前回のブログで、京都大学、慶應義塾大学、中央大学、東京大学、一橋大学、早稲田大学の各法科大学院代表者が6月9日付で予備試験の受験資格を制限するべきとの緊急提言を出したことを取り上げました。ところが、同じ法人が経営する法学部に、予備試験受験対策を売り物にしているところが複数存在することが判明しました。

 まず、慶應義塾大学法学部法学研究所のインタネット・サイトには、なんと「予備試験受験等も視野に入れた講座など、多彩な教育活動を行っています」と記されています。

 また、2014年版の中央大学法職講座案内インタネット・サイトにも驚かされました。“法曹養成制度に対応する「法科の中央」、司法試験の現役合格者を多数輩出”と高らかに謳った予備試験組の司法試験合格者座談会(実名)に、「予備試験の受験対策で学外の予備校へ通った場合と比べて、中央大学ではその10分の1のコストで学修することができます」という体験者の声が紹介されているのです。

 法科大学院の代表者たちが予備試験制度の廃止を企んでいる一方で、同じ学校法人の学部は予備試験合格対策の充実をエサに学生を集めようとしている。もうわけがわかりません。

 さらに、先日の党司法制度調査会法曹養成小委員会で日弁連の代表者は、予備試験受験に制限を加えるべきという法科大学院協会代表者に同調していましたが、単位会の埼玉弁護士会や札幌弁護士会から「司法試験予備試験の受験資格制限等に反対する会長声明」が発表される有様。

 予備試験制度を潰す画策をしている関係者の中でも相矛盾する動きが起きているのです。漂流する法科大学院という仕組みの先行きは不確実性を一層増すばかりです。制度の根幹を改革しない不作為による作為の犠牲になるのは、まじめに法曹を目指す卵たちにほかなりません。