台座に這い気張る海南島の石獅
─海口府城蘇公祠の石獅
(海南省海口市瓊山区府城鎮)






    海南島の石獅は、近年で福建系石獅で占められているのですが、しかし明代官僚墓の石獅が、まるで雷州半島の重鎮型の石狗であるかのような造形であったのは、海南島に独自の石獅のタイプがあったことを示します。

図1.石獅A(写真は、石獅A・BとC・Dが、どうももともとのペアのようです。)





    海南島タイプの石獅の、それとは違ったもう一つのタイプに、台座に這ってうずくまる、腹ばい姿勢の石獅のタイプが挙げられます。


図2.石獅C





    海口市の府城鎮(ふじょうちん)にある五公祠(ごこうし)と同じ敷地にある蘇公祠(そこうし)では、なんと石獅4体が山門左右におられました。これは元からあるものではなく、とこからか博物館の収蔵品を取りあえず山門脇に配置しているものだと思います。

 

図3.石獅A・B

図4.石獅C・D






    蘇公とは、唐宋八大家の1人である大文人の蘇軾(そしょく・1037-1101・号は東坡・とうば)のことで、紹聖四年(1097)に海南島に流されました。それで蘇東坡先生を記念しております。海南島北部の儋州市(たんしゅうし)中和鎮が、蘇東坡先生が暮らした場所で、こちらの蘇公祠が有名です(ただし石獅や石狗はいません)。

図5.石獅A・B背面(手前がB)

図6.石獅C・D背面(手前がC)




   この腹ばい型石獅、背中の分かれ毛もまるまるした線刻で、しかも尻尾がおむすび型で、上からみても、とても可愛いのです。高さも幅も長さも40㎝程度で、ぎゅっとしています。

図7.石獅C尾部





   表情は目玉が大きくて、口元が気ばっていて、上前歯と牙だけを出っ歯のようにつきだしています。石狗にも似ていますが、この四肢ともに低姿勢の踏ん張り方、雷州半島の石狗にはあまりなく、唐獅子らしさを感じます。また、向かって左の2頭は、顔が斜断ちのカタチで、田村愛明さんから、斜体(イタリック体)との評を頂きましたが、たしかに、そんな感じがぴったりします。

図8.蘇公祠山門と石獅の配置

   台座は前方中央に銭形を出し、左右を錦帯が波打って走り、これもまた動態あって美しいです。FB「狛犬さがし隊」の記事では、中森あゆみさんが大事な指摘をして頂きました。台座と獅子が一体で彫られている
という点は、注目すべきかと思います。

図9.現代海南石獅の例、瓊山中学校の石獅(向かって左・1993年・福建南部型・雌獅・仔獅付)



図10.現代海南石獅の例、瓊山中学校の石獅(向かって右・1993年・福建南部型・雄獅・サッカーボール)





   石獅も、墳墓などと同様、やはり他の地にはない造形をみせる海南島、嬉しい土地柄です。