「災害時要援護者:障害者避難、支援強化へ 政府方針、ガイドライン見直し」 との見出しの記事が、2012年1月30日の毎日新聞に掲載されました。


災害時要援護者の避難支援ガイドラインとは、内閣府が障害者や高齢者、妊婦、乳幼児らを災害時要援護者になり得る人と位置づけたもので、ガイドラインは、要援護者の名簿作成や民生委員との連携などの全体計画と、一人一人の支援者や避難場所を決める個別計画を作るよう市町村に求めているものです。


今回の記事では、「自力で避難するのが難しい障害者や高齢者ら「災害時要援護者」について、政府は東日本大震災を受け、被害実態の調査と「避難支援ガイドライン」を見直すことを決めた」とあります。


私は、2011年5月18日の災害対策特別委員会や、同年の7月25日の予算委員会にてこのことについての質問をしており、今回のガイドラインの見直しは質問の成果の一つとして受け止めています。今後もいのちが最優先される社会の実現のため、一歩一歩進めてまいります。





以下質問の該当部分です。


2011年5月18日の災害対策特別委員会

○川田龍平君  次に、資料を配付しました、御参照いただきたいのはこの表ですが、東日本大震災聴覚障害者救援中央本部によりますと、宮城県の聾唖者関連団体の安否確認で、健聴者は死亡や未確認がゼロであるのに対し、聴覚障害者は七百五十人中十四名が死亡しております。これらの方々の、津波警報が聞こえずに亡くなった可能性が高いと思われますが、今国会において障害者基本法改正が審議される予定ですが、この第三条には、可能な限り、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることとありますが、この津波警報へのアクセスが、可能な限りという文言によって外に置かれてしまうということは許されません。今後このようなことがないようにお約束をいただきたいと思いますが、松本大臣、いかがでしょうか。


○国務大臣(松本龍君)  大変重要な指摘であります。この数字を見まして改めて思いました。
 私も情報の伝達というのは非常に重要なことだと思いまして、発災の三月十一日、危機管理センターから最初に指示をしたのは、津波情報、余震情報のための携帯ラジオを被災地に送ることでありました。
 今言われましたように、聴覚障害者にそれが届いていないということもありますけれども、そういう意味では、六年前の災害時要援護者の避難支援ガイドラインの中では、いわゆる名簿の作成を推進をしましょうと、市町村に避難支援計画の策定を急がせたところであります。また、要援護者への情報伝達につきましては、ガイドラインの中で、要援護者の特性を踏まえた適切な伝達手段を選択することとしておりまして、聴覚障害者については、インターネットそして電子メール、携帯メール、テレビ放送等の手段が例示をされております。
 昨年の三月三十一日の時点におきまして、ガイドラインに基づく市町村の全体計画の策定状況は六三・一%、個別計画の策定状況は七二・七%となっております。この数字を上げていかなければなりません。そういう意味では、ガイドラインに示された具体的な方策の徹底をこれからも図ってまいりたいと思います。


○川田龍平君  一刻も早く具体的な対策を講じてください。
 それでは次になりますが、視覚障害者は義援金などの申請書が来ても分からずに、ヘルパーも避難していて助けてもらえずに今困っています。視覚障害者の方への対応はどうなっていますでしょうか、厚労省にお伺いします。


○政府参考人(木倉敬之君)  お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、聴覚あるいは視覚に障害のある方につきましては、情報の取得、コミュニケーションを図るということに大変困難があるというふうに認識しております。
 今でも避難所におきましても、情報の伝達の仕方、支援の行い方を、聴覚障害の方であればプラカードやホワイトボードにきちんと示して一人一人にお声掛けを徹底をしてくださいというようなこともしております。それから、生活支援ニュースを我々も現地に出しております職員が個々人にお届けをしたりしておりますが、その中にもそのお声掛けの徹底あるいは相談先というものを明示をさせていただいております。
 さらに、先生この資料をお示しをいただいておりますように、聴覚や視覚の当事者団体の方々も中央の本部あるいは現地の本部をお開きいただきまして、地元の自治体やその県の当事者団体の方々とともに個々の安否確認それから情報伝達というようなことをお進めをいただいております。その中で、義援金等につきましても、その所在が確認された方には、例えば目の見えない方には点字訳をしてお届けをするというようなことも含めて自治体も取り組み始めていただいておるところでもございます。
 引き続き、個々の方々にきちんと情報が届くように丁寧に対応してまいりたいというふうに思っております。


