京都大学、慶應義塾大学、中央大学、東京大学、一橋大学、早稲田大学の各法科大学院代表者が6月9日付で予備試験の受験資格を制限するべきとの提言を出しましたが、13日(金)の自民党司法制度調査会法曹養成小委員会では、この提言に対し、発言したほとんどすべての議員が厳しい評価を下しました。以下、私の発言を紹介します。

 「この提言を読み、はじめは自分たちの既得権益ばかり主張していることに苦笑し、続いてそれが大きな失望に変わり、おしまいにはこんな人たちに教育を受けている法曹の卵たちの将来が心底不安になりました。

 中でも、法科大学院制度が創設された時の理念が実現できなかったことへの自己反省がひとかけらもないことに私は驚きました。

 教育の「質」に言及した箇所は次の一か所だけです。“…このような事態の背景には、法科大学院修了者の司法試験合格率が低迷してきたことや、法曹の活動領域の拡大が当初の予想ほどではないことなど、さまざまな問題があり、法科大学院としても、教育の質の改善に向けて真摯に取り組む必要がある…”

 これでは、事態の悪化を招いた責任は合格率を高めない司法試験委員会にあり、法科大学院には瑕疵がないように聞こえますし、法曹需要が拡大できなかったのは、社会が悪いのだという主張に聞こえてしまいます。」

 鳩山邦夫元法務大臣は、提言の冒頭に“法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度は、旧司法試験という点による選抜を重視した制度の弊害を克服するために導入され、制度発足以来、高い志と問題発見・解決型の思考力等を身に付けた多くの優れた修了者を法曹として社会の様々な分野に送り出してきた。”と書かれてあることに噛みつき、「法科大学院を修了した者の方が旧試験組よりも優秀だと本気で考えているのか。もしそうならば、私にはとても信じられないことだ」と一喝。他の議員も異口同音に「予備試験に受験制限を加えるべきではない」と主張しました。

 いったい、制度創設以来十年に渡り、法科大学院の運営補助のためにどれだけ大量の国民の税金が投じられてきたと彼らは考えているのでしょうか。制度創設以来十年間、法科大学院に通うため、学生やその保護者にどれだけ多額の出費を強いたと認識しているのでしょうか。

 法科大学院を修了しないと司法試験を受験する資格を原則与えない特権的な地位にふさわしい不断の努力が求められているのにもかかわらず、実際には特権の上にあぐらをかき、自らの既得権益の保持に汲々とする業界団体が出した今回の提言にほとほと失望したのは私だけではありませんでした。業界団体の主張はかえって自民党国会議員の反発に火を点けただけでした。この提言の通りに「予備試験受験資格を制限するべき」と発言した議員はわずかに二名のみでした。

 私は法科大学院協会に「法曹の卵たちの反乱」をしっかりと直視することを求めます。志望者が急減している原因の所在は、予備試験制度ではなく、法科大学院という仕組みそのものにあるという「法曹の卵たちの意思」に謙虚に耳を傾けなければなりません。特権的な権利の裏には当然厳しい義務があるという、誰にでも分かる社会の決まりを法科大学院で教える偉い人たちに今更説かなければならないとは…。

 業界団体に求められているのは、予備試験潰しを主張することではなく、たとえ司法試験の受験資格制限が撤廃されたとしても、多くの学生が法科大学院の門を敲くように教育の質を向上させる本質的な努力であると私は考えます。

 今回の提言のようにお門違いの主張ばかりを法科大学院協会が繰り返すのならば、司法試験合格者数において、法科大学院修了組と予備試験組を同数にする宣明を考えなくてはならなくなります。