川田 龍平 オフィシャルブログ

3月27日(火)の厚生労働委員会における、労働者派遣法改正についての質疑の議事録を掲載いたします。

※未定稿文ですので一部変更の可能性がございます。


○川田龍平君  みんなの党の川田龍平です。
 労働者派遣法の修正案は、昨年の十一月中旬に、民主党と自民党及び公明党との間の協議において作成されたと聞いておりますが、ここで修正案の策定過程について伺います。そこが見えないからこそ、国民そして労働者が不信を持っているのです。これは民主主義の問題ですので、真摯な御回答をお願いいたします。
 まず、民主党が原案から修正しようと検討した時期、修正検討に至る経緯を詳細に御報告ください。また、その際に、これだけは譲れないという条件など、民主党厚生労働部門会議などで野党との交渉の前提となる修正提案について重点を置いた論点を併せてお示しください。
○衆議院議員(岡本充功君)  多岐にわたる御質問をいただきました。もしちょっと答弁漏れがあったら、後でもう一回聞いてください。
 民主党としては、二十二年四月に労働者派遣法改正法提出以来、成立をするべく願ってきたわけでありますが、現実的には二十二年の四月以降この法案の質疑が衆議院では行われたものの、なかなか可決するという状況にならなかったと。そうこうしているうちにねじれ国会になって、なかなか審議ができない状況が続いていると。
 こういう状況の中、昨年になりまして、御存じのように東日本大震災もあり、急激な円高だとか欧州の債務危機だとか、改正案を取り巻く環境が変化をする中で、やっぱりこれの中でも重要な部分を通すべきじゃないかと。全体で、パッケージでそのまま無修正で行って通るということがあればなおさらいいことでありますけれども、そうでなくても通すべきところを通そうじゃないかと、こういう考えの下、昨年の秋以降、自民党、公明党さんとの協議が進んできたという中であります。
 もちろん、労働者の保護規定をできる限り維持するべきだという考えもあり、御存じのように、例えば日雇派遣の原則禁止だとか労働契約申込みみなし制度の創設など、そういう様々な制度を何とか残したいという思いを持ちながら修正をしてきて、結果として現段の修正案ができてきたところでございます。
 そういう意味では、今お話がありましたように、国民の皆さんから全てがオープンで見えている議論ではなかったところはありますが、私たちとしては進めるべきものがまとまったと、このように理解をしているところであります。
○川田龍平君  次に、自民党など野党側としては、民主党に対し、いつごろからどのような論拠で、どのような論点を重視して修正を要望し、議論したのかをお示しください。
○衆議院議員(田村憲久君)  ちょっと思い返してみますけれども、たしか去年の十一月ごろであったような気がするんですけれども、民主党さんの方から、もう五回ほど継続審議になっていて非常に不安定な状況である、この労働者派遣法を何とか、自民党さん、公明党さん、条件いろいろと修正も含めて議論をさせていただきたいので考え方を是非とも聞かせていただきたいというお話があったやに記憶をいたしております。
 もとより、国会に出たまま、これ、この法案、廃案にできないんですね。というのは、衆議院は与党の方が多いわけでございまして、ずっと継続でこれかかってくるわけでございますので、途中不測の事態が起これば廃案ということもあるんでありましょうけれども、そういう状況じゃない形でずっと続いてまいりまして、こういう非常に不安定な状況があると派遣労働をされておられる方々も非常に不安で仕方がない。もしかしたら、我々が原則禁止になれば、もう法律がスタートしたときにはいなくなっちゃうかも分からないというようなこともあって、また使われておられる企業の方も、派遣というものを果たしてこれからも一つの労働力の大きな役割として担っていただいていっていいものかどうか分からないということで、とにかく何とか先が見える状況をというお声をいろんな方々から我々もいただいておったのも事実でございます。
 そこで、元々我々は与党のときに考え方を公明党さんとともにまとめさせていただいておりまして、法律も国会に提出をさせていただいておりましたから、もうそれにのっとって、これならばまあいいですよということでお話をさせていただいた。
 その中で、製造業の派遣労働の原則禁止、それから登録型派遣、これの原則禁止、こういうものは外してもらわなきゃいけませんね、とともに、そのみなし制度自体は我々は想定していなかったものでありますし、その後、先ほど来出ております適正化プランによりましての専門二十六業務、それから偽装請負等々の問題で三十七号告示、こういう問題が出てまいってきておりまして、非常に、実際現場で急に当局がやってきてこれ駄目だよなんという行為になったときにこのみなし制度とどういう関係になるのかと考えると、これはもうとてもじゃないけれども不安で仕方がないというお声もお聞きをしたりでありますとか、いろんなことがございましたので、このみなし制度をすぐにスタートしてもらうとやっぱりちょっとこれは現場が混乱するんじゃないかというようなこともございまして、そういうものに関しましてももうちょっと慎重な取扱いを願いたい等々の意見を出させていただいて、それで修正に応じていったという経緯でございます。
