ナイジェリア・ポップのおすすめ | 勝手にシドバレット(1985-1995のロック、etc.)

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ロックを中心とした昔話、新しいアフロ・ポップ、クラシックやジャズやアイドルのことなどを書きます。

 ナイジェリア・ポップのお気に入りを10曲ほど紹介するコーナーです。先月は私が4月30日をゴールデン・ウィーク中の休日だと勘違いし、その日に更新しようとしていたのに出来ませんでした。そのぶんのお薦めがいっぱいあります。
 そして5月31日にはAyra Starrの待望のセカンド・アルバムがリリースされる予定で、6月の当コーナーは彼女の祭というか特集になるでしょう。

 では、今月もまずはAyra Starrの話題から。
 今やRihannaが「アフロビーツとアマピアノの違いはAyra Starrに教わった」とコメントするくらいに、グローバルな知名度が上昇しています。フィーチャリング・アーティストとしての参加曲も増えました。先頃は、ジャマイカのRvssianのニュー・シングルSantaに、プエルトリコのRauw Alejandroと並んでフィーチャーされました。これがビルボードで17位発進、レゲトン人気の強いスペインでは1位を獲得。
 さらに、Ayra Starrの直近のソロ・シングルであるCommasのライヴ仕様ビデオが公開されて、これが強力作です。私はこのビデオをバカみたいにリピートしているわけですが、Ayra Starrの体の動きとカメラ・ワークと音のうねりが一致していて中毒性があります。


 さて、次はロンドンを拠点に活躍するナイジェリアンのAzanti。これまでにも彼はナイジェリアのラッパー、PsychoYPと組んで優れた曲やアルバムを発表しましたが、ニュー・シングルのNaija Funkでも息の合ったところを聞かせます。


 独特の軽みや浮遊感のある跳ねたサウンドの持ち味はこの曲でも絶好調。もっと尺が長くてもいいし、もっと聴きたいけれど、このサクッとした簡潔さが心地よいですね。昨年のPsychoYPとのシングルClear Roadも良かったんですが、個人的には今回のほうが好み。

 

 次はShallipopiのセカンド・アルバム<Shakespopi>です。

 この人は昨年Elon Muskという曲でブレイクし、11月でしたか、最初のアルバム<Presido La Plito>でも好評を博しました。それでこのセカンド・アルバムにも注目が集まっていたようですが、現地の評価は辛めなのかな。「精進が足りない」というニュアンスの記事を見かけました。
 たしかに前作を薄味にした感は否めないと思います。まあ、わりとよくある話ですよね、セカンド・アルバムには。アマピアノとヒップホップのブレンドが鮮やかだったファーストを、もういっぺん同じ畑で耕した塩梅。
 しかし私はこのアルバムのライトなShallipopiも悪くないと思います。ASAPの余裕ある作りとか、ここでリンクするNew Catとか、気に入っています。


 続いては、Young Jonnのアルバム<Jiggy Forever>で、曲はBig Big Thingsです。

 これがデビュー・アルバムになるのですが、プロデューサーとして活躍していた人で、年齢も29歳とナイジェリア・ポップでは若いほうではありません(20代前半や10代の若者も多いですからね)。このアルバムも満を持してと言いますか、足場のしっかりとした音作りです。先述のShallipopiとは、そこが違うのかもしれません。

 Chocolate Cityと契約し、同レーベル所属のBlaqbonezをフィーチャーしたShowcaseや、ジャマイカのスター、Sean PaulをフィーチャーしたHold Onなど、とにかく全トラックが粒ぞろい。とりわけお薦めしたいのは、Kizz DanielとSeyi VibezをフィーチャーしたBig Big Things。さすがプロデューサー感覚が隅々まで行き届いています。


 次はYimeekaの6曲入りEP<Yimeeka>です。 

 2年前にデビューEP<Alter Ego>を聴いて惹かれたシンガーで、私の贔屓するAyra StarrやYemi Aladeのコッテリした歌い方と比べて、フワッとした空気をまとった歌が魅力的です。こういうのも好き。

