究の成果が取りまとめられるべきものと考えている。

六 被験者の中には、同意書の提出などの適切な手続を踏んでいない者もいる可能性があるとの深刻な示唆を受けたので、このことだけでも早急に厚生労働省自ら実地調査を行い、疑惑を晴らすべきと考えるが、いかがか。

先の答弁書(平成二十六年二月十二日内閣参質一八六第七号。以下「先の答弁書」という。)四から七までについてでお答えしたとおり、本件プロジェクトの研究データ等に関する事実関係については、専門的な観点から、公正な調査が必要であることから、本件プロジェクトの研究代表者が所属する東京大学に対し、本件調査を行うよう依頼したものである。

七 告発者の記者会見資料によれば、製薬会社から出向している事務局員が主任研究者の指示により、被験者のデータチェックを担当する分担研究者の管理する研究室から、同分担研究者が保管していた被験者に係る資料を無断で持ち出したとされており、厚生労働省の職員から主任研究者への指示があったとの情報も寄せられている。そこで、右証拠資料の持ち出しに関して、厚生労働省の誰が主任研究者に対して、どのような指示をしたのか、製薬会社からの出向者が証拠資料を持ち出すことを厚生労働省として想定ないし容認していたのか、明らかにされたい。

研究上の不正が疑われる事案に関して不正の有無の検証を行う上では、その証拠となるデータの保全が必要であることから、厚生労働省老健局の担当者が研究代表者及び研究分担者に対して、当該データに触れないよう要請したところであり、御指摘のような「製薬会社からの出向者が証拠資料を持ち出すことを厚生労働省として想定ないし容認していた」事実はない。

八 高血圧症治療薬ディオバンの臨床研究や慢性骨髄性白血病治療薬を用いた医師主導臨床研究での疑惑を見ても、製薬会社の従業員が臨床研究の被験者資料の保全に関与すること自体が大きな問題であると考えるが、この点に対する厚生労働省の見解を明らかにされたい。

御指摘の「臨床研究の被験者資料の保全に関与すること」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、臨床研究における研究機関と製薬企業との間の労務提供等についての透明性の確保は必要であると考えている。

九 答弁書の十二についてで、「倫理指針」の二〇〇八年改正の前後に、倫理審査が行われた本件プロジェクトの実施施設数は、「調査に時間を要する」との答弁であったが、どの程度の日数があれば調査し、結果の報告が可能であるのか、示されたい。

十 答弁書の十四についてで、「今回の事案は、同年三月三十一日以前に着手された研究であるため、当該規定は適用されない」とあり、答弁書の十五についてもこの認識に基づいているが、プロジェクトの着手は三月三十一日以前であっても、臨床研究実施施設によっては倫理審査委員会への申請が、「倫理指針」の二○○八年改正の適用される時期であった可能性はないのか。

九及び十について
御指摘の「調査」については、臨床研究機関の協力に基づき実施するものであるため、お尋ねの日数について一概にお答えすることは困難である。また、お尋ねの臨床研究実施施設ごとの倫理審査委員会への申請時期については、把握していない。なお、先の答弁書十四についてでお答えしたとおり、本件プロジェクトは、平成二十一年三月三十一日以前に着手された研究であるため、臨床研究実施施設ごとの倫理審査委員会への申請時期にかかわらず、平成二十年の改正後の臨床研究に関する倫理指針(平成二十年厚生労働省告示第四百十五号)は適用されないものである。



十一 答弁書の十七についてで、「日経バイオテクONLINE Vol一九九一」 二○一四年一月十五日配信の増田智子氏記事「あなたの未発表データも「捏造」扱いの危機」で、「科学研究で「捏造」、「改ざん」ということが決定的になるのは、査読付きの論文誌に発表した論文でデータに偽りがあったことが示された場合です」との見解が示されていることについて質問する。

論文発表前のデータの修正が限られた条件下で可能であることは認めるが、増田氏のような考え方が流布することは、論文発表前の実験データの原資料や実験ノートの修正を容易に行えるものであるとの認識に基づく改ざんを誘発するおそれがあり、特許取得、未発表データに基づく知的財産のライセンス、共同研究の推進等の前提となるデータの正確性について、研究者の認識を誤らせる危険性があると考えるが、いかがか。少なくとも、論文発表前であってもデータの改ざんは改ざんであり、ねつ造はねつ造であることを研究者は明確に認識する必要があると考えるが、いかがか。

お尋ねについては、個々の記事の内容に関するものであるため、政府としてお答えする立場にない。なお、「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」(平成十八年八月八日科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会決定)の対象となる不正行為は、「発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造と改ざん、及び盗用である」とされている。

十二 昨年十一月五日の参議院厚生労働委員会における質疑において、ディオバンに関する薬事法の広告規制違反と関連する座談会を掲載した日経メディカル誌の発行元である日経BP社の宮田満氏がディオバン問題の検討委員会の委員であることは、社会常識としての利益相反の観点から不適切ではないかとの私の質問に対し、厚生労働省は、「宮田さんについては(中略)この分野における幅広い知識を持っておられまして、今般の事案に関する議論に十分な資質を持っておられる方だと考えております。他の委員と同様に、利益相反に関しましては、ノバルティス社やあるいは関係大学との利益相反に関する一定の基準を検討会の中でつくっていただきまして、それについて最終的にその基準を満たしているという中で申告状況を公表したところでございます。利益相反については透明性を十分確保した上で適切に管理することが重要だと思っておりますので、検討委員会における検討を進めるに当たって、今回の宮田さんの選定については特段の問題があるとは考えておりません。」と答弁した。

しかし、選定時の申告では分からなかった事実として、宮田氏の勤務する会社が、薬事法違反のおそれが疑われる広告を掲載し利益を得ていたことが明らかとなった以上、有識者としての見識や、申告や開示に関する基準に適合するか否かということとは別に、社会常識としての利益相反の考え方に照らして、当該問題を検討する政府委員であり続けることの適切性について、政府の見解を明らかにされたい。

御指摘の「社会常識としての利益相反の考え方」の意味するところが必ずしも明らかではないが、高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会の御指摘の委員については、他の委員と同様、ノバルティスファーマ社や関係大学との利益相反に関する申告を求め、一定の基準を満たしていることを確認し、当該申告を公表することにより、透明性を確保した適切な利益相反の管理を行っているため、委員として同検討委員会に参画いただくことは、問題ないと考えている。