これはカテゴリーを書評とすべきなのか、投資関連とすべきなのか迷うところです。

渡部清二, 2018, 『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』, 東洋経済新報社.

ファンダメンタルの教科書を買ったついでに、購入しました。「まぁ、読み物かな」程度で、あまり資料としては期待していなかったのですが、期待値が低かったこともあり、「まぁまぁの本かな」という印象があります。ただし、「軽く読むならば」という前提付きです。

比較対象としてこれ(黄色い方です)ですが

この公式ガイドブックの方は、四季報を書く側の視点からの本です。それ故に書いている側の説明のような内容になっています。それはそれで必要なのでしょうけど、なんか教科書的です。四季報の使い方のイメージがないうちにガイドブックを読むと、内容が固い(堅い?硬い?意味的にいうと難いなのかも?)こともあって、余計にわからなくなる危険があります。それに対して本書は、読む側、利用する側の視点で、しかも「このように使っている」ということをエッセー的に書いています。なので、お勉強ではなく読み物として(つまりマーカー使ったりノートをとったりせず)軽く読むのがよいでしょう。で、気になった部分についてだけ、お勉強モードというか情報収集モードで読み返すことになりますが、さすがに情報収集するには内容が弱いかなという気がします。

著者が、四季報のどこを見ているか項目を拾って、その整理というか使っている情報についての詳細の検討は、それこそ公式ガイドブックを含むその他資料で、ちゃんとお勉強するという感じでしょうか。

あと、タイトル通りに10倍株や100倍株を見つけことができるとは思わない方がよいし、あまり期待しない方が安全な気がします。つまり、

この人をマネすれば、10倍株が見つかって、大もうけできる

と思うのではなく、

この指標をこういう風に見ているのか

という感じで、方法論をつかむというか、もうちょっと気楽に、

こういう数字や項目を見ているんだなぁ

程度で読む感じ、「感覚的につかめればいいか」というところでしょう。四季報の読み方もまだ安定していないので、その辺の情報があればいいかな、程度です。そもそも、10倍100倍は、たぶんただの煽り文句でしょうね。まぁ、「この銘柄を買え!」とかよりは、方法論を語るだけ、ずいぶんマシだと思うのですが....。というか、ネットとかでチャート出しながら「今日はこれがよかった」とか「明日はこうなる」とか、そういうのが氾濫していますけど、なんか「競馬の予想屋かいな?」と思ってしまいます。

ところで今でもああいう予想屋って競馬場にいるんでしょうか? まぁ、競馬場自体に行ったことがないので、そもそもがイメージ(競馬新聞を手に耳に赤鉛筆というアレ)でしかないので本当のところはわかりませんが....。

こういう本を書けるなら、四季報のドリルとか過去問集とかおもしろいんじゃないでしょうかね。まぁ、テクニカルでドリル書いた例があって、それはなんか、う~ん、という感じでしたけど(これについてはドリルの作り方というより、テクニカルそのものの方に問題があるような気がしますが。簡単に言うと、現実のチャートはドリルで出てくる問題のようにわかりやすい動きをしてくれるわけではない、ということだと思います)。


あと、一応、マイナス点を書いておくと、

  1. どうでもよいことですが、肩書きに「達人」というのはどうなのでしょうか。著者本人ではなく、編集者がやったのかもしれませんが....。
  2. 四季報は書籍版を買うべきといいつつ、さりげなくオンラインや過去データのオプションサービスなど売り込みを差し込んできます。有料でない方法を示している部分もありますが、その方法はなんと力業でした。出版社が出版社なので、裏で著者と編集がつるんでいるのでしょう。というか、表で堂々とつるんでいるような気もしますが。まぁ、実践するなら、いきなりオプションサービスに入るのではなく、書籍版でできるところまでやってみるという感じでしょうか(東洋経済以外の安いデータサービスがあるかもしれないですし....)。
  3. 事例としてソニーやトヨタが出てくるのですが、「1950年にソニー株を150円で1000株買っていたら」あるいは「トヨタ株1000株を2万3500円で買っていいたら」、今頃は億万長者になっていたと書いているのですが、1950年の物価とか加味していないような気がします。というか2万3500円と簡単にいっていますけど、当時の2万3500円は現在価値でどのくらいだったのか、当時、それだけの額をポンと出せる人がどのくらいいたのか、その点は荒っぽい議論をしているか、あるいは煽っているのかのどちらかでしょう。
  4. 今話題の低PBRとかに関してですが、「低PBRだから割安というわけではない」というの主張はよいのですが、ではどう見るべきかが、結局ケースバイケースとしか言っていないような気がします。ヤフーのケースを出してきたり、視点だのカタルシスじゃなくてカタリストだのと言っているけど、いまいち使い方がよくわからないです。まぁPBRで騒ぎすぎというか、一時的な流行のようなものだと思えばよいでしょうか。
  5. 格言もいろいろ出てきますが、結局は「当たるも八卦当たらぬも八卦」ということ?
  6. 169ページの下落相場の事例でスルガ銀行が出てきますけど、この銀行って、銀行ぐるみで顧客をだました詐欺行為やらかしたところだったような....、相場では不祥事(この場合はほぼ犯罪だけど)での下落のケースじゃないのかな(というか、まだつぶれていないことに驚き)。
軽く読み終わったところで、ちょうどよく新しい四季報が届きました。なんか四季報が届くたびに「もうそんな時期か」と思ってしまいます。「これだ!」という読み方のヒントはなかったけど、まぁ、今回も今から読み始めです。ファンダメンタルの教科書は後回しになるかな。今夜は失業保険もあるので、いろいろと大変になりそう。