2011年7月25日 予算委員会


○川田龍平君  是非、情報公開と説明責任を果たす総理の役割をしっかりやっていただきたいと思いますが、この菅総理が諮問した復興構想会議の提言、「悲惨のなかの希望」が六月二十五日に出されました。長く防災の第一人者であり、二〇〇六年に亡くなった廣井脩先生の遺志を継ぎ、阪神大震災以後、災害復興の研究所と学会を設立した関西学院大学災害復興制度研究所がこの提言に悲惨の中の絶望を見出していることを総理は御存じないでしょう。
 九万人余りが避難し、十四日現在一万七千七百九十八人がまだ避難所におり、瓦れきとヘドロにまみれながら居続けている被災者の方々が震災から四か月以上たってもたくさんいらっしゃるのに、復興構想七原則のどこにも被災者の生活再建という言葉が出てこないのです。日本経済復興のため、原発事故の原因究明の目的は国際的信認のためと大上段に構え、被災地はまるで新生日本のための実験場ではないですか。多くの被災者が生活再建のスケジュールが立たずに、すなわちこれらの人生の見通しが立たずに絶望している中で、どうして希望が見出せますでしょうか。被災者は復興の手段として利用されるだけですか。復興の主役は被災者自身ではないのですか。私たちの暮らしがどうなるかは被災者の生活がどれだけ良くなるかを見れば分かります。国民にとって何をなすか、なさないのか、それが凝縮されて被災地に見えるのです。
 総理は提言を踏まえ、基本方針の骨子をまとめたようですが、復興の主役である被災者をより重視した復興を進める必要があると考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(菅直人君)  私は、この復興構想会議、もちろん被災地の三県の知事もお入りをいただきましたし、また、いろいろな各方面の中でも、この東北にかかわりのある方、あるいは実際にも被災地に住んでおられる方も何人か入られております。
 この被災地のことについては、今御指摘のありましたか、その七原則の中でも、「被災地の広域性・多様性を踏まえつつ、地域・コミュニティ主体の復興を基本とする。」と。ここには、地域、コミュニティーという表現でありますけれども、つまりは、地域、コミュニティーの主体というのはその地域のまさに被災された皆さんでありますから、今、川田議員が言われた考え方は私はこの構想会議からの提言に相当色濃く含まれていると、そのように理解しております。

○川田龍平君  この提言や基本方針に盛り込まなきゃならないことは、それは被災者のために今すぐすべき課題を列挙し、実現のための費用算出をし、実現を阻む制度やシステムを指摘し、改善することです。
 各委員会で質疑をし、国会議員として最ももどかしかったのは、災害救援や復興、原子力災害について省庁間で責任のなすりつけ合いをしているさまでした。だから、課題解決をする主体がいつまでも見出せないのです。復興庁を一日も早くつくり、権限と財源と人材を与え、被災者が誇りを持てる地元からの復興計画を作らなければなりません。
 具体的な課題は各省庁にわたりますが、縦割りを超えて課題解決をするために、被災地岩手出身の復興担当大臣であり防災担当大臣でもある平野大臣に質問させていただきます。
 第一に、災害関連死です。
 阪神大震災の六千四百名を超える死者の一割は災害関連死です。五月十三日にNHKが被災地の病院などの聞き取り調査をした結果、五百名を超える災害関連死が報告されています。国が最低限するべき仕事、それは国民の命を守ること。それなのに、国は災害関連死の定義もしなければ調査もしない。災害大国日本で関連死を少しでも少なくするため、調査をしないでどうやって対策を立てるのか。
 第二に、被災者生活再建支援法を有効に活用することです。
 家屋被害認定は支援金額に直結するため、被害認定への不服申立てが多いです。大槌町では裁判の提訴を検討した方もおられると聞いています。裁判は行政にも被災者にも大きな負担です。中立的な第三者を交えた判定委員会を市町村で設置することを国が支援するなど、早急な対策が必要です。
 また、長期避難世帯の認定が、岩手県と宮城県ではなされていますが、福島県では一切なされていません。家屋やインフラが破壊されなくても、自然災害に起因する原子力災害で長期避難を強いられている人には、原子力災害の損害賠償だけでなく、災害への見舞金である支援法からも支援金を出す運用をすべきです。
 第三に、被災者のなりわいのために今すぐ必要なのは、仮設工場や仮設商店、仮設事務所の提供です。防災集団移転促進事業に商業施設が対象となっていない欠陥にも対処が必要です。
 第四に、当面の交通施策として、避難所や仮設住宅と市街地や病院などを巡るバスの運行に対し国が一部支援をするべきです。
 第五に、高齢者や障害者を始めとする災害時要援護者や県外避難者への支援体制を全国で統一した形でつくるべきです。
 個人情報保護を盾に安否確認すらできなかった状況を二度と繰り返さないために、災害時に情報を関係機関が共有できる形で再構築すべきです。平成十八年に災害時要援護者の避難支援ガイドができていますが、いまだに全国に周知徹底されていないのです。
 第六に、復興公営住宅の速やかな建設です。
 二年間の仮設住宅建設のために、整地や解体も含めれば五百万円以上掛かる形態だけでなく、仮設と同時並行で、地域ニーズに合った一戸建ての公営住宅建設促進させるような提案も声高に訴えるべきでした。早くそうした提言がされていれば、仮設住宅がお約束のもうお盆に間に合わない失態が避けられたかもしれません。
 時間の関係でこれだけにさせていただきますが、省庁の縦割りを排した形で、平野大臣、お答えください。

