今回は、以前書いた記事の続編になります。

 

『右にも左にも理解されない山尾志桜里の立憲的改憲論・・・前編』

 

 前回説明したように、山尾氏の案の重要な論点は、主に二つあり一つは自衛隊の役割を個別的自衛権に限定することであり、もう一つは、実際に自衛隊の役割を自国の防衛のみに限定し他国同士の紛争に介入することに歯止めをかけるための具体的な仕組みを司法、立法、行政、そして財政的な側面から作り上げていくという点です。

 

 個別の論点についての是非は後半に譲るとして、まずは具体的に案の中身をみていくことにします。

 

 まず第一に行政の点からです。現在、日本の自衛権の行使は憲法上、内閣の役割を定めた第七十三条により、「一般行政事務」の一部として位置づけられていました。しかし、山尾氏は、この73条が定める内閣の役割に、「外交関係の処理」に加えて「自衛権の行使」を位置づけるべきであると主張します。理由は、二つあり、一つは当然ながら軍事力の行使を伴う自衛権の行使が一般事務であるとする解釈には無理があること、おそらく、このような仕組みになっている理由の一つは、憲法9条の2項により戦力の保持が認められていない日本国憲法において、自衛権や軍事力の行使に関して何らかの憲法上の位置づけを行うことが困難であったという可能性があります。また、内閣の役割を定めた憲法の第5章における内閣総理大臣の役割を定めた72条ではなく内閣の役割を定めた73条に自衛権の行使を位置付けることにより、総理大臣の独断での戦力の行使を制限し、基本的には閣議を経なければ戦力の行使がおこなえないようにするという意味もあります。実は、これまでは、自衛権の行使が内閣総理大臣の権限であるか、内閣の権限であるかすら憲法上には正確に定められていなかったのです。

 

 次に、立法についてですが、現在自衛隊法で防衛出動の際の国会での承認での必要に関して、憲法で位置付けること。そして、司法では、憲法裁判所を設置し、現在実質的に形骸化している司法による立法への監視機能をしっかりと果たせる仕組みを作ること。最後の、財政に関しては具体的な案は出されておりませんが、何らかの形で防衛力に関して財政的な制限を加えていくことが言及されています。

 

 と、まあ具体的に山尾氏の提案する改憲案の具体的な内容について簡潔に説明しましたが。まず、第一に言いたいのは、憲法9条の矛盾を解決しないままに、とりあえず改憲といった具合に3項を加える現在の安倍政権の欠陥だらけの加憲案よりも遥かに緻密な議論がなされているという点です。

 

 安倍政権における様々な矛盾を残したまま、とにかく改憲して9条に3項を加えるだけの加憲案に対して、山尾氏の案では自衛隊の役割を明示した上で、憲法上の様々な矛盾を解決して整合性が取れ、尚且つ国民にとって納得できるようなカタチでの改憲を目指しています。何故、これほどまでに内容に差が出るのか?と考えたときに、第一には自民党は与党であり、現実的というか中途半端な出来損ないの妥協案を提示せざるを得ないという問題もあるのでしょうが、それに加えて大きいのは、安倍政権が目指すのはより良い憲法ではなく、とにかく改憲そのものが目的となっている点です。

 

 これは、全く手段と目的の転倒と言うべきで、本来より良い憲法の在り方を目指すための憲法議論であったハズが、とにかく改憲することそのものが目的となってしまっている。なぜ、こんなバカバカしい事態に陥っているのかといえば、これは私の個人的見解となりますが、一つには、改憲そのものを自身の政治的成果にしようと目論む安倍首相個人の人格的な浅ましさにあるように私には思えてなりません。当然ながら、国民はこのような下らないことこの上ない、安倍晋三氏個人の政治的野心などに振り回されることなく、冷静に醒めた目でこのバカバカしい改憲騒動を眺めて欲しいと思っています。

 

 それから、最後に何点か、この山尾氏の案についての感想を述べると、まず、この案は基本的には国防を重視する右派や保守派の意向にも基本的には合致するという点です。もちろん、一定の柔軟性が求められる防衛政策や自衛隊の役割に関して、どこまで憲法によってガチガチに制限してしまって良いのか?という議論はありますが、しかし、それでも戦力の不保持を謳っている現行の憲法においても、良くも悪くも現在のように柔軟な解釈によって、一定の実効性を持った実力舞台や防衛装備を保持している点を考慮するなら、自国の防衛における喫緊の必要性に応じて自衛隊の活動を認める山尾氏の案に変えることがそれほど重大かつ深刻な問題を引き起こすかは分かりません。また、当然ながら、現行のままひたすら解釈のみでズルズル自衛隊の活動範囲を制限なく広げていく現状に対しての一つの解決策としての意義は認めるべきでしょう。そして、これまた当然のこととして、国家の防衛と安全保障を重視する保守派の人々にとっても、国家防衛のための非常に重要かつ貴重な資源としての自衛隊の役割をどこまでも拡大し、他国の紛争などに巻き込まれることでその資源をすり減らすようなことは認めてはならないハズです。となれば、自衛隊の役割を自国の防衛における喫緊の差し迫った危機にのみ対応させるという山尾案は決して悪いものではないし、事実、戦後は、そのように自衛隊の活動に枷をかけることで、自衛隊が他国の紛争に巻き込まれなかったという現実的なメリットも享受してきました。

 

 もちろん、山尾氏の案にしても、本来国防上の必要性の観点から議論すべき、防衛費について財政の観点から制約を掛けるという案の問題点や、他国からの攻撃により、国会の承認や閣議を経ることなく即座に対応せざるを得ない緊急事態が発生した際に果たして迅速な対応が制限されるのではないか?といったいくつかの疑問点は存在します。しかし、それのような疑問や欠点を考慮してなお、それなりに評価すべき内容を含んだ案であることは間違いなく、安倍首相尾などを応援する右派の保守派の人々も、「安倍首相は正しい!!野党議員は間違っている!!」とばかりに脊髄反射的なきょひはんのうを示すことなく、この新しい改憲案の内容をしっかりと理解した上で、そのうち評価すべき点は評価するといった公正な視点で観てみてほしいと思います。

 

 

↓応援よろしくお願いします(σ≧∀≦)σイェァ・・・・・----☆★



↓新しい動画投稿しました!!