かつて建寧県の黄埠郷の封頭村は、一本の山道があり、その懸崖絶壁のあたりを棺材弄といった。ここでは珠のような、花のような美女がでて、旅人に背負わせるのだが、承知しようとしまいと、彼女をふりほどくことはできない。村の近くまで来ると、彼女はいつのまにかどこかに行ってしまう。

ある日、一人の大工が道具を背負ってこの山道をとおった。美女が微笑んで足を怪我をしたので負ぶってくれという。大工は断ったが、美女はいきなり背中に飛びついてしまい、振り落とそうにも振り落とせない。彼女を背負って一歩一歩歩くしかなかったが、背筋が寒く、板のように堅く、背ぶれば背ぶるほど重くなる。重くて我慢できず、息もできず、全身汗まみれだ。

村のあたりまで来て密かに振り帰ると、背負っていたのは美女どころか棺桶精である。しかしすぐにまた美女の姿に戻る。大工は曲尺を採りだして、彼女の腰に押しつけた。背中は突然軽くなった気がした。全身の力を込めて、棺の精を岩に振り落とした。棺の精は、大小二枚の板に割れたが、大工はもっていたのこぎりで、板の腰を切ると、どす黒い血が流れた。谷間に捨ててしまうと、川にしたがい流れていき、もはや美女は現れなくなった。のちにこのあたりを棺材弄というようになった。


車錫倫・孫叔瀛『中国精怪故事』上海文芸出版社、1995年(福建省建寧県・鍾瓊奎収集整理・黄佳休談)