東京女子流/ ミルフィーユ | 勝手にシドバレット(1985-1995のロック、etc.)

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 11月26日、心斎橋MUSE HALLで東京女子流の「ノンストップLIVE」を観ました。
 終盤に一度MCを挿んでのブレイクがあった以外は、実質1時間10分ほどのあいだ、歌いっぱなしの踊りっぱなし。過去におこなわれた同種の企画をユーストか何かで見たときには、こちらの集中力が続かなかったのですが、生のステージでこれを体験すると目が離せません。終わったときにはクタクタになってしまいました。
 ライヴの構成上、観客を休ませないからでもあります。良曲の宝庫である女子流ナンバーをノンストップで浴びて、頭がクラクラしてきたのも事実です。しかし、それ以上に圧倒されたのは、ライトに浮かびあがった瞬間から、客席にせり出して来そうな、彼女たちの現在の輝きでした。

 本当にみんな綺麗になりました。歌にダンスにルックスに、一人一人の個性が東京女子流というグループを編んでいっているのが眩しい。”おごりの春”の美しさ、とはこの事かと。
 5人から4人になって、フォーメーションが奇数から偶数に変わったことも大きいと思います。新井ひとみさんは、奇数のセンターから偶数の一員になっても、強い安定感でグループの帆を掲げているし、庄司芽衣さんは、包み込むような柔らかい笑顔でステージと客席をあたためる。中江友梨さんは、目の光にファイトをあらわにして観客をグイグイ引っ張るし、山邊未夢さんは、隙のある、なんともチャーミングで色っぽい花を咲かせる。

 前作のシングル「深海」について書いた記事から引用するなら、「脱退した小西彩乃さんの個性と役割を誰かが代演するのではなく、それぞれが自分の歌で東京女子流の声を新たに形作って行こうとしているかのよう」、まさにその姿を現在進行形で目撃できました。
 手前みそを戒める意味で、ひとつ追記しておきたいことがあります。あの記事で書いた、「東京女子流の『深海』にはリア充カップルの具体的なエロスは(当然というべきか)全くなく」云々は私の誤認でした。「全くなく」なんて、とんでもない。ちゃんとあります。ライヴで「深海」を見てこの考えを改めました。
 その「ノンストップLIVE」でも披露された曲が、「深海」から3か月の間隔でリリースされたシングルの「ミルフィーユ」です。
 痛みと悲愴感に沈むエレジーの「深海」から一転して、明るく軽やかな曲調。フューチャー・ハウスというジャンルについては、私はまたしても後手に回ってしまうのだけど、今回はタイトルやMVなどにも同性へのアピール度が増しています。それは女子グループの友情をミルフィーユに譬えた歌詞に顕著で、歌い方も気の置けない会話を意識してか、羽毛のようにフワフワとしたとりとめのなさを保っています。
 バックトラックのドロップが余韻を引かず、ポップな歌メロにすぐ引き継がれるあたりは、これでもかとタメて展開していた「Never ever」とは対照的。今作ではフューチャー・ハウスのスタイルと歌詞のコンセプトが結びついたのでしょう。

 それがサクッと上品な口当たりで、センスに余裕もあるぶん、東京女子流に熱のこもったノワールな陰翳を求める人には合わないかもしれません。個人的にも、もうちょっとR&Bっぽいシツコさがあってもいいんじゃないかとの感想も持ちました。
 でも、1年前のアルバム『REFLECTION』で打ち出されたグルーヴの変化が、「深海」「ミルフィーユ」と、異なる印象を与える2曲で引き継がれているのは面白いです。私は、”ファンクな女子流”は、当面、リミックスで楽しめばいいと思っています。
 というか、女子流の場合はリミックスをいつでも帰れるホームにして、どんどんリズムの試みを極めて行ってほしい。今回の「ミルフィーユ」もその点では充分に満足しています。
 このライトなメロディーとノリにして、ダンスは相当に激しいですね。重なって、連なって、崩して、また重なってを繰り返すこの振付は、キメの♪私たちまるでもうミルフィーユ♪で4人の層ができあがるまで、腕や手の細かい動きが今の女子流を見る眼福をかなえてくれるものです。
 というわけで、購入した「ミルフィーユ」は36ページの写真集つきのヴァージョンでした。

 ところで、東京女子流のライヴではステージ近くに女性専用エリアが設けられます。心斎橋の「ノンストップLIVE」でも、並んで待つ行列に女の人の姿を見かけました。その中に、ひときわ可愛い子がいたんです。きっと、男連中だけでなく女性陣も目を惹かれたはず。
 で、後でわかったんですが、どうやら雑誌のモデルをしたり歌をうたったりもしている、エイベックス所属の十代のタレントさんだったようです。
 たぶん、あの人は熱烈な女子流のファンなのだろうけど、「ミルフィーユ」が描く世界とやけに合っていて、そういう間口も広がったほうがいいなと思いました。
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(同日発売となった、サ上と中江の最初で最後のフル・アルバム、『夢見心地』。中江友梨ちゃん推しとしては、悔しいけど楽しいユニット。「SO.RE.NA!」では、オッサンが友梨ちゃんにどうあしらわれたいか、悔しいけど完璧に描かれている。デ・ラ・ソウルみたいなジャケットもいい。くっつくな!と思うけど、お仕事だから。悔しいけど。)