川田 龍平 オフィシャルブログ

4月12日(木)、内閣委員会にて新型インフルエンザ等対策特別措置法案の審査に参加しました。


今回は、委員会に、参考人として国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長田代眞人氏、名誉世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局事務局長・前自治医科大学地域医療学センター教授尾身茂氏、一般社団法人日本経済団体連合会専務理事久保田政一、そして、同志社大学法学部教授川本哲郎氏ら4名をおよびした参考人質疑を行いました。


私も、新型インフルエンザの流行防止のみならず、人権の観点からこの法案の問題について指摘いたしました。


以下、議事録を掲載いたします。

※未定稿文ですので一部修正の可能性がございます。


○川田龍平君  みんなの党の川田龍平です。
 私はふだん厚生労働委員会なんですが、是非この法案についてはしっかり審議したいという立場で、内閣委員に異動をさせていただきました。
 そして今日、参考人質疑をしていただきまして、委員の皆様には本当に突然のお願いの中、お越しくださいまして、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
 そして、委員長それから理事にも、本当にこういった参考人の機会を設けていただきまして、ありがとうございます。そして、浜田委員には、本当に今回人権の観点ということで是非とも川本参考人ということで強く推薦されまして、本当にこういった委員会での参考人の質疑の場を設けさせていただきまして、本当にありがとうございました。
 私からも早速ですが川本参考人に是非お尋ねしたいと思います。
 薬害エイズで私はHIVに感染していることで、やっぱり差別を受けてきた当事者として、是非、川本参考人が論文で引用されています、かつてハンセン病やエイズなど感染症対策の分野で、感染に対する社会的な不安や恐怖の感情が病と闘う当事者への強い偏見と差別を生み出し、合理的な対策の遂行を困難にしてきた、その苦い経験を思い出してほしいとの見解を先生も同意されておりますが、私も強く同意するところです。感染症蔓延の際の弱者保護、パンデミック時の人権侵害が余りにも論じられていないと先生は論文で述べられています。
 今回の福島東京電力原子力発電所事故の際の福島の方への差別と同様ですが、そうならないためには法学的にどのような配慮が求められるでしょうか。また、この薬害エイズは製薬会社や官僚による情報の隠蔽や癒着が原因でしたが、パンデミックの際の情報の公開についてどうあるべきかを法学的見地から御意見をお願いいたします。
○参考人(川本哲郎君)  御質問ありがとうございます。
 難しい問題で、まず福島はやっぱり先ほど申し上げたとおり、風評被害そのものが非常に難しいわけですね。それで、その研究自体もそれほど活発ではないと。だから、もうちょっとその風評被害のメカニズムとかその防止策とか、そういうものの研究から始めていかないといけないなというふうに思っております。ただ私、本当に残念だったのは、O157とか、何回もあるのに、全く忘れられてしまって出てこないというのではちょっとひど過ぎるというふうに思っているところです。
 そして、その次の情報公開に関しての御質問ですけれども、これも、今の私の感想でいくと、やはりコンプライアンス、コンプライアンスというのは法令遵守というふうに訳されているんですけれども、どうもこれは不十分で、法令遵守というと法律さえ守っていればいいみたいなイメージがありますが、ですからエシックスコントロールという、倫理管理というふうに言うわけですけれども、そちらの方が実態を表していると思いますが、そういう企業内の倫理とかをどうやって確立していくのかというのが今の情報公開に何かヒントになればというぐらいしか思い付きません。申し訳ありません。
○川田龍平君  ありがとうございます。
 また、川本参考人は、先ほども述べられていましたけれども、論文で、学校閉鎖についてその弊害も存在する一方、学校閉鎖の効果については否定的な見解もあることを指摘されていますが、引き続き検証を行い、ある程度確定的な結論が得られるまでは安易な行動制限は慎むべきではなかろうかとも述べられています。
 この考えに関連して伺いますが、憲法学では、憲法上の人権であっても公共の利益や他者の人権との衝突を避けるために一定の制限を受けるとされていますが、人権を制限する場合には、その目的を達成するために必要最小限の制限に留めおかなければならないという考え方が基本になっていると伺っております。この必要最小限ということを考えると、その人権制限が目的の達成にとって効果がない場合にはそもそもそのような制限をする必要はないということになりますので、必要最小限という要請の中には、その人権制限には効果がなければならないという意味が含まれると考えてよろしいでしょうか。
○参考人(川本哲郎君)  その問題に関しましては、私、先ほど申し上げたとおり、精神医療なんかを考えると、他害のおそれ、つまり、伝染病にかかってそれを人にうつす、その可能性の確率というものが一つ問題なんだろうと思います。したがって、精神医療で問題になるのは、精神障害にかかっておられる方が本当にそんなに危険なのかという判断が難しいわけですね。それに比べると感染症は、かかっておられるかどうかというのは判断は確実だと思うのですが、先ほども出ていましたように、ウイルスのパターンとかいろいろあるわけなので、場合によったら無駄な拘束をしているということはあるかもしれないと。
 ただ、これは、私はずっと前から勉強してきて思うのは、かといってかなり引いてしまうと、先ほど尾身先生のお話にあったように、チャンスを逃してしまうということもあり得るわけですね。だから、思い切り網を掛けて、かなり無駄であったなと思うぐらいの方がいいのかも分からないというところがあるので、かなりこれは政治的に難しい判断を迫られる問題なんだろうと思います。
 したがって、そのときにはベストと思われる政策を決定して、後でどんどん検証していってそれを生かしていくというのが必要ではないかと思います。
○川田龍平君  この法案には、学校閉鎖のほかにも様々な人権制限を定めていますが、政府の新型インフルエンザ対策には否定的見解を示されている方も少なくありませんが、川本参考人のお話からしますと、この対策の効果について、賛否双方の意見を踏まえて十分な検証を経た上での人権制限を行うべきということもあると思いますが、医学だけでなく法律学の立場から是非求められていると解したんですが、その意見について是非お述べいただければと思います。
○参考人(川本哲郎君)  まず一つ、学校閉鎖について私が、学校閉鎖の問題自体も重要なんですけれども、それよりも私が法律学者として危惧したのは、議論がされていないということだったんですね。結論は、議論した上で、やはり学校閉鎖が有効なので、しかも大規模にやるべしということになれば、それはそれで結構だと思うんですけれども、全くそういう議論をせずに、特にそういうことを法律家の方で余り調べていないと、お医者さんの方でそういうデータを出されて、それがエビデンスに基づいているというんならもう全国民が信用しているみたいな、そういう状況はやはり改めていただきたいなと思います。
○川田龍平君  最後に、この新型インフルエンザ等緊急事態宣言の要件は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態とされ、具体的要件は政令に委任し、法律上は抽象的な定めがなされるにとどまっています。
 過剰な人権制限とならないようにしなければならないと考えますが、この点について、具体的にどういうことが必要と考えるか。この緊急事態宣言は事後報告で足りるとありますが、これだと十分な検証のための審議にはつながらず、事前の承認は無理としても、事後の承認が必要と規定すべきではないかと考えますが、川本参考人の意見を伺います。また、法案では、制限の期間が二年、延長には国会の報告は不要となっていますが、短く定めて、延長には国会の承認を求めるという規定にするという慎重さが必要と思いますが、参考人の考えはいかがでしょうか。
○参考人(川本哲郎君)  やはり法律家の立場とすれば、ここはまた最終的には政治的決断ですから難しいとは思いますが、法律家の立場でいうと、やはりプロセス、手続ですね、そういうものをしっかり定めていただかないと問題は出てくるだろうというふうに考えております。
○川田龍平君  ありがとうございました。