外国政府やメディアから福島第一原発事故に関する日本政府の情報公開と取るべき対策についての不安が募っています。今回の事故は、もはや日本だけでなく、世界の問題になりつつあるのに、正確な情報が発信されていないという不安は不信に変わりつつあります。

 東京電力も原子力安全・保安院も日本の学者・専門家もすべて「核有事」を経験したことがない、いわば素人集団ではないでしょうか。もちろん、日本の原子力技術や生産基盤が世界有数の水準であることはわかっております。でも、いま福島の事故で問われているのは、「平時」における学問の水準ではなく、チェルノブイリやスリーマイルアイランドでおこったような「核有事」への迅速かつ的確な措置なのです。「実戦」を経験したことがない日本の技術者・学者にのみ、当初から寄りかかってきた日本政府の対応はまったくの的外れであるという意見は専門家の間からさえ上がっているのです。私はこの際、福島第一原発事故に関連するすべての情報、中でももっとも重要な炉心のデータなどを直ちに米国に提供するべきだと考えます。そのうえで、米国を中心に、ロシアを含む原子力先進国の専門家を大挙日本に招き、これまでの措置への検証とこれからの対策を大急ぎでうちたてるべきであると考えます。そうやって諸外国を巻き込む対応こそが、要らざる不安や疑念を払拭することにもなり、また、もはや日本一国ではなく、世界の問題になってしまった「FUKUSHIMA」事故への正しい対処であると私は考えます。

 ところが実際の政府の対応はお粗末の一語に尽きます。この期に及んでも、20-30キロメートル圏内を原子力安全委員会指針に基づく「避難指示」ではなく、“自主避難への呼びかけ”という国としての責任を放棄した逃げ腰の言い方しかできない現政権。私はもう情けなくて仕方がありません。なぜ、断固たる措置を政府はとらないのか。なぜ、国民のいのちを危険に曝しつづけるのか。文部科学省は、私が既に汚染の危険性を指摘した飯館村において、わずか一日で年間被曝量を上回る1.4ミリシーベルトを23日から24日の間に計測したと昨日発表しました。繰り返して主張しているように、緻密な環境放射線測定や、現在は原子力安全委員会の実質的な管理下にある「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)」の正直な評価に基づいて、20-30キロ以遠において、一刻も早く正確な「避難指示」範囲を拡大するべきです。もはや、政治責任を問われることから逃げ回ったり、パニックの発生を恐れる段階ではありません。

 もし作業員が被曝しなかったら、三号機における水たまりから一万倍という高々濃度の放射性物質が検出されたことは公表しなかったのではないか、そして同じような水たまりが一号機、二号機、四号機にもあったことも公表しなかったのではないか。東電と政府に対して、さまざまな疑念が広がっています。自国民すら納得させることができない菅内閣が、外国の人々や政府を「日本は安全だ」と説得できるはずがない。いまのままでは、日本の農林水産物や訪日観光だけでなく、工業製品、サービス、いや日本という国そのものに対する「信頼」を毀損してしまいます。先人が長い年月をかけ、汗と涙を流して営々と積み重ねてきた日本への信用が壊されてしまうのです。

 こうしている毎日も絶えず放射能が漏れ続けている福島第一原発事故。“収束へ向かっている”などとはとても言えない厳しい状況が続きます。現場の関係者の犠牲的・献身的な努力に為政者たちは報いているのでしょうか。