   〔理事梅村聡君退席、委員長着席〕
○川田龍平君  もう一つ、与野党の先生方に確認させていただきたいんですが、与野党とも、民主党、自民党、公明党以外の少数政党などとの協議はしたのでしょうか。しなかったとしたらどのような理由でしなかったのか、それぞれお答えください。
○衆議院議員(岡本充功君)  また私の方から話をさせていただきますと、与党としてこの法案を通したいという思いがあって、そしてこの法案を修正をしてでも通すというお呼びかけをしたのはまさに与党である我々であり、それに応じていただいたということであって、自民党、公明党さんから他の会派にという話ではなくて、私たちが呼びかけたと、こういう姿であります。
 そういう意味でいいますと、なぜ自民党、公明党さんにお声かけをしたかといえば、先ほどお話もありましたけれども、自民党、公明党さんは一定の考え方をお示しをされている中、この国会における会派でいうと議席の多い会派でありますので、そこにお声かけをするというのはある意味当然我々の中で考える選択肢としてはあるのかなと、こういうふうに思っております。
○衆議院議員(田村憲久君)  みんなの党さん、また共産党さん、社民党さんを含め、大変そういう意味では申し訳なくは思うんですが、元々我々は政権与党のときに公明党とともに法案を出した経緯がございます。ですから、その考え方にのっとって、こういう条件ならば法案の修正に応じますよという話でございましたので、他の政党にお声かけをされるのはやっぱり法律を通す役割がある政権与党の役割であろうなと思いまして、あえて我々の方から他の野党さんに、考え方もいろいろ違うところもございまして、お声かけをするというなかなかそこまでは一歩が踏み出せなかったということでございまして、その点は申し訳なくも思いますが、御理解も賜れればというふうに思います。
○川田龍平君  岡本先生、田村先生、お忙しい中、ありがとうございました。
 続いて、政府に対して質問を続けさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 それで、先週金曜日に本会議において労働者派遣法改正について質問をさせていただき、小宮山大臣に答弁いただきました。小宮山大臣は以前から禁煙についても大変積極的で、与党として、立場は違いますが、大いに共感する点もあります。また、労働問題、特に女性の労働問題についても、御自身が三人のお子様を育てながらそういうことを続けられた当事者でもあり、またかねてより働く女性たちの立場に立っての政治活動というものを拝見して、尊敬を申し上げておりました。
 しかし、先日の答弁には失望しました。ただ官僚の書いた作文をNHKのアナウンサーらしくよどみなく読むだけではないですか。政権交代を叫び、華々しいマニフェストを掲げながら、このていたらくはどうですか。御自身で内心じくじたるものがあるのではないですか。派遣前の経験から、また驚くほど進んでいる女性の貧困、子供の貧困の問題から一体何を学んだのでしょうか。妥協に妥協を重ねてこのていたらく、これでは自民党とどこが違うんでしょうか。民主党の政権交代で実現しなかったビジョンとは、結局、自民党政治の焼き直しではないですか。
 自殺対策についてのお答えもそうでした。国会での御審議をと言うばかりで、具体的な展望が見えません。思い出すのもいとわしいのですが、鳩山元総理は命を守りたいと演説をされました。言葉が軽くなったと言われて久しいですが、民主党の言葉の軽さには憤りを通り越して絶望感を抱きます。
 ヨーロッパ、EUでは、ソーシャルエクスクルージョン、つまり社会的排除が問題となって、ソーシャルインクルージョン、つまり社会的内包を課題としております。ヨーロッパは七〇年代から失業問題を抱えた失業先進国であります。労働市場から切り離され、社会的なつながりを失ってアウトサイダーとなってしまった人たちのことが社会の大きな問題になっています。実は、会社が福祉を肩代わりしてきた日本こそこの問題が大きいのです。仕事にあぶれてしまう人たちは、社会とのつながりにもあぶれてしまいます。無縁社会が言われて久しいですが、仕事がなければ人との縁もなくなってしまう。それは、すなわち何の支援もないことを意味する無縁社会なのです。
