ウーマンラッシュアワーの村本大輔という芸人が朝生で無知を晒してバッシングされているそうですが、なんというか「そりゃそうなるよな・・・」と。

 

 なんか、本人は、「俺がこんなに話題になってるのに、年始のバラエティー番組に俺を出演させないTV番組は間違ってる!!」みたいなことを喚いてるらしいのですが、そりゃあTVマンだってアホじゃないんだから、こうなることくらい見越して面倒になりそうだと思って敬遠したんだよ・・・っていうね。特定のタレントを使うか使わないかの選択権は当然TV側にあるからね。

で、まあ朝生は観てないんですが、この辺りのやり取りを見て思い出したのが、オルテガの『大衆の反逆』の中の一節です。

 

大衆人は全てのことに介入し、自分の凡庸な意見を何の配慮も内省も手続きも遠慮もなしに、暴力的にのみ干渉するのだ。

ここで、間違ってはいけないのは、大衆は自分が優秀であると信じているのではない。

大衆は自分が凡庸であることを自覚し、凡庸であることの権利、権利としての凡庸を宣言しているのである。そして、これが大衆の特権でもある。

 

 井上達夫は村本大輔の態度を愚民的と論じているワケですが、オルテガの大衆論を読んでみれば、「なるほど」と村本のメンタリティーが良く理解できます。また、謎の上から目線というのも、村本がお笑いという専門分野においては一定の成果を上げており、その特定分野での成功がやたらと偉そうな上から目線の態度を生み出している、と考えるなら、まさにこの村上氏の態度はそのままオルテガが大衆人と名付けた人物の様相そのままになるワケです。

 

 私自身はTVはほとんど観ないので(せいぜいNHKのニュースか、朝のワイドショーくらい)、芸人にも関心は無いのですが、たまたまあるネット番組にこの村本氏が出演していたのを見てその存在は知っていました。それで、まあ「ああ、なんかあの若手の芸人が政治に口を出してイキってるみたいだけど、ロクなことにならないだろうな」と思っていたのですが、今回案の定って感じです。

 

 で、まあその私が観たネット番組というのが、水道橋博士と宮台真司の番組で村本をゲストに呼んでトークするという内容だったのですが、そこで話されていたのが、村本が宮台に対して突っかかって「本って読まないといけないんですか?本を読んでる人って偉いんですか?」と。宮台真司なんとなく、やりにくそうに苦笑しながら答えていたことが印象的でしたが、なんというか、この村本というのは自分自身が無知であったり、不勉強であることをどこか誇って悦に入ってるような印象があるんですね。なんというか悪い意味で反知性主義というか、「俺は知識が無くても、頭の回転の速さと、自頭の良さでお勉強家の知識人とも渡り合っていけるぜ!!」みたいな・・・( ̄▽ ̄;)

 

 私個人の感想を言うなら、別に本を読むことが全ての人にとって必要だとも思いません。本を読むということは一つには、現在自分の持っている関心の元に読むこと。例えば、世の中のお金の流れを知りたければ経済の本を読むし、人間の行動や心理について知りたければ、心理学の本を読むし、より大きなマクロ的な現象と人間集団の行動を知りたければ、社会学の本を読むかもしれません。他にも、娯楽小説やエッセイ、あるいはオタクなどであれば趣味としてサブカル本を読むこともあるでしょう。ですので、まず、本を読むことの第一の意義は現在自分の持っている関心の範囲内にある知識や理解を深めることにあります。それから、本を読むことのもう一つの重要な側面は「それまで、気付かなかった問題意識に目覚めること」です。まあ、古くはマルクスの資本論などが典型でしょうが、当時は多くの人がマルクスの本を読み、資本主義の問題点に気付いて革命思想に目覚めたワケです。あるいは、哲学の本なども、多くの場合それまで自身が問題にもしなかったような事柄の中に深い重要な人生の問題点が含まれていることに気付いて、世界や世の中を見る視点が変化するということがあり得るワケです(もっとも、現在のように価値観が多様化し細分化されたような社会においてはそもそも哲学書を読むような人の多くはもともと哲学的問題に関心を持っている人であり、そもそも最初からそのような問題意識を持たない人は哲学書を読んでみようという気にすらならないことがほとんどなのですが)。

 

 で、まあこのように整理してみたときに、そもそも「本とか読んで何の意味があるんですか?」という質問を行う人は、「本を読んで身につけたり知識」もなく、また同時に本を読むことで自分自身の意識や関心の領域を拡張しようという意識もないワケですから基本的には「本を読む必要は特にない」ということになります。で、まあ先の村本氏の発言では、「俺は本なんて読んでないけど、お笑いで賞を取ったワケなんですけど、なんか本読む必要あるんですか?本を読んでもつまらない芸人なんて腐るほどいるんですが?!」的なことを言っていたので、ますます、「うんうん、君は本なんて読まなくても地頭が良くて、才能もある人間だから本なんて読まなくていいよ」と思ったワケです(ただし、ここでの問題は彼の才能が中程度の才であり、それ一本で他者の興味と関心を惹き続けられるようなものでなかったことなのですが・・・)。

 

 で、まあなんとなくそんな番組を見たことも忘れたくらいのこの時期に、突然この芸人の話が話題になって、「ああ・・・あの本を読まない芸人ね・・・」と思って少し関心を持ったのですが、案の定このザマに・・・。別に、本を読まなくてもお笑いに専念してる分には問題ないのですが、仮に学者やら評論家やらと議論するなら最低限の基礎知識くらい必要だろ、と。

 

 なんというか、TVの放送で特定の相手に向かって、「お前は愚民だ」って言うのって相当勇気のいる発言だと思うんですね。だって、「お前は愚民だ!!」って言った方は、即座に「じゃあ、他人を愚民だと名指しで批判するお前は一体何者なんだ?!」ってツッコミが返ってくるワケですから・・・。

 

 もちろん、井上達夫氏も最近では随分色んなTV番組なんかに出演していて、そういう批判やら反発に関してある程度慎重に対応するようにしてると思うんで、それでもなお村本という芸人に対して、「お前は愚民的だ!!」と言わざるを得なかったという事実に関して結構重く考えるべきだと思うんですね。

 

 基本的に芸人は政治にしゃしゃり出てくるべきではない、と考えてる派の私としては結構気の重くなる騒動だなと感じました。

 

 

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