先日出した「公益通報者保護法に関する質問主意書」と、「アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する質問主意書」について、答弁書が返ってきたので、お知らせいたします

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公益通報者保護法に関する質問について


アルツハイマー病の早期発見を目指す国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)」で、臨床研究のデータが多数改ざんされていたとの内容を含む情報が昨年十一月、厚生労働省にEメールで届いた問題について、以下質問する。

一 昨年十一月に本件Eメールが届いた際、厚生労働省の担当者は、発信者の氏名が明記されたEメールをそのままプロジェクト責任者に転送し、結果として発信者の個人情報が公になってしまった。このような事態は、公益通報者保護法施行に伴い制定されたガイドラインに反する事態ではないかと考えるが、制度を所管する消費者庁の見解を明らかにされたい。

二 報道によると、今回の情報提供者自身は、内部告発を行ったとの認識を持っており、厚生労働省の口頭での謝罪では納得せず、名誉毀損だと主張しているとのことである。公益通報者保護法では、本件情報提供者に対し、どのような救済の方策があるのか、明らかにされたい。

三 厚生労働省の主張によれば、研究に関わった情報提供者自身が内部告発と認識し、主張していても、厚生労働省がその内容を内部告発ではないと判断する限り、公益通報者としての保護を行う必要はないとのことである。しかし、そのようなことでは内部告発などする者はもはや誰もいなくなってしまうのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

一から三までについて
御指摘の「Eメール」については、公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号。以下「法」という)第二条第一項に規定する「公益通報」に該当しないため、法の適用はなく、また、方の施行に伴い国の行政機関が取り組むべき基本的事項を定めた「国の行政機関の通報処理ガイドライン(外部の労働者からの通報)」(平成十七年七月十九日関係省庁申合わせ)が適用される通報にも該当するものではなかったと考えている。いずれにしても、政府としては、今後とも、公益通報者の保護に資するよう、法の適切な運用に努めてまいりたい。


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アルツハイマー病研究の国家プロジェクトに関する質問について

 アルツハイマー病の早期発見を目指す国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)」(以下「本件プロジェクト」という。)で、臨床研究のデータが多数改ざんされていたとの疑惑が生じている。
本件プロジェクトには、これまで経済産業省、厚生労働省、文部科学省から計二十四億円の国費が投じられたとの報道があるが、早急に調査結果に基づく国としての認識を明確にし、研究の一部又は全面的な中止、あるいは問題を解決して続行する意義がある場合にはその旨を明らかにする必要があるとの観点から、以下質問する。


一 本件プロジェクトには、これまでどこの省庁からそれぞれいくらの国費が投じられてきたのか、年度別の支出を明らかにされたい。また、年度別の機械装置費、人件費、消耗品費、旅費、外注費など項目別の経費概要を明らかにされたい。加えて、省庁ごとの項目別経費概要についても示されたい。

経済産業省としては、御指摘のプロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)について、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)に対し、運営費交付金の交付を行ったところであり、NEDOによれば、その支出額が確定した各年度の金額の総額及びその内訳(内訳については、消費税及び地方消費税に相当する額を除く。)の概要について、

①総額、
②①のうち機械装置等費、
③①のうち労務費、
④①のうち消耗品、旅費、外注費等及び
⑤①のうち再委託費等

をお示しすると、次のとおりとのことである。

平成19年度
①2億9999万2350円
②1億2663万6034円
③2008万56円
④2391万4910円
⑤9450万2000円

平成20年度
①2億7942万8100円
②2930万8215円
③2947万5768円
④1億2198万4017円
⑤6050万円

平成21年度
①6億356万8350円
②2億9905万8433円
③2398万1347円
④1億4474万4220円
⑤3776万1000円

平成22年度
①3億5199万9900円
②7631万950円
③2384万3432円
④1億6144万4618円
⑤3494万円

平成23年度
①3億7621万7100円
②1242万250円
③2885万489円
④2億3438万4261円
⑤4184万円

平成24年度
①1億6999万6100円
②1226万5090円
③3585万4454円
④7855万4456円
⑤1643万2048円

厚生労働省としては、本件プロジェクトについて、研究代表者に対し、厚生労働科学研究費補助金による国庫補助金の交付を行ったところであり、その支出額が確定した各年度の金額の総額及びその内訳の概要について、

