本日は会社四季報の発売日でした。縁がない雑誌だと思っていたんですけど、相続が完了していないうちに口座だけは準備出来てしまったので買っちゃいました。もちろん、読み方の基礎知識が必要なので、事前に2冊購入。読み散らかす度合いがますます増大しています。作業を含め、いったいいくつ同時並行しているのやら....。

で、四季報がらみの本です。

会社四季報編集部編, 2020, 『得する株を探せ!会社四季報公式ガイドブック』, 東洋経済新報社.
森口亮, 2022, 『1日5分の分析から月13万円を稼ぐEXCEL株投資』, 角川書店.

 

 

ついでに四季報ものっけておきましょう。ちなみに四季報を読む人は、発売日に1日で全部読み切るそうです。何とか1時間で1000万台だけ目を通して(本当に目を通すだけ)付箋を貼りましたが、う~ん、2~3日かかりそう。1年くらいはゆっくり読みながら、どこをどう見れば良いか、コツを身につけていくことになるでしょうか。

で、本の方について、メインは四季報ガイドブックなのですが、口座を作ってしまった都合とりあえず手っ取り早く情報を仕入れるために、ハウツー本も調達してみました。この手のハウツー本は、短期間で100倍とか1億とかあおり文句が目立つのですが、あるいはなぜか芸能人が出てきて推薦するといった怪しさ満載だったりするのですが(そういえばありましたよね、ステマ騒動)、この本は月13万と、控えめというか、現実路線というか、まだマシかなという感じです。といいつつ、タイトルの「1日5分」と帯の「3年で試算10倍」「元手3万円」には、やっぱりあおっているなぁ、と感じます。シンプルな方が信頼性が増すのでは、と思うのは私だけでしょうか。あと、本の装丁が角川らしくなくシンプルでよいと思うのですが(1日5分のくだりを変えればもっと感じがよくなるのでは)、ごちゃごちゃ感のある帯が台無しにしています。ちなみに帯があるとないとこんなに感じが異なります。
 

 

・・・・が、後から考えると、この帯がこの本を暗示していました。


内容はとにかく、日本語が恐ろしく読みにくいです。なんか散らかっていて、情報を再整理しながら読み進めないと、全く理解できません。四季報ガイドブックやネット検索結果と見比べつつ、紙にメモを書きながら、情報を整理しないと頭に入ってきません。著者に投資のやり方について自由に語ってもらって、それを文字起こししただけなのではないか、と思うレベルです。

ここでちょっと脱線です。個人的な考えですが、情報の整理の段階を次のように考えています。細かく言い出すときりがないので、わかりやすく5段階にしておきます(ネットが普及する前から使っている考え方なので、今回用にちょっと修正しています)。

1.頭の中の思考
2.話し言葉(会話など)    ←言語化
3.ブログ           ←文字化
4.ネットのホームページなど  ←校正
5.本など活字媒体       ←第三者の校正

1の頭の中は、言語化されていない部分を含めて全く整理できていない状態です。思考の中には言語化できない部分もあるので、これが他人に直接伝わることはないと考えています。

2は、思考を言語化した状態です。これで言語を媒介に他人に伝えることが出来ます。ただし、言語化できない部分が曖昧になったり、インタプリタ方式というか逐次訳のような感じなので、順番とか、論理とかが整理できていない場合が多いと考えます。まぁ、話す場所や与えられた時間、準備状況(原稿を準備しているかどうか)などによって、整理の度合いはかなり違ってきますが、ここでは触れません(スピーチライターの原稿などがある場合は、上の段階でいう5に近くなります)。あと、会話の場合は双方向なので、相手次第で随時、補足説明などが求められ、情報が逐次整理されていく可能性もあります。