 いわゆる先進国は、どの国もかつてのような経済成長が残念ながら今のところ期待できていません。学校を出て、一度面接をして採用されたら最後、年を取るまで辞めさえしなければ会社が、そして職場が生活を面倒見てくれる、そんな時代はもう望むことはできません。そしてまた、一つの会社でじっと我慢をする、それが望ましいことでもありません。人の能力は無限です。様々な分野や舞台でチャレンジすることを応援しなければ、新しい産業も生まれませんし、イノベーション、技術革新もありません。
 就職した年がたまたま不況で全く就職ができない、あるいは経営不振で失業してしまった、たったそれだけのことでも人間は全てを失うわけにはいかないのです。人は何度も再起して再度挑戦できる、そういう社会でなければなりません。一度失敗したら二度と元に戻れず、人生に絶望して精神を病んで自殺してしまうような社会は、どれだけ人の命や可能性を大切にしない無駄な社会でしょうか。国にとって人は最大の財産です。教育費や医療費を掛け、幸せに生きられる日本社会を築いていい人を育てる、それが国の使命、責務だと思います。それなのに自殺に追い込まれる社会は、本質的な対策をしないまま放置し、一人一人の命を、未来をつくる一人一人を失っているのです。
 少子化なればこそ、少ない優秀な人材で、人で成り立たせていかなければなりません。戦争もないのに、十五年間で中都市の一つ、四十五万人の人口がなくなってしまう国、一度も教育を受けたことのない子供たちが大勢いる世界の中で、教育を受けられても毎日百人が自ら死を選ぶような国で、少子化や労働人口の減少を嘆くのは余りにも滑稽です。そしてまた、産んだ子供たち、若者たちを大切にしない国で誰が子供を産み育てたいと思うでしょうか。命を大切にしない国で年金改革も税制改革もお話になりません。
 例えばフィンランドでは、自殺は本人の問題ではなく社会問題だとして取り組み、見事に減らしています。そうした意欲が民主党政権には感じられません。この国をどうしたいのかというビジョンが見えないのです。そもそも、派遣を始めとして非正規雇用の問題、雇用の不安定化の問題の根本をどうとらえるのかということがないのです。派遣法が規制緩和優先で拡大解釈され、たくさんの人が非正社員として別扱いの不安定な状況に苦しんでいるという世論が大きくなったから改正しよう、規制しよう、しかし、不景気の中で財界や他党が反対するから規制を甘くしよう、三年後にしよう、そういうそのときそのときの場当たり的な対応しかないから、こんな法律案になるんです。
 それはこれまでのマニフェストでも同様です。規制を作ったおかげでより巧妙に逃げ道を見付けられるようになり、かえって悪くなる。実際、リアルに法律でどう変えるのかを精査しようとしているのかが甚だ疑問だと言わざるを得ません。
 先日の本会議の答弁では、平成二十二年四月の国会提出以来、六度の継続審議となりとおっしゃいましたが、この派遣法が審議されずにここまで来てしまったことに対し、大臣はどんな思いでいらっしゃるでしょうか。官僚がパソコンで書いた原稿を読むのではなく、四百字詰めの原稿用紙に鉛筆で書いた、小宮山さんの感情がこもったお言葉でお答えください。
○委員長(小林正夫君)  大臣の答弁の前に、岡本君と田村君については退席されて結構です。
○国務大臣(小宮山洋子君)  そうですね、本会議は時間がそんなに限られていましたので、要点をお話をしたので心が通わなかったということはおわびを申し上げたいと思います。
 それで、今、この派遣法のことを始め、子供の貧困とか自殺、いろいろな問題をおっしゃいました。
 それで、民主党が政権を担ってから、いろいろと、理想は高くいろいろなことを訴えてきましたし、いろいろやりたいという意欲はみんな持っていましたけれども、例えば、財源の見通しが甘かったりとか、なかなかねじれ国会の中で動かなかったり、そうしたじくじたる思いはみんな持っているというふうに思います。ただ、その中で一つ一つやはりできることを、私たちが思い描いたことをほかの党の方とも共有をしながら実現をしていきたいということで、一生懸命やっていることは間違いないんです。そこのところがまだ分かっていただけるだけの形が出ていないというのは大変残念だと思いますけど。
 この派遣法につきましても、先ほど申し上げたように、私もメディアで仕事をしていたときから、この十二業種でバラ色の働き方ができると、自分の時間と能力を生かしてすばらしい働き方だとうたわれたときからずっと追っかけてきていますし、派遣労働者の方の弁護団の皆さん、一人一人の派遣労働者の方からもいろいろと御意見も伺ってきているので、私はかなりこの実態は把握をしているつもりです。
