えー、池田信夫氏のアゴラ記事(『「日本だけ成長していない」という迷信』)を紹介した前回記事(『人口減少と資本主義の黄昏・・・』)は珍しく結構反響があったので今回はいくつかコメント紹介と私なりの解説をしたいと思います。


無題

ツイッターでポルシェ万次郎さん、門前小僧さんが反論されておられたのでご紹介を。

https://twitter.com/agora_japan/status/1002900391921532928
ヤン・ウェンリー命◆OgIneQVpHWWz2018-06-04 16:43:46

 

 

 

 基本的にコチラのブログや、進撃の庶民ブログの主張は、デフレと緊縮財政を問題にしているので、積極財政を行いなんとかデフレに陥らないような政策をとっているアメリカが緊縮財政を行っている日本やヨーロッパと比較して成長率が高く、日本と欧州の先進国が軒並み低い成長率しか記録していないという事実は、必ずしも積極財政派の主張と矛盾しません。

 

 また、池田信夫氏は購買力平価を用いたグラフを使用し日本の一人当たりGDPの成長率がそれほど低くないことを示していますが、ポルシェ万次郎さんは名目GDPでグラフ化すると全く違った印象になることを紹介しています。

 


ツイッターで初めて「返信」をしたら、速攻でイケノブ(本人公式)にブロックされた(笑)

当該グラフ「名目GDP(U.S.ドル)の推移」は横軸の期間が無駄に長いことと、アメリカのGDPだけが突出して高いことが災いし、「アメリカを除けば、日本を含めた先進国は軒並み低成長。実はドングリの背比べだった」という印象を持たれた方も多いかもしれません。

しかしながら、広く世間では「1997年(消費税導入を筆頭とする緊縮財政の実施)以降、日本は経済成長していない」ことが問題視されているのだから、池田信夫氏のように統計範囲を1980年から取ることは、印象操作をしたい以外の意図を私には感じられませんでした。

そこで、「問題となる1997年以降で見ると、経済成長していないのは確かに日本だけであることは分かった。それならもう一つの主張、『日本の経済成長率が下がった最大の原因は、高齢化と少子化による労働人口の減少である』についてはどうだろうか?」についても、先程やっつけで作成した当方自作のグラフ「G7の一人当たり名目GDP(U.S.ドル)の推移(1995=100)」で反論させていただきます。

G7の一人当たり名目GDP(U.S.ドル)の推移(1995=100)
https://twitter.com/agora_japan/status/1003567791939522560

素直に「一人当たり名目GDP(U.S.ドル)」(Gross domestic product per capita, current prices)を使えば上記グラフの通りとなり、生産年齢人口ではなく総人口による統計ながら、やはり日本一国だけ経済成長していないことが明らかです。

カツトシブログの読者であればご承知の通り、名目GDPと政府総支出増加率との相関は極めて高いため、日本が「世界一の緊縮財政国家(世界最低の政府総支出増加率)」「世界一の対外純資産国」であることをやめれば、この「日本だけ成長していない問題」は綺麗に解決いたします。

「政府支出増加率がインフレ率を考慮した最適な加減で、富の再分配(累進課税強化など)も上手く行っている国」というのを私は知りません。第二次安倍政権が登場した頃の安倍総理と入れ替わり、社会実験が出来ればいいのになと思います^^
ポルシェ万次郎2018-06-04 20:42:59

 

 

↑コチラのグラフは、1995年の各国の一人当たりGDPを100として一人当たり名目GDPの推移を比較したグラフです。前回記事では、池田信夫氏が使用した購買力平価のGDPのグラフを紹介しましたが、一見して分かるように名目GDPで比較するか、購買力平価で比較するかでかなり印象に違いがあります。

 

 