①総額、
②①のうち人件費、
③①のうち諸謝金、
④①のうち旅費、
⑤①のうち備品費及び消耗品費等の調査研究費並びに
⑥①のうち委託費

をお示しすると、次のとおりである。

平成19年度
①2900万円
②0円
③115万8360円
④536万7650円
⑤2197万5650円
⑥50万円

平成20年度
①1992万円
②0円
③28万3650円
④83万7690円
⑤1879万8660円
⑥0円

平成21一年度
①4000万円
②0円
③200万2875円
④82万1010円
⑤3717万6115円
⑥0円

平成22年度
①5200万円
②310万4185円
③171万1800円
④138万8280円
⑤3379万6101円
⑥0円

平成23年度
①4149万9000円
②398万1350円
③89万8700円
④505万1940円
⑤2047万4862円
⑥0円

文部科学省としては、本件プロジェクトについて、直接的に研究経費を支出していないが、本件プロジェクトで得られたデータを他のプロジェクトのデータと合わせ、公開用データベースとして整備するための経費について、独立行政法人科学技術振興機構に対し、運営費交付金の交付を行ったところであり、同機構によれば、当該支援に係る支出額が確定した各年度の金額の総額及びその内訳の概要について、

①総額、
②①のうち人件費及び諸謝金、
③①のうち旅費、
④①のうち備品費及び消耗品費等の物品費並びに
⑤①のうちその他外注経費等

をお示しすると、次のとおりとのことである。

平成23年度
①4550万円
②581万3524円
③155万6250円
④1548万9187円
⑤1218万2132円

平成24年度
①4550万円
②679万8463円
③220万2073円
④652万4439円
⑤1951万3658円


二 本件プロジェクトに出資している製薬会社の名称、出資形態(寄附、共同研究、委託研究の別、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施するプロジェクトへの参画形態など)の概要を明らかにされたい。

お尋ねの「本件プロジェクトに出資している製薬会社」の意味が必ずしも明らかではないが、政府として把握している限りでは、本件プロジェクトについて、NEDOからの受託者であるバイオテクノロジー開発技術研究組合の組合員として本件プロジェクトに参画していた製薬会社は、

アステラス製薬株式会社、
エーザイ株式会社、
塩野義製薬株式会社、
第一三共株式会社、
大日本住友製薬株式会社、
武田薬品工業株式会社、
田辺三菱製薬株式会社、
日本イーライリリー株式会社、
ファイザー株式会社、
ブリストル・マイヤーズ株式会社
及びMSD株式会社であり、

同組合の賦課金を負担している。

三 本件プロジェクトに関連したデータの改ざんを告発した内容を含む情報が、昨年十一月にEメールで届いた際、内部告発には当たらないと判断した理由の一つとして、公表されて査読論文になっていない段階ならば、データをいじっても改ざんや捏造ではないと考えたのか、政府の見解を明らかにされたい。

お尋ねについては、御指摘の理由によるものではない。

四 報道によると、「論理的記憶Ⅱ」という心理テストにおいて、実際には十分後に長文を思い出してもらう聞き取りを行ったにもかかわらず、三十分後に聞き取りを行ったことにしていたとのことだが、事実か。

五 前記四の心理テストにおいて、「記憶に障害あり」と「記憶以外に障害あり」の判定を書き換えさせるなど二百件以上の改ざんと推定される訂正を出させているとの報道があるが、事実か。

六 外傷性記憶障害や痴呆症状を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者も被験者としていたとのことだが、事実か。

七 データセンターが初診後二ヶ月以上経過して初めて、仮登録の内容をチェックしていたとのことだが、事実か。事実である場合には、本来被験者になることのない人が不必要な検査を受けていたことになり、検査費用が税金の無駄遣いとなるだけでなく、社会に何の貢献もできない検査により被曝し健康被害が出るリスクを放置していたことになるのではないかと考えるが、いかがか。


四から七までについて

政府としては、本件プロジェクトの研究データ等に関する事実関係については、専門的な観点から、公正な調査が必要であることから、本件プロジェクトの研究代表者が所属する東京大学に対し、調査(以下「本件調査」という。)を行うよう依頼した段階であり、お尋ねについてお答えすることは困難である。


八 臨床認知症評価法(CDR)検査の監督者に医師資格を持たない者が就いているのは、不適切であると考えるが、いかがか。

九 臨床医学研究である本件プロジェクトの責任者には、当然十分な臨床経験が必要と考えるが、十分な経験がある場合には、その臨床経験について明らかにされたい。

八及び九について

お尋ねの「監督者」、「責任者」及び「十分な臨床経験」の意味が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

十 本件プロジェクトの責任者である朝田隆筑波大学教授は、この分野の大規模共同研究は日本初であると発言したとのことだが、事実か。J―COSMICやSEAD―Jは同じ分野の大規模共同研究とは言えないとする理由があれば、示されたい。