 そういう中では、政府案で労働者の保護をもっとするということを実現したいと思ってやってきましたけれども、やはり、ねじれ国会のせいだけにするわけじゃありませんけど、こういう中で、ずっと継続で一歩も進まないということは何とか脱したいと。そうなりますと、与党と野党とが協議をして修正をするとすれば、やはり与党の側が六割、七割、場合によっては八割譲って成立をさせても、そこの二割の部分で守られるところがあれば、半歩でも一歩でも前に進みたいと、そういう思いでやっているところなんですね。
 おっしゃいました子供の貧困とか女性の労働とか自殺の問題、あと御意見はいろいろあると思いますけれども、たばこの問題も川田議員とは一緒にやってまいりましたけれども、いろいろ実現したいことは当然あります。その中で、やはり現実の中で一歩でも半歩でも進められるように引き続きやっていきたいと、そのように考えています。
○川田龍平君  私たちに必要なのは、労働生産性と関係なく企業や組織に肩代わりさせてきた社会保障を政府がきちんとして労働生産性を図るということ、そして適正で公平で安心して切磋琢磨できる仕事の条件を誰もアウトサイダーにすることなく保障していくことです。不合理で不公平で、チャレンジしなくても何とかなった仕事は、もう今は誰にとってもあり得ないのです。
 しかし、だからといって、その流動性が不安定さと直結するような選択肢しかなかったら、それは選択肢とは言えません。正規労働者は毎年自動的に収入が上がっているのに、時給千円にも満たないバイトが能力給と称され、評価されながら働かされています。登録はしたものの、いつ入るか分からない仕事で、生活保護にも満たないような収入をやりくりして毎日を不安に暮らしています。短期雇用の繰り返しで、毎年毎年雇い止めの恐怖と闘いながら、何とか解雇されないように、短距離競走の速度で職業生活を心をすり減らして送っています。そうした日々を暮らす人には、無理な労働がたたって精神を病み、生活保護への道はリアルに見えても、将来でなく今を安心して楽しめる生活が送れる労働の機会は永遠に回ってこないのです。
 この不合理な格差は何でしょうか。同じ日本国民なのに、十八歳や二十二歳のときにたった一回のチャンスで、そのときの採用状況に左右されて振り分けられたインサイダーとアウトサイダーで一生が変わってしまう、こんな不合理があっていいのでしょうか。そして、その後の人生を左右するからこそ、大学生たちは就職活動に必死で、勉強する暇もなく、大切な若い時期を企業回りで空費し、自己否定の日々を送る残酷な国となってしまっています。
 最近では、やっとのことで正規労働者になれたとしても、名ばかり正規で、月給はもらえても全てサービス残業。むしろ時給分が出るアルバイトの方が高給であるような場合もあり、先日、過労自殺が認められましたが、若い女性が亡くなるという飲食業のチェーンなどにもあるように、ひどい状況もあります。安楽な年功賃金の正規の仕事も、実際は正社員が非正規の労働条件以下でただ働きを強要され、辞める自由も奪われた奴隷のような名ばかり管理職になっているサービス残業の正社員も間違っていますし、毎日が転落との闘いである非正規の仕事も、いずれも働き方として間違っています。
 私たちは、労働者に区分けをした派遣法自身、必要がないという立場です。労働法をきちんと守って、働く皆同じ労働者同士で同一労働同一賃金で、老若男女、その属するものは何にもよらず、行う行動によって賃金が支払われるというシンプルな分配がされれば良いと思います。パートだから、バイトだから、派遣だからということはその人と一切関係がないのです。実際、非正規雇用が家計補助者だけではなく主たる家計の担い手にも増加している状況下で、正社員との格差をどうとらえるのか。厚労省の一昨年の職業形態の多様化に関する総合調査では、正社員以外の労働者で主な収入源が自分と回答したのが四九・一%なのです。
 労働者はひとしく、例外なく労働法で守られるべきで、屋上屋を架すような労働者保護の法律を幾つも作る必要はありません。派遣法もパート法も結局労働官僚の天下り先としか思えません。複雑な法律は要りません。官僚をのさばらせるだけです。労働基準法第四条の同一労働同一賃金に、性別だけではなく雇用形態による差別も禁止し、また同一価値労働同一賃金を入れ込むだけでよいのです。
 EUでソーシャルインクルージョンが言われたのは、このインサイダーの既得権益が大きいためでもありました。既存の雇用が守られ過ぎて、採用制限がされ、失業者が減らないのです。まさに岡田副総理が提起した国家公務員の採用大幅抑制と同じ道です。今の守られた労働条件で狭き門にすれば、ますますエリートになり、賄い切れない仕事は短期雇用の非常勤職員に押し付けられ、不安定雇用を更に増やし、官製ワーキングプアを生み出しているのです。政府自らが社会的排除をつくり出している。もうこんなばかなイタチごっこはいいかげんにしなければなりません。そんなことで時間も資源も無駄にしている場合ではありません。インサイダーの既得権益を広く公平に開放しなければなりません。不当に損する人をなくすためには不当に得をする人の分を回さなければならない、それが民主主義です。女性も男性も同じくらいの給与にすべきです。