3のブログは、ネット普及前は伝言メモ程度であまり重要ではなかった項目です。SNSなんかも同じレベルでしょうか。とりあえず文字化してみたというレベルです。悪くいうと、書き散らかしたものです。文字化すると、自分で何を書いたかがわかるので、話し言葉より情報を客観的に見ることが出来ます。とはいえ、ブログとかSNSとかで、逐一読み直すわけではないので、整理の度合いとしてはまだ低いといえます。まぁ、ブログやSNSは時間勝負のところがあるし、書き手の性格や立場にもよるし(几帳面な人や神経質な人は比較的読み返して修正したりするでしょうし、政治家なんかはSNSであっても内容を吟味....しているとは思えないアホもいますが、ちゃんと吟味しろよ)、読み手の方も何度も読み返すような情報と思っていないので、いや、SNS情報を鵜呑みにするのもいますね。ただ、基本的に文章が短いのと、膨大な量の文章が流れる現状では、よっぽど酷い場合を除き、あまり気にされることはないのかなぁ、とも思います。ちなみに、このブログも3のレベルで書いています。簡単に校正したり、長ったらしい部分はカットしたりしていますけどね(今でも十分長いといわれそうですが、カットしないともっとカオスになります)。


4は、文字化した情報に校正を入れたレベルです。ネットで言うと、更新頻度の低いホームページの文書(一応「文章」と「文書」を使い分けています)などは、このレベルだと思います。校正というか読み返して吟味しつつ、読みやすさや論理的整合性を確保したレベルです。その分、時間がかかりますので、精度が高くなる分、情報が古くなります。といいつつも、人によってはブログ感覚でホームページの文章を書いている場合もあるので、すべてのホームページが校正を経ているとは言いがたいのですが....。ちなみに、「情報を鵜呑みにしてはいけない」といわれるウィキペディアは、このレベルだと思っています。情報は整理されているけど(まぁ、投稿者によりますが)、思想的なバイアスがあったり、誤情報に基づいていたり、投稿者によってムラがあったりします。情報の整理とは別の問題もあるので、情報が整理されているからといって、信用できるわけではありません。まぁ、そういう文章に限って読みやすかったりするのですが....。

そして最後の5は、第三者の校正が入ったレベルで、出版物などがあたります。スピーチライターの原稿がある演説などもこのレベルでしょうか。特に出版物は、編集者という文章のプロが校正しているので、情報の整理という点では、非常に読みやすくなければなりません。まぁ、どれだけ編集者ががんばっても、そもそもの内容が難解であれば、読みにくくなってしまうのですが....。

というわけで話を戻すと、読みにくい本を読んだときは、「編集者は仕事しろよ」と思ってしまいます。まぁ、著者が悪い場合もあるのですが、今回の場合は、著者が文筆家や論文を書かなければならない研究者ではなく、むしろ著者本人が「勉強が嫌いで嫌いで」と2回繰り返したり、「学校行っていない」と書いていたりするので、その辺をフォローするのはプロの編集者の仕事なのではないか、と思ったりします。よくこれで編集部もOK出したものだと思ったら、出版社は角川書店、まぁ、角川ならこんなものかもしれませんし、「問題起こす前に本業ちゃんとしろよ」を思ったりもします。

これが岩波なら日本語や論理展開はちゃんとしているだろうし、東洋経済とかならもっとわかりやすい記述や書く内容の順番を気にかけるだろうし、マニュアル本を出しているインプレスとかなら作業手順というか読者が同じことを行ったときの再現性にこだわった編集をするのではないでしょうかね。そういう編集者はうるさくて注文が多いので、著者には嫌われるのかもしれませんけど。

個人的には、1章はインプレス風に経済的な解説抜きに「とにかくここの数値を見て、これを打ち込め」的なデータ作成方法に特化して、2章で1章のデータを元に岩波流に経済学的な用語やポイントを解説して、3章以降で東洋経済的な具体的データを紹介しつつ読み取り方や売買のタイミングを解説する、という感じにすればよかったのでは、と思います。そうすれば、結構使える本になったのかもしれません。それとも、この手の本についてのノウハウが、角川にはないのかも。だから、オリンピックとかに食い込もうとしたのでしょうかね。

 

いずれにせよ、内容はこれから精査ですし、本の書き方ではなく書かれている方法を実際にやってみてからの評価になるので何ともいえませんが、ハウツー本としては、使える使えない以前の問題があり、文書表現というかわかりやすさのレベルでかなり残念な1冊という評価です。