○国務大臣(平野達男君)  委員から六項目から七項目にわたっての御質問をいただきまして、いずれも大変重要な点の御質問だったというふうに思っております。若干時間をお借りすることになるかと思いますが、ちょっと丁寧、これ答弁をさせていただきたいというふうに思います。

○委員長(前田武志君)  時間がもう参っておりますので、簡潔にまとめてください。(発言する者あり)

○国務大臣(平野達男君)  まず、災害関連死、災害遺児に関する調査、調査と対策ということでございますけれども、災害関連死につきましては、もう御案内のとおり、法律上の定義はございません。ございませんけれども、災害弔慰金の支給等に関しましては、震災に伴う環境の激変などにより亡くなられた方も含めて幅広く判定が行われております。
 肺炎などの呼吸器疾患や心不全などの循環器疾患、エコノミークラス症候群などを未然に防ぐことがいわゆる災害関連死を減らすために重要だというふうに考えておりまして、厚労省が中心となりまして、高齢者等を中心に保健師等がそれぞれの疾病に応じた服薬指導などの対応を行っております。
 調査につきましては、阪神・淡路につきましては十年たってから調査をしたというような経過がございまして、いずれ、政府もこれきっちりどこかの時点で調査をしまして、その因果関係等々については把握することが大事だと考えております。
 災害遺児については御質問なかったと思いますので。
 それから、家屋被害認定、これは急がなければなりません。第三者委員会でございますが、これは自治事務でございまして、設置しようと思えばできます。できますが、今までのところ設置した実例はないということであります。
 それから、順番が逆になりますけれども、仮設工場、仮設店舗、これは今もう海江田大臣主導の下、中小企業庁がきちんとした制度を用意しまして、これの普及に努めております。かなりニーズがございまして、それに対応し切れないぐらいのニーズが出てきていますので、これに関しましては、しっかりとした体制をつくって、できるだけ需要に、ニーズに対応できるような形で持っていきたいというふうに思っています。
 それから、バスの運行、これは大変重要でございます。特にこれから仮設住宅に入る方がどんどん増えてきまして、避難生活も場合によっては一年、二年になりますので、その中での買物難民等々が出ないように、現行制度の今弾力的な運用で対応しようと思っていますが、これからの動き見ながら、対応しなくちゃならないところについてはしっかり対応してまいりたいというふうに思います。
 災害住宅につきましては、仮設住宅の建設と併せまして、今地域の中でどういう住宅がいいかということも検討が進みつつあります。こういったことをしっかり後押ししていきたいというふうに思っています。
 避難民の把握につきましても、これは、特に県外避難者につきましては、これは生活支援チームもしっかり取り組んだつもりなんですが、避難者の所在地の情報を本人から任意に御提供いただきまして、その情報を避難元や県や市町村に集約する全国避難者システムを構築しておりますので、これをしっかり活用しながらやっていきたいというふうに思っております。