 日本の会社では、同じ仕事をしていても、大きい会社では収益が大きいと賃金が高くなり、規模の小さい会社では安いです。これではいつまでたっても同一労働同一賃金にはなりません。その人がどの会社に入るのかは運もあります。合わなければ変えればよいのです。どの会社でも同じ賃金、それは企業にとっては過酷です。労働者の賃金を切り下げることで収益を上げることができないからです。うちは小さいから給料安くても我慢してというのは通用しません。同じハンディがなければ本当の意味の経営力を発揮することができないのです。労働者を使い捨てて、過労死させて長らえるような企業が大きくなっていくようでは、この国の発展は望めません。
 みんなの党は、これまでの既得権益に縛られることなく、誰かにしわ寄せをして誰かが利益を得るのではなく、全ての人が皆チャレンジできる機会、権利を持った上で、平等に切磋琢磨できる社会にすることを目指しています。正規であろうが非正規であろうが、男性であろうが女性であろうが、何のかかわりもなく、お互い競い合い、良い仕事をすることを幸福として感じられる社会を目指しています。国民の幸せなくして何のための経済発展でしょう。
 その観点から、今回の継ぎはぎの対症療法の派遣法の改正には反対です。北欧などで機能しているフレキシキュリティーが雇用の安定性と柔軟性を併せ持ち、平等性を担保するモデルとしてあるとは思いませんか。
 小宮山大臣は、正社員と比較して年齢による賃金の上昇度合いが低い実態にあるという現状認識がおありになり、派遣元事業主に対し、派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ賃金の決定などを行うよう配慮することを義務付けているとお答えになっていましたが、実際、企業が正社員の給与体系に派遣社員を合わせるとお考えでしょうか。それなら、なぜ企業はわざわざ派遣会社を利用するのでしょうか。
 年齢が生産性と関連しない、単に子供の教育費と住居に生活費がかさむ日本の社会のシステムから引き起こされる現状の、合わせただけの給与体系です。同一労働同一賃金の原則が日本で常に無視されてきたのは、この年功的な日本の賃金慣習と関連してきたことを旧労働省の役人は知っているはずです。まさにこうした、かつては合理性を持っていたかもしれない、時代や社会に合わせてできた正規の賃金体系こそが企業にとって重荷になっているのです。こうした旧来の給与体系が変わらないからこそ、非正規が増えているという問題を立てるべきでしょう。
 属人的な給与をやめ、仕事に応じた給与にしない限り、同一労働同一賃金は達成できません。そして、それを怠ってきたからこそ、公務員を含め、日本の組織は人件費の重圧に苦しみ、急速な収益の減少、そして非正規化をたどっているのです。
 派遣を不合理な正規の賃金に合わせようとしても無理で、もしそれが万一できたとしても、そして更に別の形の非正規雇用が生み出されただけになるでしょう。
 正社員の職務と派遣の職務を厳密に査定すべきなのです。現実に、派遣社員よりも甚だしく能力のみならず職務自身の質が落ちるにもかかわらず、正社員が派遣の何倍ももらっている。派遣社員の不当な低賃金によって正社員の不当な高賃金を賄っている不合理な実態、つまり正社員の男性、つまり稼ぎ主の働き方も同時に変えなければならないと思います。賃金は職務によって決定され、それによって、男女のみならず、雇用形態による平等を図るように転換し、改善すべきなのです。
 津田政務官、いかがでしょうか。
○大臣政務官(津田弥太郎君)  川田委員におかれましては、非正規で働く労働者の様々な課題について、みんなの党の中にあられながら大変御熱心に取り組んでいただいておりますことに、まずもって感謝を申し上げたいというふうに思っております。
 今、るる様々な観点から御指摘をいただきました。ただ、正社員が派遣の何倍ももらっているという御指摘もあるわけでございますが、果たして現実がそのような状況にあるのかというと、残念ながらここ数年の労働者の収入は全てマイナスになっているという状況もあるわけでございまして、その辺については丁寧な検証をしていきたいな、そんなふうに思っているところでございます。
 この派遣労働者の賃金につきまして、正社員と比較して年齢による賃金の上昇度合い、これが低い実態にある、正社員との格差の存在が今御指摘をいただいたわけでございます。このことにつきましては、この改正法案において、派遣元事業主に対し、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又はその派遣労働者の職務の内容等を勘案し、賃金を決定するよう配慮しなければならないということにしているわけでございます。