 購買力平価では、日本の一人当たりGDPはアメリカの7割程度となるのですが、一方で、名目GDPでは倍以上の差が付けられています。では、この二つの数グラフでなんでこんなに差が出るのかといえば、おそらくは日本がデフレで物価が継続的に下落しているため、名目GDPが伸びなくても購買力(GDPに物価変動を加味した数値なので実質GDPに近い概念)は上昇してるというワケです。まあ、デフレ型の経済成長とでも言うべきでしょうか、要は名目GDPが全然増えてないのだけど物価が下落してその分実質GDPが上昇しているような状況です。

 

 ここで、「じゃあ、名目GDPが伸びなくても物価が下落して購買力が上昇しているなら人々の生活は悪くなってないんですね?!めでたしめでたし・・・」とはならないのが問題で、一つには前回も少し説明したような分配と格差の問題で、GDPが上昇しない状況で格差が拡大すると当然、それなりに経済成長しながら格差が拡大する状況より低所得層にとってはより苦しい状況となります。

 

 それから、もう一つは当然ながら海外からの輸入品の価格が高騰します。つまり、日本だか物価が下落して、賃金も上昇しない中で、海外がインフレを起こすと、日本が海外から輸入する製品の価格は相対的に高騰します。また、日本はエネルギー資源や食料といった生活必需品の多くをもっぱら輸入に頼っているため、低所得層の生活にはもろに影響が出ます。

 

 一番分かりやすいのが一時期Twitterで流行したハッシュタグ「#くいもんみんな小さくなってませんか日本」です。輸入品の価格が高騰しているので当然食料品価格は上昇しますが、国内ではデフレ状況で輸入品価格の上昇を値上げによって対応できないためにメーカーが採用した苦肉の策が、価格を据え置いて量を減らすというもの。当然ながら、パッケージ化された様々な食べ物が小さくなっていきます。

 

『#くいもんみんな小さくなってませんか日本』

 

はるかゆう@harukayou_aki

うわっ、小っさ!!Σ( ̄□ ̄;) 包装と比べてこの大きさ! (100円玉は対比用) 多少値段上がってもいいから、もうちょっと大きくできませんか? #くいもんみんな小さくなってませんか日本 pic.twitter.com/rqGyVvBbu8

 

 

早川タダノリ@hayakawa2600

やはり俺の目の錯覚ではなかった(2015年4月に撮影) #くいもんみんな小さくなってませんか日本 pic.twitter.com/JrVcQKFdEH

 

 

きみこ@ny_1114sw

カルビーのポテチ。90g→85g→70g→65g→60g #くいもんみんな小さくなってませんか日本 pic.twitter.com/hMgOp1b5sS

 

mats3003@mats3003

#くいもんみんな小さくなってませんか日本 ちなみに一番ひどいのは、カントリーマアム。 2007年28枚→2008年24枚→2013年22枚→現在20枚 pic.twitter.com/8tJiw36CQW

 うーむ・・・( ̄▽ ̄;)

 

 ちなみに、個人的なことを言うと、最近ファミマのバケットサンドの量がメッチャ小さくなっていたのがショックでした。。。

 

 ところで、最近よくジョージ・オーウェルの『1984年』を引き合いに出しますが、実は主人公のウィンストン・スミスは配給される吸うと葉っぱが中身がボロボロにこぼれる煙草のヴィクトリーシガレットや、油みたいな味がして喉ごし最悪で、飲むと目から涙が出てくるクソまずいお酒のヴィクトリージンを飲んだり、1週間のチョコレートの配給量が30グラムから20グラムに減らされてることに関して疑問に思ったことから、反正統としての反党反国家運動を開始しました・・・。官僚の文書改竄だけでなく、わざわざご丁寧にこんなところまで『1984年』の世界を忠実に再現しなくてもいいのに・・・(笑)

 

 以前、中野剛志さんも『日本防衛論』という本で紹介していたと思いますが、このようにデフレ不況で中間層が没落しながら、同時に食料品価格などの生活必需品価格が上昇する現象を「スクリューフレーション」と呼びます。

