疑心暗鬼─彼は街の住民の生活を観察すべく真夜中に探照灯を点けているが、そのために街中の人々から監視されていることを知らない。
弁護人曰く、「彼は悪人ではない」─それはそうだ。悪への無自覚さ、無感覚さが、彼をして悪の権化となさしめている。「そんなこと考えたこともありませんでした」と彼は言うだろう。
作家の本分「なんという腐った心の人なのでしょう?」(ロシュフーコーに対するサブレ夫人の感想)─読者に与えるその衝撃が、人間の本性に対して目を見開かせるのではないだろうか。
「絵姿女房」─幾つになっても美人が好きで、近所の美術館に日々通い続ける彼の背中には、現実に対する絶望が滲み出ている。