 収録の6曲はどれもセンスが秀逸で、たとえばこのIroという曲なんかもクールかつナチュラルな味わいが佳いです。タイトルにあるIroはヨルバ族の女性の服装(=アイデンティティ)のことでしょうか。そんな想像もごく自然に広がります。そこにこのYimeekaの魅力がありそうです。
 

 さらにもう1曲、PheelzをフィーチャーしたAway。こちらもナチュラルに切ないバラードで、EPをプロデュースしたPheelzの腕が冴えています。彼のヴォーカルもYimeekaの歌と見事に調和しています。

 イケイケすぎるアフロ・ポップは苦手、という人にお薦めしたいです。


 次は、この人も5月中にアルバムが出るというTemsです。そうなると、6月の当コーナーをAyra Starrの話で埋め尽くすわけにはいかなくなるか。悩ましい。

 このシングルLove Me Jejeは、今年のコーチェラでお披露目された新曲です。Jejeとはナイジェリアの英語で「やさしく」という意味。

 もともとSeyi Sodimuのヒット曲のLove Me Jeje(1997年)があって、Temsのこのシングルはその曲のリフレインを取り込んだトリビュートです。元の曲はナインティーズなカッコよさに溢れていますが、Temsはそれを2020年代型のアフロビーツで挿むようにして、しなやかでふくよかな包容力をもって自分の曲に仕上げています。いいなあ、Tems。最高です。

 コーチェラでのライヴ動画にリンクしておくので、堪能してください。あ、これはすぐに削除されるでしょうから、Temsのオフィシャルな動画も貼っておきます。


 続いて、男性シンガーで私の好きなBella Shmurdaのシングル、Oghene。

  

 ZlatanとJeriqをフィーチャーしたアップリフティングな曲で、Ogheneとはナイジェリアのウルホボ族とイソコ族にとっての神だそうです。

 この曲は<R2 Sept12>という5曲入りEPに入っています。タイトル中の「Sep12」は、ナイジェリアのラッパー、MohBadが急死した昨年の日付。このEPはBella Shmurdaが友人だった彼を追悼した作品です。

 もうひとつ、Lonerという曲も紹介しておきます。こちらの歌詞は「おまえが去ってから、何もかもが変わってしまった。気を取り直すなんて出来ない。どんなに頑張ってみても」と、ダイレクトに悲痛が歌われています。

 アップリフティングもダウナーも、どちらもBella Shmurdaの歌が持ち続けているもので、だから彼の音楽は常に私の心を揺さぶります。できればロック・ファンにも聴いてほしいです。

 

 最後にD'banjのシングルで、曲名はTaya。フィーチャーされているのは、Zlatan、Timaya、Bhadboi OML、Kayswitch、Specikinging。

 このリズムで、こんなに和めるダンス・チューンを作れるってのは、もちろんパーソナルな力量もあるんでしょうけど、文化的かつ音楽的なバックグラウンドの差をまざまざと見せつけられる思いがします。

 

 ということで、今回紹介した中ではYimeekaのEP<Yimeeka>がイチ推しで、Young Jonnのアルバム<Jiggy Forever>、Bella ShmurdaのEP<R2 Sep12>もお薦め。

 Ayra StarrとTemsに関してはニュー・アルバム待ちといったところですが、両者ともリンクしたライヴ動画は必見です。とくにAyra Starrは、ますます旗を振りたくなりました。6月から始まるChris Brownの北米ツアーにゲストとして参加しますね。

 あと、南アフリカのポップ・プリンセス、Tylaがサマーソニックで来日するようですね。私も観てみたいのですが、夏フェスにはどうも足が向かない。

 だけどもしAyra Starrが来てくれたら行くなあ。いや、Tylaも好きなんですけど、来日するというニュースだけで満足。でもAyra Starrが来たら大騒ぎすると思います。そんなこんなで、日本のmobstarたちよ、ニュー・アルバムを待ちましょう!