御指摘の発言については、政府として承知していない。

十一 データを改ざんしたとの疑いを持たれている東京大学に調査を任せるのではなく、納税者への責任として厚生労働省自ら率先して速やかに調査すべきと考えるが、いかがか。

お尋ねについては、厚生労働省において、本件プロジェクトについての聞き取り調査を行い、その結果を踏まえ、四から七までについてでお答えしたとおり、東京大学に対し、本件調査を行うよう依頼したところである。

十二 本件プロジェクトは二〇〇七年に開始されたと報道されているが、「臨床研究に関する倫理指針」(以下「倫理指針」という。)の二〇〇八年改正の前後に、倫理審査が行われた本件プロジェクトの実施施設はそれぞれ何施設あるか、示されたい。

お尋ねについては、調査に時間を要するため、お答えすることは困難である。

十三 倫理指針改正の前後で、施設に対する倫理審査の方法や内容は異なるのか、明らかにされたい。

お尋ねの「施設に対する倫理審査の方法や内容」については、その意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、臨床研究に関する倫理指針(平成二十年厚生労働省告示第四百十五号。以下「倫理指針」という。)においては、平成二十年の改正前に引き続き、臨床研究計画が倫理指針に適合しているか否かについて、あらかじめ倫理審査委員会において審査を行うこととされるとともに、同年の改正により、新たに、倫理審査委員会の設置者の厚生労働大臣等が実施する調査への協力、倫理審査委員会委員に対する教育及び研修、軽微な事項の迅速な審査等に関する規定を設けるなど、倫理審査の質の向上及び迅速化に資する見直しがなされている。


十四 前記十二に関連して、倫理指針改正後に倫理審査が行われた施設については厚生労働省の調査権限があるものと解するが、いかがか。また、厚生労働省は倫理指針に基づく調査を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

倫理指針においては、平成二十一年四月一日以降に着手された臨床研究について、臨床研究機関の長及び倫理審査委員会の設置者は、倫理指針に適合しているか否かについて、厚生労働大臣等が実施する実地又は書面による調査に協力しなければならないとされているところ、今回の事案は、同年三月三十一日以前に着手された研究であるため、当該規定は適用されないものである。なお、本件調査によって、倫理指針への違反が疑われるような事案が明らかになった場合には、更なる報告を求めるなど適切に対処してまいりたい。

十五 「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ)」においては、主な臨床研究実施機関による自主点検の結果が示されているが、今回の疑惑はこの自主点検では見つけることができなかったということか。この点につき、点検結果と照合した上で、厚生労働省の見解を明らかにされたい。

厚生労働省及び文部科学省においては、附属病院を設置する国公私立大学や特定機能病院等の臨床研究を実施する主な機関を対象として、「医療機関・研究機関による臨床研究の適切な実施に係る自主点検の実施及び報告のお願いについて」(平成二十五年八月二十三日付け二五文科振第四五三号・医政発〇八二三第二号文部科学省高等教育局長、科学技術・学術政策局長及び研究振興局長並びに厚生労働省医政局長連名通知)を発出し、調査を行ったところであるが、当該調査は、倫理指針の対象となる臨床研究であって、平成二十一年四月一日以降に着手された侵襲性のある介入を伴う研究を対象として自主点検を求めているものであり、今回の事案については、同年三月三十一日以前に着手された研究であるため、当該調査の対象となっていない。

十六 安倍政権は、成長戦略の目玉として「日本版NIH」を掲げ、内閣府に独立行政法人を新設する法案を準備させていると承知しているが、ディオバン問題、本件プロジェクトでの改ざん疑惑、そして臨床試験SIGNでの不祥事等と、立て続けに起こっている臨床研究をめぐる疑惑及び不祥事の教訓を踏まえ、研究成果に対する世界からの信頼を勝ち取るために、どのような対策を講じるつもりか、内閣府の見解を明らかにされたい。

政府としては、「日本再興戦略」(平成二十五年六月十四日閣議決定)の実行に向け、所要の法案を国会に提出するなどの取組において、国が行う医療分野の研究開発の公正かつ適正な実施の確保に努めてまいりたい。

十七 科学研究で捏造、改ざんということが決定的になるのは、査読付きの論文誌に発表した論文でデータに偽りがあったことが示された場合であるとの見解が一部にあるが、文部科学省はこの見解に同意するか、明らかにされたい。

文部科学省としては、御指摘の見解は承知していない。