インドやアメリカと平行して読んでいた本です。何冊も読んでいると、だいたい同じような内容になってきます。ただ、同じような内容でも異なる説明がされているといろいろとわかるところがあります。

小宮一慶, 2021, 『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』, PHP研究所.


とりあえず言いたいことは、「このタイトルは何とかならなかったのか」ということです。いや、内容は比較的しっかりしている、というか、煽りが少なく、むしろ「この本の内容がわからないくらいなら(投資の商品を)買うな!」くらいの感じがします。にもかかわらず、タイトルのせいで投資の煽り本というか、そこら辺のちょっと有名になった「にわかカリスマ投資家」が書いたハウツー本と同じような感じの本になってしまっています。タイトルで損しているのではないでしょうか。この点は、著者本人というより、編集の責任かもしれませんが....。

この本では

  • 1章:経済分析を経済指標で ←ファンダメンタルズ
  • 2章:企業分析を財務3表で ←ファンダメンタル
  • 3章:株価分析を各種指標で ←テクニカル
  • 4章:投信


という順で、説明しています。基本的には株式の説明本にありがちな3分野プラス投資信託というパターンです。この手の本のオーソドックスなパターンに投信のおまけをつけたということでしょうか。

ただ、よくあるパターンとは少し違っているところもあります。たとえばファンダメンタルでは、四季報ではなく、決算短信でもなく、財務3表を使っています。まぁ、四季報も財務3表から数字を抜いているわけだし、短信も後ろの方にBSとかついているわけだから、結果としては同じで大元を見ているというだけのことなのですけどね。余計な数字を見ないという点では、四季報や短信を使った方がよいのだけど、「とりあえずはここを見ればよい」としておいて、後から分析を深めるというなら、3表に慣れておいた方が拡張性があるでしょうか。決算短信に出てくるセグメント情報についても書かれています。セグメント情報をちゃんと書いている本は初めて見たかもしれません。

さらにテクニカル分析の部分では、チャートが出てきません。意図的に出していないんでしょうかね。チャートの分析って見た目は何かやっている感があるけど、結局は移動平均と標準偏差をいじくっているだけですからね。ただチャートについてダメともいっていません。ここは、「チャートよりちゃんと指標や指数の意味を理解した上で、数字を押さえろ」とはっきり書くべきだったのかもしれません。

内容的には、1章はまぁ、他の本でも読んだような内容で、普通です。2章は使えるかもしれません。3章はチャートに変わる指標の見方が出てくるわけではなく、PER/PBRくらいで、あとは2章のデータとPER/PBRを使っての、個別企業のデータの分析例となっています。投信はオマケですが、オマケとしては及第でしょうか。ただ、NISAなんかに対応しているわけではなく(出版のタイミングがNISAの制度変更がいわれ始めた頃、執筆はそれよりも前だろうから、この点は仕方がないかも)、あくまで簡易的な記述です。投信そのものについては、去年読んだあの本の方がよいでしょうか(一番右ですね)。


全体としては、数字を並べるのが好きな人には、実際にデータを作るというところまでやれば、そこそこ参考になる方だと思います。説明もそこまで難しくないですが、似たような本を何冊も読んでいるおかげで予備知識があるからかもしれません。最初の1冊にするよりは、何冊目かによいでしょうか。ただ、最初に1冊にすればよい本ってなかなか見当たりませんが....。最初にダメな本を読んで、それから読む方がわかりやすいかも....、ダメな本と言えばこれでしょうか。ちょっと読み返しましてみましたが、やっぱりダメです....、内容ではなく日本語の問題ですけど。


最後に細かい点を1点だけ。売上高成長率の計算式ですが

売上高成長率=(当期売上高-前期売上高)/前期売上高

となっています。あれ、成長率って

売上高成長率=(当期売上高/前期売上高)-1

じゃなかったっけ、と思わず考えてしまいました。同じ計算だと気づくのに30分ほどかかってしまいました。要するに「-1」の部分が「前期売上高/前期売上高」、前期売上分の数字を引くのが割算前か割算後かと違いでしかないので、結局は同じ式、いや、これまでの打ち込みデータを全部修正することになると思い、一瞬ゾッとしてしまいました。

とはいえ、今まで作った株式用のデータセットは、少し作り直しになるでしょうか。指標等の追加が基本ですけど、スプレッドシートのセル追加とかが出てくるので、セル配置の組み直しとか、貼り付けた式の確認修正とか、いろいろとやっかいなんですよね。その前にNISA用の投信の比較データを作るのが先かな?