棺桶の精(清末・李慶辰『酔茶志怪』巻二)


天津城の王という男が、湯陰(河南省)に行こうとして、広野を車で過ぎた。旋風が天を覆ってやってきて、中に蟒蛇(うわばみ)がいて、梁のように太い身体である。尾で車のてっぺんをうち、爆然と大音声が響く。車はほとんど転覆しそうになった。風が過ぎて、蟒蛇は消えてしまったが、今度は轍の前に一物が現れ、高さは一尺ばかりであったが、形がなんとなく人に似ている。飛び跳ねるように動く。車夫が近くまで追いかけ、足で蹴ると、物怪は急いで逃げて消えてしまった。晩に旅館に着き、車夫の足はにわかに腫れあがり、杖で叩かれたように痛んだ。土地の者にきくと、ここには棺桶の怪があり、変幻して姿一つでなく、常に現れては祟りをなすのであるという。