 この労働者派遣法改正案が成立した際には、まずは、改正案の規定に従って派遣労働者と派遣先の労働者の均衡が確保されるよう、派遣元事業主に対する改正案の周知等に私どもは努めることにしているわけでございます。
○川田龍平君  さて、今回のこの派遣法ですが、二〇〇八年、リーマン・ショックで製造業の派遣労働者を中心に大量解雇がなされ、行き場を失った元派遣労働者たちへの越冬支援の派遣村が日比谷に出現したのを契機とし、製造業派遣など男性に広がる不安定雇用が社会問題化し、世論が盛り上がりました。しかし、元々、製造業の派遣がひどい目に遭っているからそれを禁止しろということはかなり乱暴な議論ではないでしょうか。
 需要があって、また仕事を求める人がいるので成り立っているわけです。それを無理やり禁止したところで、安く使いたい製造業が正社員を雇うことは考えられず、むしろ雇用を回避するでしょう。法律で押し付けられても、みすみす損をするようなことを会社はしません。むしろ、派遣先会社ではなく、派遣元の会社が本来業務である雇用を保障する方向にするべきではないでしょうか。
 きちんと派遣労働者の生活を保障し、派遣先の会社のニーズに合わせて派遣労働者を教育する機能をもっと充実するべきです。税金を豊富に投資した成人労働者に物価の安い外国人と争い合わせるような仕事しか与えていないのは愚の骨頂です。労働者を教育すれば付加価値が生まれ、日本国の労働の質や生産性も高くなるのです。派遣会社は、景気の好況を当てにしなくても、必要とされる人材を見極め、それを独自に育成することで市場を見付けることはできるでしょうし、それこそが企業の空想力でしょう。人が足りないときは当然仕事の単価は高くなるのですから、派遣元は潤います。逆に、人手が余って派遣の時給が値崩れしたときは、派遣元が変えさせる必要があるのではないでしょうか。
 こうした信頼性ある事業を展開してこそ、派遣先の企業と対等な関係で自分が雇用している派遣労働者の権利を守ることができます。派遣労働者を派遣会社の常勤社員とするなら、社会保障や派遣先開拓、教育をきちんとし、三割、四割のマージンは正当な収入になります。派遣業界のイメージは向上し、業界全体の健全な発展になり、また国益にもなるでしょう。派遣労働者を商品とするならば、安心できる労働条件と適切な教育があってこそ良い戦力ある労働力商品となるはずで、今までのような安かろう悪かろう、だから規制しようでは、網を抜けるための悪知恵が発達するだけです。
 社会保障や仕事がないときの保障をしない形態の派遣は、マージンを低めに設定し時給を高くすることです。職安法で設置された家政婦紹介所は、現に今もそうした形で家政婦を派遣しています。そうでないと、派遣会社は手配師にすぎないし、中間搾取と見分けが付かなくなります。どこかの派遣会社のように、毎日人を集めては遠い場所に連れていき、安全衛生が守られないで、手袋、マスクも自分持ち、安い給料からいろんな名目で天引きする貧困ビジネスになり果て、とんでもない企業活動になるわけです。
 ここで聞きたいのは次のことです。
 まず第一に、製造業派遣を禁止するというより、派遣元会社が本来業務である雇用を保障する方向にすべきではないでしょうか。次に、派遣先の会社のニーズを合わせて派遣労働者を教育する機能をもっと充実し、安全衛生なども含め、民間がうまくいくように政府は指導、助言すべきじゃないでしょうか。津田政務官に伺います。
○大臣政務官(津田弥太郎君)  平成二十年秋の雇用情勢の急激な悪化に伴って社会問題化しましたいわゆる派遣切りにおいて、労働者派遣については雇用の不安定さが、製造業派遣についてはさらに技能伝承の問題が指摘されており、これらの問題に的確に対応した措置を講ずるため、政府原案では製造業務については常時雇用する労働者を派遣する場合を除き原則禁止することとしていたわけでございます。
 しかし、政府案が六度の継続審議となり、大震災、円高、欧州債務危機など、改正案をめぐる環境が大きく変化したことも踏まえ、登録型派遣と製造業務派遣の原則禁止を削除し、登録型派遣と製造業務派遣の在り方を検討事項とする旨の内容の修正が行われ、三月八日に衆議院を通過したところでございます。
 なお、修正案の改正案においても、政府原案と変わらず、派遣元及び派遣先は、労働者派遣契約の解除に当たって、新たな就業機会の確保や休業手当等の費用負担に関する措置等派遣労働者の雇用の安定を図るための必要な措置を盛り込んでいるわけでございます。