 

生活必需品が上昇、贅沢品が下落する状態は、生活に密接したモノ、サービスの価格上昇の認識が強く、デフレを感じさせない事が多く見受けられます。このような状態を最近は、スクリューフレーションと呼ばれ、生活必需品への消費が所得比率の中で高い、低中間所得層の貧困化(Screwing)と生活必需品が上昇するインフレーション(Inflation)を組み合わせた造語が使われます。贅沢品は下落しても、所得も減少すれば生活必需品が上昇で家計にも大きな影響を及ぼします。

『デフレを自覚させないスクリューフレーションの脅威』

 

 スクリューフレーションの悪影響は、支出のうち生活必需品への支出の割合が大きい中間層以下の家計により大きなインパクトでもって直撃するワケですが、この点を考慮するとリフレ派お得意の金融緩和策による通貨の切り下げは、輸出企業を多少楽にするものの、それによる景気の回復効果が薄い場合には、輸入品価格の上昇によって多くの家計にとってマイナスとなります。結局、為替操作などの小手先だけでなんとかしようと思ってもプラスとマイナスで適当なところで帳尻があってしまうものであり、実質賃金の上昇無くして景気回復なしなのだなと強く感じます。

 

 ちなみに、日本の実質賃金の変動を見てみるとなんと40年前から変わらないそうな・・・(;''∀'')

 

『46年前からあった「若者の○○離れ」と、今起きている「お金の若者離れ」 (3/3)』

 

20-24歳は1978年ごろと比べて横ばい
 まずは20-24歳から。最新2016年の年収(名目賃金)は258万4000円。実質賃金は258万6587円です。統計でいちばん古い1978年では、年収は170万3000円。これを実質賃金に直すと255万3223円。ほんの少しだけ2016年の方が多いです。

 ただ、その前年2015年の年収は252万5000円(実質賃金も同じ)で、1978年のものより低くなっています。これを見ると、20~24歳での比較では、ほぼ横ばいと言っていいようです。

 

 

 ついでに、学費や保険料は当時とは桁が違うので、若者の生活は圧倒的に苦しくなっています。

 

国民年金保険料は100円、大学授業料は3万6000円だった!
 若者が得られるお金は昔とほぼ変わっていない一方で、若者が支払わなければいけないお金は増えています。非正規社員が増え、払うべき人が多くなっている国民年金保険料。1978年度は2730円でしたが、2017年度は1万6490円と、約6倍にも上がっています。

 実は1966年の12月まで、35歳未満は保険料が100円でした。当時と2017年の消費者物価指数の差を考えても3.91倍なので、いまの391円にしか当たらないことになります。

 さらには大学授業料も国立大学が1975年度の3万6000円から、現在は53万5800円に。私立大学も同年度の18万2677円から、2014年度の水準で86万4384円にまで跳ね上がっています。これでは奨学金の支払いなども大変です(※1)。

※1:1975年当時と2017年の消費者物価指数の差は1.86倍ほど

 「若者の○○離れ」という言葉は、単に若者がそれらから離れている事実のみを指す場合もあるので、一概に使用するのが悪いということではありません。ですがこの言葉が、消費しない若者を“皮肉って”使われる場合、「それにお金を使わないのは、若者の意識が低いわけではなく、必然なのです」と訴えたいところです。

 

 色々と話が飛んでしまいましたが、とりあえず、問題としては、海外でインフレが起こっている状況で一人当たり名目GDPが伸びていないことは普通に貧困化であると言っていいであろうということで、それからもう一つは物価上昇やデフレ脱却が必ずしも直接的に生活水準の向上につながるとも限らず、デフレ不況からの脱却は人びとの生活を良くするための必要条件であっても十分条件ではないと感じました。

 

 うーん、他にも色々と考察したいのですが、長くなってしまったので次回以降で、解説したいと思います。

 

 

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