宅仙 (『酔茶志怪』巻一)
商人の盛朝京がいうには、昔山右(山西省・太行山の左右で、山西省と山東省に分けて称する)で土地の有力者の王氏の邸宅に泊まった。朦朧と夜回りの拍子木が煩いと思ったが、奇異に感じた訳ではなかった。
ところが俄に遠くから近くに音が近づいているように感じ、だんだんと部屋の前まできて、突如部屋の中に入った。驚いて見やると、老人がおり、背の高さは三、四尺。手に小さな拍子木をもって、止むことなく叩いている。
やがて徐々に部屋の隅に移って消えた。一更(およそ二時間ごとに一更と数える)ばかりして再びぼんやりと壁の隅から姿を現し、拍子木も打ち鳴らされて、だんだんと扉の隙間まで行き、体ごと出て行った。
一夜に五回もの出入りがあり、一更ごとに起こることになっているようである。客は寝台に寝ていたが、老人は見ないかのようである。客もまた見ないかのように装い、煩わしくないかのように、しばらく耳をそばだてていた。次の日、主人に告げて、はじめてそれが宅仙というものであることがわかり、部屋を移ることにした。
その仙は人と一緒に家中に雑居しており、人のために家を守り、果たしてどちらが使われているのか。常に人家の盛衰を見ては、その中から増やしたり減らしたりして、ありとあらゆる余計なことをする。