 また、今回の法改正によりまして、派遣元は派遣労働者の経験に応じた就業及び教育訓練の機会の確保等の措置をするよう努めなければならないということになるわけでございます。派遣元は派遣先に雇用される労働者との均衡を考慮しつつ、教育訓練の実施等の措置を講ずるよう配慮しなければならないということになるわけでございます。これによって、派遣労働者にとって技術、技能の蓄積に資するよう、計画的な教育訓練の実施や適切な就業先の確保が求められ、こうしたことを通じて派遣先のニーズも踏まえた教育訓練が実施されるものと考えております。
○川田龍平君  ありがとうございます。
 続けて、今回の改正法によりマージン率公表がなされますが、その計算方法がどうなるのかを御説明ください。
○政府参考人(生田正之君)  お答えいたします。
 改正法の第二十三条第五項によりまして、マージン率につきましては、派遣元の事業所ごとの派遣料金の平均額に占める賃金以外の額の平均額の割合というふうに定められてございます。
 ただ、その具体的な計算方法につきましては厚生労働省令で定めるということになってございまして、この内容につきまして、労働政策審議会の議論も踏まえつつ、現場が混乱しないように定めていきたいというふうに考えてございます。
○川田龍平君  ありがとうございます。
 それでは、マージン率の数値を今後の施策にどのように活用していくつもりなのでしょうか。特に、登録型派遣についてそれが下がる方向だと政府は考えているのでしょうか。津田政務官、お願いいたします。
○大臣政務官(津田弥太郎君)  先ほど川合議員からの質問にもございました。このマージン率の情報公開により必ずしもマージン率が下がるかどうか、これはやってみないと分からない点があると思います。
 先ほどの質疑にもありましたように、そのマージン率の中に、いわゆる労働福祉にかかわる、つまり、社会保険の加入でありますとか教育でありますとか、そういう費用が含まれている場合と含まれていない場合、これはやはり当然マージン率に違いが生じてくるわけでありまして、一概にマージン率が下がったからその会社はいい派遣会社だということになるかどうか。しかし、そういう情報ができるだけ多く伝わっていく、派遣労働者に伝わっていくという意味では第一歩になるのではなかろうか、そのように考えておるわけでございまして、このマージン率の情報公開により良質な派遣元事業主が選択されるようになるということが大事なことである、派遣労働者の待遇の改善がそれによって図られていく、こういうふうになっていくことを我々は考えているわけでございます。
 また、派遣先や派遣労働者がマージン率を参照することにより、派遣元事業主間の競争が促進をされる、つまり、同一条件でマージン率が算定をされるとすればやはりそこには当然競争が生まれるというふうに考えているわけでございまして、労働者派遣事業の運営の適正化も期待をできると考えております。
○川田龍平君  ところで、今回の東日本大震災の被災地において派遣会社が雇用を創出したと業界団体が報告しているようですが、確かに被災地において派遣会社の復興支援も含んだ雇用の紹介は、再建しようとする派遣先会社の体力を温存する方法ともなり得ます。もちろん、働く労働者にしわ寄せをしないことも最大限必要です。復旧や除染など危険な作業にかかわる労働者を調達する派遣会社にも、こうした網をしっかり掛けなければなりません。
 実際、その実態はどうなのでしょうか。被災地において派遣労働者になった方がその後安定した就労状況にあるのか、フォローアップを政府としてやっているのでしょうか。きちんと把握していないのならば、政府の責任で把握し、安定した雇用が得られているか、フォローアップすべきだと考えますが、津田政務官、いかがでしょうか。
○大臣政務官(津田弥太郎君)  恐縮です。
 社団法人日本人材派遣協会が調査したデータによりますと、被災地におきまして新規派遣就業開始人数が二万二千五百四十二名、新規派遣登録人数が二万九千四百九十七名ということでございまして、一定程度、この調査によれば進んでいるということがうかがえるわけでございます。
 政府として今指摘のような被災三県における今の数字を提供できる状況に今なっておりませんけれども、ただ、ハローワークの個々の報告をまとめますと、リーマン・ショック後のような大規模な派遣切りが起こったという事実は私どもとしては把握をしておりません。
 厚生労働省としましては、震災発生後の状況に即して事業主向けのパンフレット等を作成し、解雇、雇い止め等に関するルールの積極的な周知に努め、また昨年四月には大臣から直接、主要経済団体に対し、雇用の維持確保について要請をしているところでございます。
 今後とも、被災地で派遣労働者の雇用問題が発生した場合には、迅速、的確に対応していきたいと考えております。
