中国、「ウイルス米軍拡散説」形勢不利と判断、駐米大使が狂気の沙汰と「全否定」 | 勝又壽良の経済時評

中国、「ウイルス米軍拡散説」形勢不利と判断、駐米大使が狂気の沙汰と「全否定」

 

 

 

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中国外交部報道官が、武漢ウイルスは米軍が持込んだのでないか。そういう主旨をツイッターに書き込んで以来、米中関係は悪化している。米トランプ大統領は、「中国ウイルス」と発言している。国務長官は、「武漢ウイルス」と言うなど波紋を広げていた。これに対して、駐米中国大使は、米軍拡散説を全否定するインタビューに応じた。

 

中国大使の正式否定だけに、発端になった外交部報道官のツイッターは、何とも体裁の悪い結末になった。中国指導部が、一度は外交部報道官に「米軍拡散説」を書き込ませながら、駐米中国大使に否定させた裏に何があったのか。欧米が、深刻な新型コロナウイルスに巻き込まれている中で、こういう無責任発言をして猛反発を受けて撤回させたのであろう。

 

米英の混乱状況は、次のようなものだ。

 

英国は、3月23日夜から全国的なロックダウンに入った。ジョンソン首相が国民向けのテレビ演説で発表したもの。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、不要不急の移動を全て禁じ、住民は自宅から出ないよう命じられた。期間は少なくとも3週間で、警察には人々の集まりを解散させたり違反者に罰金を科したりする権限が与えられる。

 

米国は、セントルイス連銀のブラード総裁が緊急提言する事態だ。米国が新型コロナウイルスの感染拡大と闘うために、不要不急の企業活動の3カ月休止を宣言すべきだと指摘したのである。ブラード総裁は、「大統領と議会が『ナショナル・パンデミック・アジャストメント・ピリオド(国家的パンデミック調整期間)』を宣言」するよう提言している。この3カ月の調整期間は新型コロナ感染の進行状況に応じて短縮もしくは延長することが可能だと、同総裁は23日のセントルイス連銀のウェブサイトに投稿した。

 

以上は、『ブルームバーグ』(3月24日付)の報道である。米英が、揃って非常事態に陥っている中で、中国による「米軍拡散説」は大きな感情的な反発を招いた。中国指導部は一旦、米国へ罪をなすりつけて逃げる積もりであった。それが、欧米の反発で撤回したに違いない。

 

『大紀元』(3月24日付)は、「駐米中国大使『米軍ウイルス拡散説』を否定、内部で意見対立か」と題する記事を掲載した。

 

中国外務省の趙堅立報道官がソーシャルサイトで発した、「米軍ウイルス拡散説」に、米国をはじめ多くの海外メディアが疑問を呈した。これについて、駐米中国大使も真向から反対意見を示した。崔天凱駐米中国大使は3月17日、米メディアAXIOSとHBOの共同インタビューに応じた。23日、駐米中国大使館のウェブサイトには、これらのインタビューの記録が掲載された。

 

(1)「崔大使は、「米軍ウイルス拡散説」をここ数週間発信している趙報道官の意見について「狂気の沙汰」と形容した。「ウイルス発生源の特定は科学者の仕事であり、外交官やジャーナリストの仕事ではない」と付け加えた。中国外交官は北京の外交部の見解を踏襲する傾向にあるため、崔大使のように反対意見を示すケースはまれ。しかし、中国政治の職位としては、習近平政権が指名した崔大使のほうが趙報道官より上位である」

 

中国外交部の趙堅立報道官が、ソーシャルサイトで発した「米軍ウイルス拡散説」は、すでに本欄でも取り挙げた。テレビ報道を根拠にしたもので、注釈までつけて「学術風」を装っていた。私は、これを「フェイクニュース」と断じて一蹴しておいた。それほど荒唐無稽なものだった。欧米が、反発するのは当然。中国の責任回避が目的であることは明白であった。

 

(2)「AXIOSの記者は、「米軍ウイルス拡散説」を発信した報道官は、明確な証拠を持っているのかどうか、大使に聞いた。崔大使は、「彼(趙報道官)に聞いて欲しい。私は中国政府と政府首脳を代表しており、誰か個人の意見を代表しているのではない」と述べた。記者は、報道官は中国政府の意見を代表しているのか、と聞くと、「彼の発言をどのように解釈するかはあなたの自由だが、私には全ての人の発言を説明する責任はない」と明確な答えを避けた」

 

駐米中国大使が、趙報道官のツイッター発言を否定したのは、中国の仕掛けたフェイクニュースが不発であったからだろう。もし、反応がよければ、「米軍拡散説」を放置して、「事実化」する予定でなかったかと見られる。同じ、中国外交部内で、このような行き違いが起こるはずがない。

 

(3)「一部では、中国共産党政権の内部で「米軍発源説」をめぐって意見が対立しているとの分析が出ている」

 

意見対立とは考えられない。「鉄の規律」である中国外交部において、そのようなミスはあり得ないからだ。もし、報道官の「独走」であれば、解任されているはずである。

 

(4)「米トランプ大統領は就任後、ツイッターで積極的に発信し、対中国外交のスタイルも変化させた。中国共産党政権は海外のソーシャルサイトにも中国共産党のプロパガンダを強めた。英オックスフォード大学が2019年9月に発表した、世界のネット世論操作に関する研究報告によると、国家レベルでもっとも高度な世論操作を行っている国は中国であり、数百万人のネット世論操作者がいるとした。また、中国共産党政府は2019年に、50あまりの在外公館や外交官のアカウントを増加させ、対外宣伝の強化を示唆した」

 

中国は、国家レベルでもっとも高度な世論操作を行っている国である。その中国において、意見対立が起こる可能性は先ずない。最高指導部の命令で動いているからだ。欧米で猛威を振るう「新型コロナウイルス」が、米中間で鋭い対立を深めている。中国が、「米軍拡散説」を否定に動いたのは、形勢不利と見た結果であろう。