棒頭神 (宣鼎撰『夜雨秋灯続録』巻三)
中州上河に余という物乞いの老婆がいた。夫に先立たれ、老いて、ひとり粗末な茅家に住んでいたが、食事にはしばしば事欠く有様であった。所が突如として豊かになったので、隣人はその由来は何処からかと、これを疑った。
ある日子供が老女の出掛ける隙に忍び入り、寝台で寝ていたが、トントンという音がしていったいどうしたことかと覗いてみると、頭も手足もない妖怪が、肉体が生えて突如壁から飛び出し、跳ねて出て行った。子供は叫んだが、老女は捉まえて、誰にもいうのではない。これは棒頭神というのだ、と告げ、食べ物を与え、神の怒りに触れるので口外するなといいつけた。
かつて風雨の夜に、老婆は悲嘆にくれて坐り呆け、死を待つばかりで、誰が骨を拾うのかと悲しんでいると、突然耳元でささやく声がした。「婆さんは哀れだ。私を祀ってくれるのならば、助けて差し上げよう」というのである。あたりを見回せども姿なく、夜になると壁から音がして、子供が見たように飛び出してきた。次の日に市で数文の銭を得たので、線香を買って祭祀すると、ささやき声がして、「怖がるな、悲しむな、寝床に三百の銭があるから、米を買って食べなさい」といい、言葉通りに銭がある。老婆は驚いて訊ねると、「吾は棒頭神である」「どんな術で神とおなりになったのでしょうか」「詩を築壁に詠じ、易を削木に占い、月府の千年の霊薬を搗き、長安万戸の秋を助く。天によるほどに傲り、地を掘るほどにも卑しむ。我が祖先は玉であり、裵航の姻につらなる。ただ、我は木材にして、孟姜女の恨みに寄せる。天帝の思し召しで、この村に寄寓することを許されたのである」。老婆はそれが人でないことを知り、香花と良酒で敬虔に敬い、祀った。
(つづく・全4回)