○川田龍平君  そうした健全な派遣会社の育成のために、政府は業界と癒着するのではなく、インセンティブをつくる工夫が必要だと思います。三年ルールや、また労働契約法改正案では五年ルールというのを作るとも聞いていますし、これは単に三年や五年を超えずに失業するルールになりかねません。これまでも適正化として脱法行為を取り締まり、規制を強制的に強めてきましたし、裁判などの判決も出ました。しかし、実際それで正社員化の方向にはなっていません。当事者は解雇を恐れて言い出しにくいのです。弱い立場の違法派遣の派遣労働者に代わって労働基準局の徹底した指導が必要です。
 先日の本会議では、均等法以後の一般職が派遣に代替されたと指摘しました。専門二十六業務は、本来臨時、一時的な働き方である労働派遣の建前なのに、受入れの期間の制限を設けていません。特に五号業務、八号業務は、実際には専門性が希薄な業務です。加えて、業務対応、事務所内での庶務、雑務全般を担当するなど、これまで一般職の女性正社員が行ってきた一般事務の代替としての役割を果たしているのです。このような働き方は、派遣労働としての性質を要さず、正社員と極めて近似的な働き方です。
 派遣業界は、利益率の高い仕事を派遣先から得ることよりも、派遣先が自分のところの正社員にしたいと思うような人材を育成し、正社員化した件数を競うぐらいであってほしいです。
 岡山のアパレル業界でクロスカンパニーは、全員正社員で、売上げトップでグローバルな成功へ向かっている事例として有名ですが、そうした業界づくりを政府はすべきではないでしょうか。
 そもそも国でも地方自治体でも、三か月なり六か月なりの細切れの更新を恒常化させ、長年同一の人物を同一の事業所で同一の労働に従事させているのが多く見られます。民間でも同じことが行われるだけです。六か月より一日少ない緊急雇用対策などもあり、これは地方公務員法の問題でもありますが、先ほど言ったように、同一労働同一賃金で、正規、非正規の枠を取れば、このような変な雇用の在り方はなくなります。ただ、正規の特権がなくなるので、正規の役人は非常勤の公務員を均等待遇にしようとはしないでしょう。派遣元、派遣先に云々するより、自分たちの足下を見て、まず隗より始めよです。
 厚労省などでも、特に若い女性の派遣社員を採用しておられるようですが、もちろん法律遵守されていると思いますが、どうなのでしょうか。
 本来、派遣の働き方は、派遣先で切られても派遣元が保障し、新たな派遣先を見付けるのは派遣元の本質的な業務で、そのために登録している労働者をスキルアップして派遣先の求める労働力として供給できるように努めるのが派遣会社の業務であるはずです。そういったことができずに、派遣切り、労働者が路頭に迷うというようなことをしてしまっている派遣会社は淘汰しなければ、結局国にお鉢が回ってきます。労働者が労働市場にとどまれないような安い時給で、また失業保険ももらえない雇用保険のない労働者の失業となれば生活保護になり、国や自治体にとって膨大な経費となります。それを水際で止めようとすれば無縁社会のやみが迫ってきます。
 こうした実力のない派遣会社のために、労働者も政府も、そしてつまり国民も迷惑を被るようなことになる不条理、企業の怠慢の税金での収入が許されません。労働者を保護しようと思って会社を経営する人はいません。うまくもうかるために、いかに良質な労働者を確保するか、労働者の条件を良くすることで会社の経営がうまく回るか、そうしたインセンティブの下、日本型雇用関係、雇用慣行ができ上がり、高度経済成長期には功罪もありながらうまく機能してきました。低成長期は、こうした企業努力がもう望めない産業構造になっています。
 福祉国家が言われるのも、そうした機能不全の中で政府の役割が大きくなってきているからです。役割が大きいということが必ずしも大きい政府を指すわけではありません。
 今こそ、厚生労働省の出番であるはずです。安心と、安定と安心が効率と成長を生むということを信じて、知恵を絞って汗をかいていただきたい。この困難な時代だからこそ、安心と発展の回路を作り出すことこそが国の務めではないでしょうか。小宮山大臣には、こうした厚労省の役割に是非自覚的でいてほしいと思いますし、そのためには、まずこの法案審議に当たって、最後に、労働者はひとしく労働法で守られるべきだという労働行政の原点を確認し、さらに業界が自身の健全な発展を目指していけるような制度設計と啓蒙が必要であることについて、大臣の決意をお聞きして終わりたいと思います。
 ここにいる一人一人の労働者、派遣労働者の方々が、これからの日本に希望を持って生きていけるよう、当事者の視点から、大臣の決意表明をお願いいたします。
○国務大臣(小宮山洋子君)  委員のお考え、しっかりと聞かせていただきましたので、一人一人の労働者がしっかりと誇りを持って働けるように、またこの派遣の働き方も健全な形で発展をし、おっしゃるように、これはもう正規、非正規にかかわらず均等な待遇ができるような方向を目指して一歩を進めたいというふうに思っています。
○川田龍平君  ありがとうございました。