夏休みも終わって二学期になり、休んでいたお習字の生徒達も顔を見せはじめた。そんな時、私はいつも子供に夏休みは何をしたか、どこへ行ったかと聞いた。
今は、親が忙しくてどこへも連れていってもらえない子や、家庭の事情でどこへもゆけない子もいて、そういうことを聞くのは批判されるだろうが、昔は平気で聞いていたものだ。
一年生のタッちゃんにも「どこへ行った?」と聞いた。タッちゃんはちょっと奥手の子で、黙ってジッとしていた。もう一度「どこへ行ったん?」と聞くと、しばらくしてから「うみへいった」と答えた。さらに「どこの海へいったん?」と聞くと黙ってしまった。
しまった、余計なことを聞いたと思ったが、助け船が出た。近くにいた六年生のチーちゃんが「おやじの海やな」と言った。タッちゃんはコックリうなずいた。そうか、「おやじの海」へ行ったか。私はチーちゃんの言葉に救われた。
それから一、二年後、書のグループ展に「おやじの海」を出品した。画仙紙(135×70センチ)に題を大きく書き、歌詞を三番まで書いた。私は「おやじの海」はあまり知らないが、忘れられない歌だ。














